今日のエッセイ-たろう

ガラパゴス化のススメ。 2023年9月24日

9月4日に「観光産業とガラパゴス化した日本について思う。」と題したエッセイを書いた。ガラパゴス化がマイナスなイメージで捉えられる事があるんだけど、そうばかりではないよね。といった主旨だ。これについて、もう少し書いてみようと思う。

都会のマネをする。というのが、ひとつある。どこかで成功事例があると、それを真似したくなるものだけれど、かっこよさそうだという理由で都会のマネをしてしまうことがあるんだよね。

例えば、ローカルテレビ局。地方番組でよく見られるのは、キー局がやっているようなバラエティや、旅番組かな。それも、全国区で知られているような芸能人が登場していて、大手の劣化版コピーみたいになっていることがある。

実は、その道はどこまで進んでもB級までしかたどり着けない。とぼくは思うんだ。だって、予算も視聴者数も、そこにかけられる人数も時間も圧倒的に違うわけじゃない。大手には大手にしか出来ないことがあって、その道を進んだら到達したスタイルなんだと思うんだ。だから、それを真似したところで劣化版コピーにしかなれないような気がするんだ。

どちらかというと、大手には出来ないことをやる。小さいからこそ出来ることだってあるのじゃないだろうか。

旅番組だったら、旅先で観光地を紹介するのじゃなくて、その過程をピックアップしたら良いかもしれない。旅というのは、その道程が楽しみであって、誰と一緒にいるかが旅の楽しさを決めてしまう。というのは、ぼくの持論なのだけれどね。旅行だって、訪問先が良かったってこともあるけれど、車や電車の中で誰かと交わした会話のほうが記憶に残っているということだってあるじゃない。友人がうっかり電車に乗りそこねたとか、自分が大失敗したとか、そういうのが面白かったっていう経験だってある。

メジャーのマネごとをしないことから始めても良いのじゃないかな。じゃないと、どこもかしこも金太郎飴みたいになってしまう。旅行に出かけて言っても、旅先が地元と同じような風景だったらがっかりするでしょう。旅先で時間が出来たときに、大手コーヒーショップチェーンやショッピングモールに行くのじゃ面白くないと思うんだ。地方色いっぱいの、ちょっと不思議に思えるような喫茶店に入ったほうが面白いじゃない。

じゃあ、どうしたら良いのかと言うと、これがまた大変なのだ。基本的には、今あるものを最大限に活かすというのが良いのだろう。今まで長い時間をかけて自然発生してきた文化というのは、ある種の鎖国状態から生まれたもの。他の地域の影響を受けずに独自進化したものがある。それも、いまでは薄まってきてしまっているから、しっかりと調査して掘り起こさなくちゃいけない。

それにね。他地域の取り組みを参考にするのは良いけれど、参照し過ぎちゃいけないと思うんだ。そういうやりかたもあるのか。は学ぶべきではあるけれど、それを転用しすぎない。自分たちのことは自分たちでしっかりと考える。

だってね。いろんなことが違いすぎるんだ。行政予算も違えば、商業規模も人口も違う。気候も違うし、近隣の環境も違う。同じくらいの規模で気候が似ていたとしても、隣町に大きな産業があるかどうかで全く違う環境になるだろうし、交通だって違ってしまう。

そういう意味では、郷土料理や郷土食文化というのは比較的わかりやすいかもしれないな。食文化って、今では均一化が進んで薄れているという側面はあるけれど、それでもしっかりと地元に根づいている物も少なくない。東海地方の味噌文化は、全国的に見ても目を見張る物があるよね。地域料理が発展してきた背景を知れば、その町を知ることにもつながるってわけだ。

世界的にガストロノミーが浸透してきているのだけれど、わが町掛川ではほとんど聞くことがない。なぜその料理が地元に根づいているのか。地形や気候、食を支える技術、流通事情、芸能や生活習慣などがあって、結果として表出している。なんてことが、実は外から見たらとても面白いことだと思うんだよね。

今日も読んでくれてありがとうございます。こんなところに書き連ねていても何も変わらないんだよね。しょうがない、ガストロノミーツーリズム的な取り組みを仕掛けてみるか。どんなのが面白いかなあ。こういうの、たべものラジオコミュニティーで、プランを妄想したらどんなことが起きるかなあ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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