今日のエッセイ-たろう

夢はなんですか?という問いを一生懸命考えてみた。 2022年8月6日

あなたの夢はなんですか?そもそも、夢はありますか?こんな質問をされて、明確に答えられる人は、どのくらいいるのだろう。仮に企業の面接だとして、それなりに希望に沿った回答を用意して話すことくらいは出来る。なんとなく受けの良いことを言えば喜ばれそうだ。そうじゃなくて、根源的にどうしてもこれがやりたいということは、誰にでもあるものなのだろうか。

学生時代に将来の夢みたいなことを尋ねられたことがある。まぁ、その場はなんとなくそれっぽいことを答えて、それなりに場を整えるだけだ。だってね。基本的に無いんだから。本音で言ってしまえば、たいていの大人からはたしなめられたよね。ミュージシャンになりたい。しかも、ドラマーとして生きていきたい。とか言ってもさ、親戚のおじさんとかは納得しない。世の中なめてるってね。正直なところ、それ以外にやりたいことなんて無かったんだ。だから、マジメに答えることなんて出来ないのは当然のことよね。

今でも、どこまでがホンキのホンネでやりたいことなのかがわからない。いや、あるんだよ。確実にある。だから、それをビジネスに落とし込んでコツコツと実行していたり、たべものラジオをやっていたり、まちづくりに参画したりしている。自分の時間と才能を思いっきり投資してる。ホンキじゃなかったら、たぶん出来ない。正直、気乗りしない事業はパフォーマンスが悪いと思っている。だから、やりたいことをちゃんと全力でやっているというのは、間違いない。

ただ、ちょっと俯瞰してみると、なぜこれをやりたいと思っているのかがわからないのだ。なんだろうな。今は、食にかかわる仕事をしていて、業界内の横の繋がりもあって、それなりに問題点なんかが見えている状態。だから、こんがらがった糸を解きたい欲求に駆られるように、課題解決をしたくなる。いろいろと掘り下げてみて、何をなすべきかを設定してコツコツチャレンジを繰り返す。食を取り巻く環境がこんなふうになったら良いな。どんな世界が社会にとって幸せなんだろうな。ということを、割りとホンキで考えちゃったりするわけだ。

大した計画があるというわけでもないし、ビジョンもふんわりしている。事業として銀行が融資してくれるとか、周囲が同意してくれるレベルのビジョンと計画はあるよ。そうじゃなくて、人類はどこに行き着きたいのかという問いに対する、解もなければ、当然ビジョンも計画もない。勉強しながら手探りでチャレンジしてみているというだけだ。

このような心の動きや、行動は、食に関わることだからやっているのだろうか。もし、全く違う業界で働いていたとして、実家が料理屋じゃ無かったとして、それでもやっぱり同じことに挑戦していたのだろうか。と考えると、ちょっと疑問だよなあ。もしIT業界にいれば、その業界の中で行動をしただろうし。もし、アパレルの世界にいたら、やっぱりその業界の中で同様の活動をしたのだろうと思う。

もしそうだとすると、ぼくの特性は「食」だから発揮されるわけじゃないということになる。素材はなんでも良くて、与えられた場の中で見つけてきた面白そうなことを勝手に課題設定して挑戦すること、になるか。

最近、SNSなどで「食」をテーマに活動されている方々とつながった。いつも、勉強させてもらっているし、もう尊敬しか無い。全く違う業界なのに、食について関心があるという理由で勉強会に参加されている方もたくさんいる。僕の場合は、父が料亭を経営していて、そこが子供の頃からの生活空間だった。これがとてつもなく大きな影響を与えたと感じている。そうでなかったら、食に携わっていたかどうかもわからない。

だいたい、今までの人生だって似たようなものだ。営業職につきたくて会社に入ったわけじゃないし、携帯電話やインターネットが好きで、その業界に飛び込んだわけじゃない。そもそも、当時お付き合いしていた女性に紹介してもらった仕事が携帯電話の販売員だっただけだ。そのうちに、売り場の改善とか運用とか、販売させてもらっている店舗との調整とか、そういうことに目が向くようになった。カイゼンに必要なことをやった。そしたら、他のところからも声がかかって、頼まれるままに仕事をしていたら、最終的に大手企業から声がかかった。気がついたら、その大きな会社はもっと大きくなって、そこで正社員になっていた。モバイルインターネットが普及したらもっと面白い世の中になりそうだ。じゃあ、普及するために出来ることはなんだろう。会社としてやることと、現場でやることをいろいろ考えて行動する。

ね。やってることは一緒なのだ。

こうやって、改めて自分自身の来歴を眺めてみると見えてくることがある。過去を知れば現在地が見えてくる。まさにたべものラジオと同じである。食材や料理じゃなくて、対象を自分にしただけ。

たぶん、根源的には誰かの役に立ちたいとか、社会貢献して褒められたいとか、そんなところに欲求があるんだろうな。プロドラマーになりたいって言っていた頃も、もしかしたら同じかもしれない。ドラマーじゃなきゃヤダってことは無かったのだろう。ギタリストでもベーシストでも良かった。ただ、たまたまドラムを練習して、そこそこ得意になったからドラマーになりたいと思いこんでいたに過ぎない。そういうことになる。

あれ?欲求の設定場所がおかしくないか。そういえば、誰かの役に立ちたいとか言っても、誰でも良いわけじゃない。好意を抱いている人じゃないとヤダ。団体でも町でも国でもそうだ。日本という国が良くなるなら情熱が湧くけれど、外国だとそうならない気がする。でも、人類にとってという枠だったら情熱が湧いてくるんだよね。なんだこれ。さっぱりわからなくなってきた。

自己の拡張みたいな話なのか?どんな事柄を自分ごとにする傾向にあるのだろうか。いやあ、これ考えたら面白そうだけど、深みにハマりそうだ。ずーっと深く自分の心理世界に潜っていくことになる。としたら、こんなふうに書きながら潜水なんて出来ないよなあ。あ、だから座禅があるのか。なるほどね。

今日も読んでくれてありがとうございます。夢ありますか?無くても良いと思うけど。というか、ぼくが無いからね。だから「職業として何になりたいか」という問いは意味がない。そもそも、その職業が将来にも活躍しているかどうかわからないじゃないか。小学生が社会人になる頃には、ユーチューバーはいないかもしれないし。子どもたちに、職業選択っぽい夢を聞くのはやめようよ。と、学校の先生と話したところだ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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