今日のエッセイ-たろう

ポップカルチャーはやがてクラシックになって、それからどうなる。 2024年7月22日

文化ってなんとなく高尚なものだと思いこんでしまうようなところがある。伝統というかクラシックというか、ちょっとお硬いイメージ。だから、ちゃんと学ばなくちゃいけないような気にもなるし、そういうことを言う人もいるらしい。最近びっくりしたのは、「ロックを勉強する」という表現に出くわしたこと。ロックを語るなら、ビートルズだとかディープ・パープルだとか、レッド・ツェッペリンだとか、いろいろ学ぶべきだ。とね。

そうなの?ぼくなんかは、ロックって型破りで常識外れなイメージしかない。大衆から生まれた、ある意味クラシックに対するアンチのようなところから登場した感覚がある。だから、直感的に「ロック」と「学ぶ」が繋がらないのだ。楽譜なんか読めねーよ。音楽理論?なんだそりゃ。って言いながら、むちゃくちゃカッコいい音を奏でている人たち。

面白いなぁ。なんて思っていたら、父の世代からすると「ジャズを学ぶ」というのも同じ様に聞こえるらしい。そう言えば、ジャズってニューオーリンズで自由を求める運動の中から生まれてきたって聞いたことがある。ジャズは元々黒人社会から誕生したんだって。

ああ、そうか。時代を遡ってみると、元は大衆文化だったものがたくさんあるんだ。歌舞伎、能、狂言。後に俳句と呼ばれるようになった「俳諧の発句」は、古今和歌集に代表される和歌に対して、箸休めのように読まれた歌として俳諧があって、その上の句だけ。かなり破天荒なことだったんだろうな。

握り寿司の作法というか、食べ方のルールみたいなのがあって、いろいろとうるさく言う人もいるらしいけど。握り寿司なんて、もともと屋台の食べ物。現代だったらなんだろうな。焼きそばだとかサンドウィッチだとかを、かしこまって食べているようなものだろうか。変な気分だ。そうそう、本当に最近のことだけれど、ハンバーガーも高級化してきているよね。労働者のための料理が、いつしか伝統とかクラシックになっていく現象って、普遍的なものなのかもしれない。

ポップカルチャーは、やがてクラシックになる。だとすると、その先はどうなるんだろう。クラシックになっても、それを愛好する人がたくさんいれば残るんだろうけど、あんまり高尚なものになっちゃうと人口が少なくなりそうだな。人口が少なくなると、それはいつか消えていくことになるのだろうか。

愛好者がとても多くて、長く続くクラシックもあるよなぁ。それは難しくなって、愛好者だけの閉ざされた世界になってしまうのか。だとしたら、残ってくれて嬉しいけれど、ちょっと寂しいかも。なんてことを言っていると、誰かがまたクラシックをポップカルチャーに引き戻そうとするんだろうな。で、気がつけば原型とは違ったものに変化して、傍流が誕生する、と。

じゃあ、最初からクラシックだったものってどうなんだろう。料理だったら、本膳料理はかなり長い間形式を重んじる正餐としての位置にい続けている。雅楽も平安時代からずっとクラシックだったんじゃないかな。良く知らないんだけどね。少なくとも、どっちもぼくが生まれた頃にはクラシックだったものなぁ。古事記や日本書紀みたいに「学ぶ」対象にはなりそうな気はするけど、どうなんだろう。

今日も読んでいただきありがとうございます。新しいことを見つけた!って思うと、案外それは消えてしまったクラシックかもしれない。なんてことを思うんだ。豆腐を濃い味で煮付けたら御飯のおかずになっておいしいってことを発見した。って言っている人にだったんだけど、それって江戸時代の大ベストセラー「豆腐百珍」にあるんだよね。ループするものなんだろうか。おもしろい。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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