「忙しさ」と「質」の分配。2022年11月25日

昨日の続きです。

使役という観念をどの様に解釈して、どのように扱うのか。その全てが悪いのか。そもそも、良いとか悪いという話なのか。その辺りまで言及できたらいいな。

経営者であれば、ある程度の規模になると人を雇用して一緒に仕事をするようになる。それは、一人ではこなせないような業務があるからだし、その先のステップを考えればチームの方が良いと判断しているからだ。面倒な部分はあるかもしれないけれど、基本的にチームで取り組んだほうが良い。夢や目標を実現するためには必要な環境構築と呼んで差し支えないだろう。なにしろ、ホモ・サピエンスという動物は、集団で事業に取り組むことによって生き残って来たらしいのだ。

事業には、忙しさに緩急がある。「忙しさ」を細かく見ていくと、作業量と時間のバランスだということになる。一定時間内の作業量が多いと忙しくなり、同じ作業料であっても与えられた時間が長ければ忙しくはないし、同じ時間であっても量が少なければ忙しくない。ということだ。

時として、時間に余裕があり、作業量もさほど多くはない状況になることもある。その場合に、どのように仕事の分配をするかで、チームの未来は大きく変わってくるのだと思う。

古い体質では、若手や下働きのような存在には仕事があるが、上司は暇そうに新聞を読んだり昼寝をしたりということがあった。これに対して、だいたいの人は良い気分にはならないだろう。感情の部分ももちろんそうなのだが、全体を俯瞰してみるとかなり効率が悪いことがわかる。

上司は、その人にしか出来ない仕事がある。若手がやるようなことも出来るのだけれど、そういった雑務に時間を割いていると、その人にしか出来ない仕事にかけられる時間が減ってしまう。だから、その部分を肩代わりしてもらっている。そういう関係だ。

これを前提にすると、上記の例では上司は昼寝をしている場合ではない。無理矢理にでも自分にしか出来ない仕事をひねり出して取り組む必要がある。その結果、事業が良い方向へ進むようにするのだ。であれば、仕事を引き受けた部下も納得できる。互いに信用できるというものだ。

上司が暇な時間を作っているのは、もしかしたら部下からの質問や、手助けを求められたときのためかもしれない。いつでも動けるようにするために体をあけている。それが、その人にしか出来ない仕事なのであれば問題ないだろう。出来れば、いつでも手を止められる程度の簡単な作業を受け持ってあげられたらみんなハッピーなのだけれど、そうとばかりもいかないのか。

まぁ、要約するとこうだ。経営者がなんでもやるのは非効率だし時間が足りない。だから、一部をアウトソーシングする。委託業務が定常的なので、社員として雇用してお願いする。こういった関係が、雇用のひとつの側面である。

だから誰かがサボると、他の人の時間を奪う。互いに、時間を上手に使うために、やるべき作業を分担している。そういうことになる。

今上げた例は、わかりやすくするために上司と部下の関係を取り上げた。けれども、状況はこれに限らない。互いにフラットな関係であっても、やはり同じなのだ。あまりに忙しくなるとクオリティが下がるし、負担も大きい。仕事の量と時間を、上手にやりくりすることは組織のあり方の基本の基だ。

チームが機能して大きな仕事を達成するのは、この先の話である。土台があって、はじめてクリエイティブな仕事に繋がるのだろうと思っている。

今日も読んでくれてありがとうございます。スキルセットや、思考の特徴、才能などが発揮されるのは、こんな条件があるんじゃないかと思うんだ。だから、使役の観念で物事を動かそうとすると、チームはどこかで停滞する。ヒズミが生まれるかもしれないし、ただただ停滞するかもしれないし、それはどうなるのかわからない。なにより、気持ちよく働くんなら、お互いの時間という資産に対してリスペクトしあったほうが良いんじゃないかと思うんだよね。

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