今日のエッセイ-たろう

相手に合わせて話し方を変えるのは、人間相手だけじゃない。 2023年9月30日

話しかけるだけで応答してくれるテクノロジーがあちこちに登場しているよね。アップルのSiri、アマゾンのアレクサ、グーグルの検索も音声対応しているし、ChatGPTは話題を独り占めにした。ケータイに初めてインターネットが搭載された頃を思えば、なんとも凄まじいほどの進歩である。

その上であえて言うけれど、AIによる音声対応はまだまだ子供なのだろうとも思う。

子供っぽいというのは、回答の内容ではない。おそらく、人間が子供っぽいと感じているのだ。

音声認識のマシンに話しかけるとき、どのように喋っているだろうか。本当に、家族や友人と話すときと同じように話しかけているだろうか。答えはノーという人のほうが多いんじゃないかな。なるべく単文で、ちゃんと文末を曖昧にしないではっきりさせる。などという工夫をしているだろう。少なくとも、僕に関してはそうだ。どんなに自然に話そうと思っていても、つい「コンピューターに話しかけるための話し方」というのをやってしまうのだよ。似たような経験を持っている人もいるんじゃないだろうか。

相手に合わせて話し方を変える。というのは、人間同士の間でもよくある。というか、それが基本だろう。とある内容について詳しい人同士なら専門用語なども使うが、詳しくない人に伝える場合は例え話などを使って工夫する。相手が小学生や幼稚園児ならばどうだろう。子供に伝わる話し方をするのじゃないだろうか。立ち話ならば、大人はしゃがんで目線の高さを合わせるし、一人称は相手は子供の立場で話す。「ぼく」というのは男の子を表しているし、私のことは「おじさん」と表現するかもしれない。

僕らの会話は、思っている以上にハチャメチャだ。普段文字起こしすることなんて無いだろうけれど、会話をそのまま文字起こししてみるとよくわかる。主語と述語はてんで噛み合っていないし、だらだらと文節は長くなる。文末までちゃんと喋っていないときは、雰囲気で察してもらおうという魂胆がある。

ポッドキャストでは、なるべくそのようなことがないように気をつけているつもりだけれど、それでもハチャメチャである。ポッドキャストを文字起こししてくれるサービスがあるので、それを使ってみるとよく分かる。本編はまだマシだけれど、雑談中などは書き文字としてはデタラメに近い状態になってしまうのだ。

日常会話に至っては、もっとハチャメチャだろう。文法なんてものを意識して話すなんてことはなくて、感覚で使っているだけ。文節が途切れること無く続いて、主語と述語が噛み合わないなんてことは日常の出来事である。それでも、ちゃんとコミュニケーションは成立しているのだ。

つまり、日常会話と同じようにコミュニケーションが取れないということを、ぼくらはAIに対して感じているのかも知れない。どれだけ素晴らしい内容を回答してくれても、それは自然なコミュニケーションには感じられないのかも知れない。

これは、私達人間がどう認識しているかという問題だと思う。まだまだ、ぼくらが合わせてあげなければ行けない相手だ。そのように感じているということだろう。

ちょっと掘り下げて考えると、怖いような気もする。というのも、ディープラーニングをベースにしているAIは、「話しかけられる言葉」と「ネット上の多くの言葉」から成り立っている。もちろん、それだけじゃないだろうけれどね。何が怖いって、それらの言葉は「自然な会話」じゃないんだよね。多くが、インターネットに人間が合わせた言語、なんじゃないかな。

こうして書いている文章だって、明らかに「誰かに見られること」を意識した「書き言葉」だ。匿名のSNSで、文字数制限がある場合はさらに変化するだろう。文脈などすっ飛ばして、簡潔に書く。だからこそ炎上するリスクがあるのだろうけれど、それもAIの元データの一部になりうるんだよね。その辺りのことも考慮したディープラーニングが行われるんだろうけどね。

素人による素人意見だから、ホントはもっとちゃんとしていて、どんどん進歩してくのかもね。それはそれとして、人間の認識の変化を促すようなことも考えなくちゃいけないんだろうなあ。

今日も読んでくれてありがとうございます。もっと人間っぽく、ハチャメチャな文章で音声回答してくれるようなAIのほうが良いのかな。なんとなく、話しやすいって感じるような、ね。ホント、人間ていうのは合理的なことを追い求めるくせに、合理的すぎると、とっつきにくさを感じちゃうってことがあるんだろうな。

タグ

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

-今日のエッセイ-たろう
-, , ,