今日のエッセイ-たろう

田舎の都市生活。〜“出前が届かない”時代に生きる。 2025年10月22日

2025/10/22

先日、久しぶりに旅行に出かけた。帰り道、山間地域を通り抜ける。ほとんど商店というものは見られない一帯。時計の針は夕方と呼べる時刻を指していたけれど、空はまだ明るく、山も畑も、所々に群れをなす住宅もはっきり見えた。秋の日はつるべ落とし。ほどなく、薄暗がりの中に明かりが灯り始めた。 買い物にはどこまで行くんだろうね。 日用品を揃えるには、車で出かけていくのだろう。15分ほど前に大手スーパーや雑貨店が立ち並ぶ地域を通り過ぎたところだ。コンビニもファミレスも、それ以来目にしていない。近所に小さな商店があるのかな。 ...

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今日のエッセイ-たろう

多様性を語る前に。〜考えておきたい、共通項でくくるということ。 2025年10月7日

2025/10/7

「“多様性”の反対って、なんだろう?」ちょっと調べてみるたところ、“画一性”がそれらしい。他にも、“均質性”や“均一性”という言葉も出てきた。なんだかモヤモヤする。 多様性って何だろう? 手元にある国語辞典をひいてみると、こんな語釈が載っていた。多様…色々な種類(がある様子)画一…特殊事情を考慮せず(規格に従って)すべてを一様にすること。均質…その物のどの部分、同類の物のどれを取ってみても一様の質(密度、質)であること。均一…その中のどれを取っても金額、質量などが同じであること。その様子。 一般に「多様性 ...

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今日のエッセイ-たろう

埋もれた文化なんてない。〜茹で落花生が教えてくれたこと 2025年9月29日

2025/9/29

「茹で落花生って、みなさん食べますか?」茹で落花生の写真に添えられたコメントは、たべものラジオのオンラインコミュニティでの投稿。何気なく「食べますよ」と返信するついでに、「掛川のある遠州地域では昔からよく食べます。お祭りの振る舞い料理の定番です。」と付け加えた。 茹で落花生は、地元では秋の定番のおつまみだし、子供の頃から慣れ親しんだ食べ方だった。聞いた限りでは、掛川だけでなく近隣市町でも共通の食文化らしく、遠州地域全体だと思っていた。だけど、どうやらそうではないらしい。地域差がありそうだ。 落花生のある食 ...

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今日のエッセイ-たろう

つながるワンステップ。〜食の文化を俯瞰する。 2025年9月26日

2025/9/26

たべものラジオは、「食に関する文化や歴史などを“深堀り”して紹介する番組」だと思われている。その通りなのかもしれないけど、実はコンテンツを作っている本人としては「ちょっと違う気がするんだよなぁ」とも思っている。 “深堀り”であることは間違いない。実際に、深く深く海の底や山の奥に分け入っていく感覚もある。それと同時に、もっと上空から海や山を眺めるという感覚もある。 深堀りと俯瞰の往来 例えば「ミルク利用の人類史」を考えるときには、各地のミルクの利用方法にだけじゃなく、暮らしぶりや慣習などを調べていく。加工方 ...

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今日のエッセイ-たろう

フードクリエイターの条件。〜なぞること、ずらすこと 2025年9月22日

2025/9/22

東三河フードバレーという構想がある。バレーは本来”谷”のこと。でも、この場合”シリコンバレーのような”という意味で使われているようだ。カリフォルニア州のサンフランシスコ南東にあるサンノゼやサンタクララという渓谷地帯があって、そこに半導体やIT 関連企業が集中していることからシリコンバレーと呼ばれている。東三河フードバレーでは、食の集積地帯となることを意図していて、「フードクリエイターの聖地」に発展させていくことを目指しているという。 フードクリエイターってなんだろう。 インターネットで検索すると、いくつか ...

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今日のエッセイ-たろう

「ご飯がないとご飯を食べた気がしない?」〜主食ってなんだろう。 2025年9月19日

2025/9/19

「ご飯がなくちゃ、ご飯をたべた気がしない」なんだかトンチみたいなセリフだけど、妙に理解できてしまう。これ、いつ誰に言われたんだっけな。忘れちゃったけど「食事にはご飯が欠かせない」って、そう言いたかったはずだ。 世の中には、ご飯の出番がない食事があるらしい。もちろん、そのくらいのことは知っていた。だけど、どうにも実感がなかった。どれだけ、お米に執着していたというのだ。後に、食文化の歴史を学ぶようになってわかったのは、個人的な感情じゃなくて文化的なミームだということ。どうやら、日本ではお米に対する以上なほどの ...

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「季節バカ」の幸福。ちっちゃな変化を喜ぶこころ。 2025年9月18日

2025/9/18

少しばかり仕事が忙しくて、しばらく文章を書く時間を作れなかった。いや、時間が全く無かったかというと、そうでもないんだ。店の仕事を終えて、ノートPCを開いてみるくらいの時間はあった。ただ、どういうわけか筆が進まなかった。 それなりに書きたいこともあったはずなんだけどな。たぶん、ここでのアウトプットは負荷が高かったんだと思う。何かしら課題やテーマを設定しては、「これは一体どういうことなんだろう」と考えを巡らせる。なんてことを書いてきたわけだけど、これって、一般的に「エッセイ」というには重すぎる。しんどかったの ...

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今日のエッセイ-たろう

日本的美意識とプレゼンテーション〜何を語り、何を残すか 2025年9月4日

2025/9/4

日本人は比較的プレゼンテーションが苦手らしい。「らしい」と表現したのは、ぼくはその認識が薄いからだ。得手不得手があって、もちろん苦手だという人もいるけれど、プレゼンが上手な人もたくさんいる。料理が上手な人もいれば、苦手な人もいる。そのくらいの感覚。まぁ、時々ビジネス系のウェブサイトで「日本人にグダグダなプレゼンが多い」という記事を目にするので、「そう見えるんだな」と思う程度のことだ。 なぜ“苦手”“下手”と言われるのか ひとつには、シンプルにスキル不足というのが理由。案外知られていないけれど、プレゼンテー ...

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今日のエッセイ-たろう

3Dフードプリンターのある未来〜コピーから始まる進化のうねり 2025年9月3日

2025/9/3

最近はすっかり出番が減ったが、事務所には“複合機”が置いてある。「プリンター」「コピー機」「スキャナー」「ファクシミリ」が、一台でできるアレだ。 複合機の機能の歴史 複合機の機能の中で、一番最初に世の中に登場したのはコピー機だ。世界で初めて事務機器として使われたものは、1779年に発明されたのだそうだ。発明したのは、蒸気機関の改良で知られるジェームズ・ワット。ハンドルを回して使うようなアナログなものだったけど、これがよく売れて、20世紀まで利用されてきた。 ファクシミリが発明されたのは1843年で、実用化 ...

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今日のエッセイ-たろう

価値は揺れる。ー“おかげさま”が整えてくれる日々。 2025年9月1日

2025/9/1

「たべものラジオ」というポッドキャストを始めてから、もう4年になる。最初の頃のようにコンスタントに配信できていないのが心苦しいのだけれど、それでもボチボチ続けられているのは、やっぱり聞いてくれる人がいるからだ。 「皆さんのおかげです。ありがとうございます。」と言うと、ありきたりのセリフに聞こえるだろうか。でも、これは本音だ。もし、聞いてくれる人がいなかったら、続けていないだろう。別に、“有名になりたい”とか“認められたい”と思って始めたわけじゃないんだけど、誰にも聞かれないというのはちょっと寂しいかもしれ ...

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