今日のエッセイ-たろう

とにかく明るい 2025年5月19日

視力が落ちてきている。いわゆる老眼。まぁ、これは多くの人が加齢とともに経験することなのでしょうがないとは思うんだ。それとは別に、ドライアイだとか寝不足だとかが重なって、長時間勉強することがむずかしくなってしまった。たべものラジオのことを考えると、これは由々しき事態だ。

そんなわけで、少し飲酒を控えようかと思い始めた。日本酒が好きなぼくとしては、なかなかの切実さ。たぶん、断酒はできないだろうから、少しだけ遠慮がちに飲む程度にはしたいと思う。

本を読むときには手元の照明が必要になる。いや、普段は問題ないのだけれど、長時間の読書となるとよくみえなくなってくるのだ。そんなとき、少し明るさを増すと見やすいことに気がついた。それって、体の負担があがるのじゃないか。と心配になることもあるのだが、どうなんだろう。

光を浴びることは身体的な負担にならないのかな。ふとそんな疑問が頭をよぎる。ブルーライトカットのためのメガネが売られているわけだし、髪や肌はメラニンを使って光から体を守ろうとしているわけでしょう。そうだ、確かブルーライトカットメガネがどこかにあったはずだ。気休めかもしれないけれど、せっかく持っているのだから使おうかな。装着。

光に弱いといえば、野菜や肉もそうだ。酒もだったな。たしか酸化が進むのだったかしら。よく、「保存は冷暗所」と言われるけれど、温度は気にしていても光に気を配っている人は少ないかもしれない。一般的な冷蔵庫は扉を締めてしまえば真っ暗になるはずだから、あまり気にする必要はないといえばない。ただ、芋類などを常温で保存する場合には、新聞紙でくるむなどして光を遮ったほうが良い。

そんなこをと考えていると、気になるのはスーパーマーケットなどの食料品売場。とにかく明るいし、あらゆる食材はその光の下に並べられている。あれは大丈夫なのだろうか。スシやのショーケースよろしく、煌々と照明があたっているじゃないか。どうにかして劣化しないような工夫がしてあるのならば良いけれど、それにしたって明るすぎやしないかとも思う。

だって、昭和時代の食料品店の店内はもっともっと薄暗かったんだよ。地方の道の駅みたいなところも、わりと薄暗いところがあって、それでも違和感がない。冷房を使わなくても、少しひんやりしているのは建物の構造に起因しているのだろうか。食品の鮮度を考えたら、なかなか良い環境だと思う。

商品の展示という意味では、明々と照らされている方がより見栄えがするらしい。以前、家電量販店に関わる仕事をしているときにパソコンメーカーの方から興味深い話を聞いた。ノートパソコンの展示をするときには、必ず画面の照度を最大に設定しているのだが、それは販売のために展示するときにだけ使用する照度だというのだ。売り場が明るすぎるので、一般に使用するときには不必要なほどに明るく設定しなければ見栄えが悪い。そういうことらしい。場合によっては、デモンストレーションモードというのがあって、その場合には照度だけではなくコントラストも強くなるように設定されているそうだ。実際に使用する際には、無用の機能を設定しているなら、その分コストがかかるのではないかと尋ねたら、担当者は言いづらそうに肯定したのだった。無駄といえば無駄といえよう。

みんな、屋内が極端に明るいことに慣れてしまっているのかもしれない。自宅なら昼日中から証明をつけることもないし、小学校も幼稚園も基本的には自然光で十分だ。なのに、オフィスだとか商店では必ず照明が灯されている。

当店には、自然光がたっぷり入り込む角部屋がある。ある時、春の日差しが入り込んで気持ちが良かったので、そのときは証明をつけずにいたのだ。そうしたら、部屋の照明が灯されていないことを指摘され、ぼくの感覚がおかしいと言われたことがある。しょうがないので、なるべくお客様に伺って心地よい方を選択してもらうようにしているのだが、どうにも納得できない。

だいたい、全方位から明るい照明を当てたら陰影がなくなってしまうじゃないか。影がないと、人もモノも料理ものっぺりしてしまう。その状態が美しいとはぼくには思えないんだけど、どうだろう。

今日も読んでいただきありがとうございます。世の中全体の屋内照明の照度を、全体的に落として欲しい。それから、酒類は全部しっかり遮光して欲しい。よく見えるようにしたい場合には、その時だけ対象物にスポットライトを当てるくらいでちょうどよいのだ。と、世の中の照明に対してささやかな主張を持っているのです。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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