今日のエッセイ-たろう

必要なのは「納得感」。それを生み出すための「時間」だ。 2024年12月10日

おとなになってからの学びはとても面白い。あれほど退屈に感じていたはずの歴史の授業も、今ならずっと楽しめる気がしている。きっと、似たような感覚を持っている人も多いだろう。ジャンルを問わず、どういうわけか大人になってからの学びは、エンタメとして面白いのだ。

それはなぜだろう。

ぼくにとっては退屈だと感じた10代の頃の歴史の授業も、きっと別の誰かは楽しいと感じていたはずだ。当時のことを振り返ってみると、化学や物理の時間は退屈だと感じたことがない。

そういえば、高校生の頃の授業で地理は楽しかった。3年生の終わり頃、みんな大学受験が終わったあとのことである。もう消化試合のようなもので、まわりの同級生は別のテキストを開いて勉強していたり、イビキをかかないようにスヤスヤと器用に寝るばかりだった。けれども、これがとにかく面白い。受験とは関係ないとなったら、先生も地理学の面白い部分だけを好きなだけ喋るし、それに感化されたぼくも、図書室の本を借りて読むくらいにはなった。

たぶん、面白いかどうかの分岐は、能動的に学んでいるかどうかだ。自分の意志で関わっている物事は、納得感が大きいように思う。

日常にあるちょっとした疑問。普段は疑問にも思っていないけれど、言われてみれば不思議だと思えること。そういうのは、あれこれ悩まなくても「不思議だなぁ」と感じる事ができる。自分なりの問いがあるという状態だ。ちょっと考えてみて「もしかしたらこういうことかもしれない」と仮説を立ててみる。で、調べたり実験したりして、仮説を確かめると、「そういうことか。なるほどなぁ」と納得する。

そうなんだ。この「納得感」が大切なんだ。

若いときに先輩や上司に言われたことも、何年か後で「そういうことか」と腑に落ちることがある。これは知識に「納得感」が付いてきたということ。よく、頭でっかちと言われている人は、納得感を得るところまで至っていなくて、それを見透かされているのだろう。まぁ、面と向かって頭でっかちと言われることは無いだろうから、常に自分がそうなっていないかと観察する必要があるのだが。

「見て見て〜。ここを押すと電気がつくんだよ!」と嬉しそうに教えてくれる幼い子どもは、その納得感の気持ちよさを伝えたいのだ。

お母さんがやっていたことを見て、何をすればどうなるかを学ぶ。自分でやってみてもうまくいかなかったけれど、何度か試して出来るようになる。抽象化すると、気づきを得て、問いを立て、仮説を立て、試してみるというプロセス。うまくいかなくて何度も繰り返すこともあるだろうが、その体験があるからこそ納得感がある。

つまり、だ。納得するために最も必要なのは、答えではなくプロセスとうことだ。

子育てや学習指導において、大人が先回りして答えを用意するのは良い策とは言えない。と聞いたことがある。経験的に、ぼくもそうだろうとおもっているのだけれど、それは「納得に必要なプロセスを奪う行為だから」なのであろう。

大人から見れば、じれったく感じるし、もしかしたら時間が勿体ないと考えてしまうかもしれない。けれども、実はその時間が当人にとって重要なのだ。その時間を奪ってはならない。と、肝に銘じておくことにしよう。

今日も読んでいただきありがとうございます。気づく、仮説を立てる、調べる。このステップは、実はたべものラジオの構成と同じである。と今気がついた。考えてみれば当たり前なんだよ。ぼくがそのプロセスで考えているから、番組がそうなっちゃうんだね。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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