今日のエッセイ-たろう

喋りのクセ「セリフが多い」 2024年6月6日

エピソードを伝えるときに、会話文が多くなる。これはぼくのクセだ。会ったこともない人のことを想像して、その人が言ったかもしれないセリフを言う。見聞きしたことのある人物ならばモノマネということになるけれど、知らない人を演じるのはモノマネじゃないだろうから、なんというのだろう。

小説で言えばカギカッコの文章を再現する。それは、文章の内容だけでなく「しゃべりかた」や「声の特徴」などに情報が含まれているからだろう。という解釈を見かけた。なるほど、そうかもしれない。同じセリフでも、話し方によってずいぶんと伝わり方が違うものだ。

言語外の情報を半ば無意識に読み取って、それを正確に伝えようとするあまり「モノマネトーク」になるのかもしれない。

最近気がついたのだけれど、なにかを理解しようとしたときに短い動画や抽象化した図象を想起する、というクセがぼくにはあるらしい。インプットした情報が小説ではなくても、ぼんやりと映像を思い浮かべて認識している。ビジュアルシンカーと言うそうだ。ということは、言語はそれを表現するための手段といったところかな。ビジュアルシンカーだからといって、アウトプットまで絵や動画だということはない。

エピソードに限らないが、ショート動画や漫画のようにして解釈する。だから、伝えるときにもそのまま再現すればよいのだろうけれど、ぼくにはその術がない。絵もかけなければ動画も作れない。古い歴史の舞台を映像化するのは、素人にはなかなかむずかしそうな気もする。だけど、伝えたい。という思いの結果が、憑依型のセリフ。

落語を見るのが好きだっていうのも影響はしていると思う。別に笑わせようと思っているわけじゃなくて、情景を思い浮かべる手段として演技をしている感覚。たべものラジオの過去のエピソードで登場した根室県令が自らジャガイモを持って農家を各戸訪問した話。突然現れた県のトップに驚きと怯えと戸惑いがあっただろうし、一生懸命に説得する姿に心が動かされたことだろうと想像する。これを地の文で紹介してもいるのだけれど、拙いながらも演技をすることでより臨場感のあるものになる気がするのだ。なんというか。農民側の心情の変化が伝われば、その後ジャガイモ栽培に乗り出した人たちが増加していった経緯が見えてくるんじゃないかと。

あまり深く考えてやっているわけでもなくて。実のところ、興が乗ってくると自然にやってしまうところも大いにある。あえて、情報伝達という視点で自分の喋り方を見てみるとそういうことなんだろうと思うわけだ。

かといって、だ。なかなか難しいものがある。過剰に感性に訴えかけたり、無意味に具体性をもたせたりするのは、「伝える」という意味ではマイナスに働くようにも思える。話者として優秀な人や、専門的に学んだ人なら上手に使い分けられるのだろうか。ぼくなりには工夫して頑張っているつもりだけれど、どうだろう。ホントは、もっと余裕を持って構成を考えられたらいいのだろうけどね。

よく「8割は聞く」が良いとされているのだけれど、それだと成立しない局面もあるんだよね。というのは、以前営業の仕事をしていて感じたこと。ある程度は一方的に喋らなくちゃいけない場面がある。となると、「一方的に聞かされているのに退屈せずに聞いていられる」状況を作らなくちゃいけない。で、プレゼンなんかだと「結論から先に」と言われるけれど、エピソード的な展開のほうが伝わることもある。たべものラジオで、ぼくが「8割聞いて、結論から喋る」をやったら「あっ、そういうことか!」とか「もしかして、こういうことも言えるのでは?」みたいな気づきが減るかもしれない。

今日も読んでいただきありがとうございます。ぼくが「8割聞く」だったら、そもそも番組が成立しないよね。学校の授業も同じかな。まぁ、ぼくなりにボチボチ工夫しながらやっていくことにします。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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