今日のエッセイ-たろう

「結論から話す」が最適解か。 2022年8月10日

言葉を話すときには、必ず誰か聞いてくれる人がいる。番組では眼の前にいる拓郎がそうだし、ポッドキャストの向こう側にはリスナーさんがいる。たべものラジオは二人での会話をお届けするスタイルだけど、一人でやっている方も、やっぱり聞いてくれる人を意識して喋っているはずだ。

独り言は、相手がいないようだけど自分自身に向けて喋っているんだろうな。声に出さなくったって、脳内を直結すれば良いのに、わざわざ声に出す。一度外部を経由して、耳からインプットし直したいときにつぶやくのが独り言。つぶやくっていうくらいだから、自分にだけ届けばいいくらいの音量。これもまた、聞き手を意識して喋っている。

話し方については、いろんな人のいろんなスタイルがある。ぼくなんかは、その道のプロフェッショナルというわけじゃないので偉そうなことを言うつもりもない。そういうのは専門職に聞いたほうが良い。とはいえ、割りと長い間「誰かに向かって喋る」をやってきたわけで、それなりには意識していることがあるんだよね。

今の仕事を始める前は、ほとんど営業の仕事をしていた。家電量販店などの販売員に始まり、自社商品を販売してもらう代理店の担当営業、法人担当も電話営業も飛び込み営業も、果ては訪問販売もした。会社からは売上を上げることを至上命題として与えられるのだけど、現場としては情報が伝わることを最も重視したな。だってさ。買うか買わないかは、それは他人の判断。買ってくれと懇願したところで意味はない。そんなことよりも、商品を購入した後に後悔しないような判断をしてもらったほうが長期的にお得だ。お互いにね。だから、その判断に必要になりそうな情報をかき集めて、整理して伝える。

よく、プレゼンテーションでは結論から話すのがベストだ、と言われる。確かに、結論から伝えるほうがわかりやすいこともあるのは事実。だけど、それは一つのパターンでしか無いのじゃないかと思うんだよ。他にもあるはず。

推理小説にあてはめてみよう。

結論から話す場合は「How done it」のスタイル。犯人はわかっている。小説の展開としてはどのようにしてそれが起きたかがメインになる。これ、桃太郎に置き換えるとこういう感じかな。桃太郎はたくさんの財宝を持って村の老夫婦の家を訪れました。しかも一緒にやってきた供回りは、人間ではなく犬猿キジといった動物だったのです。さて、桃太郎になにが起きたのでしょうか。では、次のスライド。

「物語」は、結論から話すスタイルに置き換えると破綻するイメージがある人もいるのだけど、実はそうではなくて、ストーリーのメインテーマが変わるんだよね。ちゃんと成立する。

推理小説のパターンで知られるのは、他に「Who done it」「Why done it」などがある。誰がやったのかは犯人探し。一番スリリングかもしれない。最も多いパターンだろう。名探偵コナンはほとんどこれ。なぜそのようなことを行ったのか、を探るストーリー展開なら、心情や背景の事情がテーマになる。

つまり、語り方によって伝えたい主題は変化するのだ。桃太郎の入れ替え作文の通りである。と、ぼくが勝手に思っている。

短時間でプレゼンをして、心に響く。そのシチュエーションに限定すれば、確かに結論から話すことは一つの解ではある。最もたやすく、誰にでも出来るパターン。だけど、ちょっとユニクロっぽい。誰にでも使いやすくした結果、ドンピシャのサイズ感だったりデザインだったりになりにくい。結果凡庸になる。万能で優秀なんだけど完璧じゃない。そんな感じかな。もちろん良いのだけど、使いこなすならポイントを抑えなくちゃいけないんだと思うのね。ほら、プチプラコーデでもおしゃれに見せるコツみたいなのがあるじゃない。スピーチのテンプレを使うにしても、ちゃんと押さえるべきポイントがあるのじゃないかと思うのね。

個人的に一番意識したのは感情の振れ幅。これは、ぼくの場合ね。人それぞれ大事にしようと思うポイントは違うだろうから。笑う、喜ぶ、悲しむ、怒る、驚く。人は感情が大きく触れた直後が一番理解が深まるのじゃないかと思っていてさ。アハ体験なんか、もう驚いているじゃん。そっかー、そういう角度で見るとそうなるのかあ。って。数学の図形問題で、そっかー、そこに補助線を引いたらそうなるのかあ、て目から鱗が落ちるような感覚があるんだけど。あれに似ているんだよね。

ホントは感情が動けば何でも良いはず。ただ、ぼくが喋る場合は、悲しむとか怒る感情を用いるのが相応しいシチュエーションではないのだ。どちらかというと、動的な感情でポジティブなものが多い。性格かな。しんみりするような演出をしても良いのだけどね。うまく出来ないからしょうがない。

たべものラジオは基本的に、結論がスタートに来ている。語弊があるな。大きなテーマでは、語らなくても最初っから結論がわかっている。だって、ジャガイモがどんなものなのかは番組を聞く前から知っていたでしょう。ジャガイモ料理だって知っている。ほら、もう結論は見ている。ここに至る前のHowやWhyを語るスタイル。でね。中身の構成は、結論をちょこちょこ隠している。平坦なストーリーや情報を提供しておいて、それらが一点でクロスするとか。

アップルの創業者、スティーブ・ジョブズのiPhone発表のプレゼンテーションはとても有名だ。あれさ、結論は最後まで言わなかったでしょう。ぜんぜん違うことを語っておいて、最後にiPhoneに集結させる。違うパターでも良かったんだろうけれど、あれが最適解だと思ったんだろうね。

今日も読んでくれてありがとうございます。結局、なにがいいたのかわからん話になったな。とにかく、人が作ったテンプレートに当てはめる必要なんて無い。伝えたいことが感情ごとしっかり伝わるように、自分なりに工夫することが大切だってことだ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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