11-1 日本酒という日本の酒
日本酒とは、なかなか変わった名前が付いたものだ。当然のことだけれど、日本酒のことを日本酒などと呼ぶようになったのは最近のこと。
そもそも、イタリア酒とかアメリカ酒などとは呼ばない。中国酒は「中国の酒類」という総称の意味では使われる言葉であるけれど、日本酒のように特定の酒を示すような使い方は無いだろう。不思議な名称を与えられた酒だと思う。
現在の日本酒を正確に表すならば、清酒となる。が、これも透明のものだけを指している。澄酒とか黒酒とか呼ばれたものである。日本酒の中には白酒も含まれるだろうから、ますますややこしい。
酒というものが、どういうわけか文化的に重要なポジションにある。酒を楽しむために発生した食べものが存在するし、神様に捧げる神饌(シンセン)は昔から「米」「酒」「餅」が上位にきている。米から作られたものだからなのだろうか。どうもそれだけが理由じゃなさそうだ。