代替タンパクの代表例として、大豆ミートが挙げられる。日本でも結構前からあるけれど、アメリカを中心に勃興した大豆ミートビジネスとは少し文脈が違うようだ。
日本のそれは、豆腐ハンバーグのようなヘルシーさから展開されてきたようにも思えるし、もしかしたら豆腐の消費量を拡大したいという業界の願いから発展したようにも見える。これに対して、アメリカの大豆ミートはリユースから生まれている。元々、アメリカでの大豆の利用は、油を搾るというのがメインだった。その搾りかすは家畜の飼料に使われるのが一般的。だから、日本の豆腐メーカーがアメリカで豆腐を展開しようとしたときには、かなり苦労したらしい。なんともイメージが悪いのである。苦労の末に一定の市民権を得たところから、大豆の搾りかすの再利用が見直された。それが大豆ミートなのだと解釈できるのではないだろうか。
世界的にタンパク質が不足していく。これは地球規模での課題である。だったら、おからを食べればいいじゃない。という声もあるのだけれど、日本におけるおからの消費は1%程度で、残りは家畜の飼料になったり廃棄されたりしている。そこで、おからのアップサイクルが行われるようになってきていて、それを専業とするスタートアップ企業も登場しているのだ。
マクロの視点でみれば、どちらも構造的には同じ。結局のところ、おからを食べることに他ならない。だったら、やはり原点に帰って卯の花を食べれば良いのではないかと思うのだけれど、スーパーマーケットで見かける卯の花はあまり人気がないらしい。
新たなプロダクトを開発するのは大賛成だけれど、そもそもおからの調理を見直すというアプローチはないのだろうか。少し前にお惣菜担当者の話を聞いたのだけれど、最近の人たちはおからを食べないから卯の花も人気がないと言っていた。人気がないのは、食文化が変わったからだというのが理由として語られるけれど、そもそもその味付けが合っていないのではないかという問いである。
料理の味付けというのは、本来相対的なものだ。例えば、日本で砂糖が生産されるようになって、多少なりとも流通するようになると、これに呼応したように日本酒は辛口のものが流行している。現代と比べてずっとパサパサしていたご飯だったからこそ、汁気の多いものが好まれた。など、甘いものや酸っぱいもの、塩辛いもの、香りの強いものなど、日常の食生活の中でバランスを取ろうとするから、その結果として味付けも変化するのだろうと思っている。この点は、ただの結果でしかなく因果関係はないのかもしれないけれど、どうもその傾向があるように見えていて、飲食店の現場でも感じていることでもある。
現在販売されている卯の花は、実に甘いと感じる。かつてはこの味付けが良かったのかもしれないけれど、もしかしたら現代の白米との相性が悪いのかもしれない。もしかしたら、現代人の色の好みとは合っていないのかもしれない。同じ食卓に並んだときに他の料理との相性はどうだろう。昼に食べたもの、前日に食べたもの、と比べてどうだろう。というバランスを見直したら、卯の花は大した変革をすることなく再び人気を取り戻すことが出来るのかもしれない。その可能性を探るのもひとつの道だと思う。
食材としてのおからも、きっと味が変化している。大豆の品種も変わっていることだろうし、大豆の絞り方も変わっている。食材が変わっていたとしたら、昔のままのレシピではバランスが悪いということにはならないだろうか。スシもおにぎりも、すでに握るときの力加減は変わっているのだが、それは米の粘り気が変化したからだ。そういうことも視野に入れて、商品ではなくレシピのアップデートをしてみても良さそうだ。
なんだかんだといって、定食スタイルが好きな日本の食文化である。ご飯にマッチする美味しい卯の花がそこにあれば、「実は、地味だけどこれが好きなんだよね」という人ももっと増えるかもしれない。
今日も読んでいただきありがとうございます。もうとっくに色々とやっていて、そのうえでアップサイクルになっているのかもしれないけれどね。もし、このアプローチがされていないのだとしたらとてももったいないと思うんだ。すっごい地味だけど、たまに作る大根の皮のきんぴら風が人気でね。ほとんど食べ残しがないんだよ。