今日のエッセイ-たろう

時間の長さと持続可能性。 2024年2月28日

地球環境と表現すると、いささかスケールが大きすぎて物怖じしてしまいそうだけれど、人類と食との関係を勉強していると、環境の変化に目を向けざるを得ない。氷河期が終わって暖かくなったとか、太陽活動が弱まったとか、どこかで大噴火がおきたとか。その他いろんな環境の変化によって、人類の食生活は都度変化してきたのだ。

持続可能な開発目標。SDG'sってことだけど、持続可能って何を指しているのだろうな。現代の社会を持続するという意味で捉えて良いのだろうか。開発はするんだよね。ちょっと資料を読んでみたんだけど、時間スケールがよくわからなかった。2030年までに達成すべき目標というのはわかる。なんというか、どの程度時間尺度で、なにが持続されることを言うのだろう。

ひねくれたことを言ってしまえば、500年後も現代社会が持続するというのは無茶だろうな。正直わからない。今、環境のために良いと信じられていることが、数百年後には悪い影響だと判断されるかもしれないし。ちょっと長すぎてわからなくなってしまう。もし、500年後も人類の文明が継続するということだったら、環境保護のことなんか考えなくても実現してしまいそうでもある。

例えば、とっくに滅亡したとされる文明はいくつもあるよね。シュメール文明とか、インダス文明とか。滅亡したってことになっているけれど、完全に消滅したのじゃないかもしれない。シンプルに、他の地域へ分散したのかもしれない。かつての日本の限界集落のように、集団としてのライフサイクルが限界を迎えたとする。その場合、残された少数の人達は周辺の街へと移住するだろうしね。最後まで残って人生を全うした人もいるだろうし、移住した人もいる。そんな感じじゃないかって妄想ね。

で、人類は、人類という大きな主語を用いるならば、他の地域でちゃんと文明を繋いできている。森林破壊が進んで、資源を獲得できなくなったら他の地域から融通してもらう。そのうちに、資源のあるところに人が集まって、気がついたら移住したことになっている。長い時間軸だとそんなふうにも見える。

現代人に課せられた持続可能性というのは、もう少し短い時間の話だろう。かといって、5年や10年という短いものでもない。そのくらいの間だけ人類を存続させるというのが目標だったら、言い換えるとその後はどうなっても良いというのだったら、そもそも環境保護なんて考えなくてもいい。まぁ、自殺行為だとは思うけど。

ちょうどいい時間スケールってどの程度なのだろう。現代人が頑張って、しっかり繋いで、その後の人たちが新時代にも頑張れるような長さ。リレー競争みたいなもので、此処から先は次の人っていう期間があるような無いような。そんな時間の長さ。

文明の移動と環境のことを考えていたら、気になるのが平安京。それ以前の飛鳥時代から奈良時代っていうのは、世界各地の文明と同様に移動している。集落が大きくなって、周辺の環境が変わる。資源が枯渇して、もっと潤沢なところに移動する。だから、南から少しずつ北へと移っていくのだそうだ。で、平安京は、けっこう長い間動かない。これはどういうことだろう。

資源を吸収する仕組みが作られた。それもひとつの理由だろう。租庸調という言葉で知られているように、物資が朝廷周辺に集まるようになっていたからね。木材だって、周辺だけじゃなく遠くから送られるようになったらしいし。だけど、そうは言っても、当時の輸送力を考えたら限界があるじゃない。どうやって持続してきたのだろうな。

今と同じ感覚で捉えるわけにはいかないけれど、それなりに被害を出しながらも文明社会という器は持続してきたわけだ。そこには、時代背景を反映した細か工夫があっただろうと思うんだよ。教科書には載らないような、細かな現場レベルでの対応とか。

そのずっとずっと未来にいるのが僕ら。で、ちょっと今までのやり方じゃ通用しそうにもないなって事になっているんだ。じゃあ、なんで通用しないのか。ってことなんだよね。スピードが早すぎるのか。それとも、それ以外に要因があるのか。そのあたりを今もみんなで模索しているわけだ。

よくわからないけれど、なんとなく超長期でもなく、短期でもないちょうどいい按配の期間を共有しているんだろうな。

今日も読んでくれてありがとうございます。超長期に視点を置くと、いろんなことがどうでも良くなりそうなんだよ。ひとつやふたつくらい文明が滅んだところで人類が継続すれば良いみたいな感覚になりそうでさ。そうじゃないところで、一所懸命になることが肝心で。それが、結果として持続可能性を担保するのかもね。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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