今日のエッセイ-たろう

「もしも◯◯だったら」反実仮想と歴史学習の交差点。 2024年12月6日

普段、あまりテレビを見ない。というのも、テレビを見られるような環境で生活していないから。朝だけはテレビを付けているけれど、朝食までの間に幼児向け番組。朝食が始まれば消してしまうし、ぼくが自宅に変える頃には家族が寝ているのでテレビを付けることもない。これが10年前だったら、けっこう世の中の情報がよくわからない状態だったかもしれない。まぁ、キャッチアップしなくちゃという気持ちがないので、気にもならないのだけど。

本当にびっくりするほどに社会がどんどん変わっていく。しばらく前に、オンデマンド番組を見たのだけれど、その中ではまだ「AIは犬を犬だと認識するのが難しい」と言っていた。それほど昔の番組ではないが、その頃はディープラーニングが登場していなかったのだ。2024年のぼくらには、もう考えられないというくらいに昔のことのように感じられる。

「もしも◯◯だったら」シリーズと聞いて、ドリフターズのコントを思い浮かべる人はどのくらいいるのだろう。けっこう好きなシリーズだったな。とんでもなく狭い居酒屋だとか、居酒屋の店主が小学生だったらとか、めちゃくちゃ威勢の良い銭湯だったらとか。まぁ、メチャクチャな設定なのだけれど、あるわけ無いんだけど「もしあったらこうなるかもしれないよなぁ」という、妙な納得感もあった気がする。デフォルメされまくっているのは、落語と共通しているかもしれない。

全く参考になどならないけれど、もう少しくらいは参考にしてしまうくらいに「もしも」を考えたら良いのじゃないかと思い始めている。荒唐無稽に思えるかもしれないけれど、人間以外の何者かがあたかも本当に会話しているかのような返事をするなんてことは、かつてはオウムの特権的地位だったはずだ。それが、いつのまにか誰でもスマホで体験できるようになっていて、精度がどうだとか言っている。ぼくが二十歳のころならば、オウムの返事が多少ズレていたってなんとも思わなかった。もしも、文章で返事をしてきたら世界中から注目される珍事件だっただろう。そう、「もしもオウムが本当に会話ができたら」というコントが、ちょっと違う形で現実のものになっちゃったという話だ。

もしも。という仮定を置いてみて、「だとしたらどうなるか」を本気で、全力で考えてみる。コントの場合は、なるべく笑えるように考えるのだけど、そうではなくて辻褄が合うように細部まで考え尽くす。と、そういうのはSF的な思考法でもあるのだけれど、ちょっと科学的に言い換えれば思考実験。アインシュタインの特殊相対性理論だって、細かな計算を除けば「もしもシリーズ」である。

もしも、高さが1光年の電車が光速で走っていたらどうなるか。自分自身の目で見るとか感じている世界を全部無視して、論理だけでひたすら考察を重ねていく。冷徹に計算だけを積み重ねていく。なんてことが、常人に簡単に出来るわけもないのだろうけれど、少なくとも学ぶべきところは「こうだと思っている自分の観念」を疑うこと。私の感覚を通してみた世界を一旦無視してみる。そういうことなんじゃないかと思う。

いきなり未来のことを妄想するのは難しいし、現代のことだって考えるのは大変だ。最近、町のイベントでやってみたのだけれど、「考えようとすると意外とそれが難しい」ことが伝わっていてくれたら大成功。で、やっぱりみんな困惑していたのだけれど、それでも楽しそうにしていたから結果オーライというところか。

もしも◯◯が◯◯だったら、を考えるときに便利なフォーマットが歴史だと思う。なにしろサンプルの宝庫なのだ。自分の感覚を捨て去って、江戸時代に生きた商人の感覚を妄想してみる。実際にどんな毎日を送っていたのだろうかと、肌感覚まで落とし込んでいく。どんな変革が起きたのか、似た構造をもつ事例が現代社会に起きていないかと観察をしてみる。今と昔を言ったり来たりする。で、この条件だったらこういう挙動が自然だよなって感覚で妄想を進める。

だから、ぼくは歴史を「感じ」ようとすることと、未来を妄想することは、実はとても似ているのだと思っている。

今日も読んでいただきありがとうございます。漫画の「花の慶次」をきっかけにして、原作の一夢庵風流記を読んで以来、歴史小説にハマっていた時期があるんだ。歴史小説って、歴史的事実をベースにした虚構の物語。もしも、関ヶ原以降の家康が影武者だったら、というストーリーにはワクワクしたもんなぁ。もしかしたら、たべものラジオに影響しているのかもしれない。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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