今日のエッセイ-たろう

抑えても抑えても滲み出してくるのが個性というもの。 2024年3月31日

最近、音楽を楽しむ時間がずいぶんと少なくなった。以前なら、車や電車の移動中には好きな音楽を流していたし、時々CDを買ったりダウンロードしたりもしていたものだ。

電車に乗ることはほとんどないし、あったとしても読書か書き物をしている。調理場にいるときは、ポッドキャストで耳が忙しいし、こうして文章を書いたり勉強をしているときは、基本的に無音である。前は、ずっとBGMを流していたんだけどね。どうやら集中できないらしいことがわかって、無音にしてしまった。

車に乗るのはごく短距離が多い。それなりに長い時間のドライブは、家族と一緒にいるから子供用のコンテンツを流しているか、会話を楽しんでいる。近頃は、娘がやたらとシリトリをしたがるのである。音楽を聞くのは、朝の教育番組から流れてくるものくらいだろうか。あとは、ショッピングモールやデパート、洋服やなどで流れてくるもの。そういえば、うちの店でもBGMにジャズを流していたな。営業中のほとんどの時間はホールにいないので聞くこともないのだけれど、仕事の環境音と認識してしまっているらしく、楽しむ気持ちが働かない。

あまり聞かなくなってしまったのだけれど、それなりに音や音楽には敏感な方だと思う。若い頃には、聞いたり演奏したりと音楽に親しんでいたし、今はポッドキャストを配信しているというのも影響しているだろう。どうも、無意識のうちに、音を観察してしまうようなところがある。

買い物中に、とある有名なミュージシャンの曲が流れてきた。少し前にすれ違った若い人たちが口ずさんでいたくらいだから、最近の曲なのかもしれない。もしかしたらコマーシャルで使われているのかもしれない。とにかく、その曲のことは知らなかったのだが、「誰が歌っているか」だけはすぐに分かった。もちろん、ぼくがわかるくらいだから、少し上の世代のミュージシャンである。

「新曲出たんだ。まだまだ元気だな。」

これって、本当にすごいことだ。声や歌い方、曲の雰囲気やメロディーなどの特徴から、その人であることが特定できる。そういえば、長い間人気を誇る人たちは、いずれも個性的だ。だからわかるのだろうか。

「個性的ですか?一生懸命歌うと、ああなっちゃうんです。」といったのは誰だったか。数年前に見たテレビでインタビューに答えていたのは、大ベテランの演歌歌手だった。「感情とか個性を強く出しちゃうと、その曲は私のものになっちゃう。音楽って聞く人のものなのね。だから、そうならないようにはしてるのよ。」

ファッションの世界でも同じらしい。男性向けの話ではあるのだけれど、「わざとらしさ」は敬遠されるし、おしゃれに見えないという。必然性のあるものでおしゃれを構築していくのだ。手首にアクセサリーをつけるよりも腕時計。胸元の装飾よりもハンカチやサングラスでワンポイント。装飾にも自然さが求められる。とファッション誌で読んだことがある。

わざと癖のある歌い方をする。演技もそうだし、文章もそう。そういうのは、コンペティションで審査する人にとっては、目について仕方ないらしい。たいていの場合、選外だと聞いたことがある。素人ながら、なんとなくわかるような気がする。

以前、どこかで書いたことがあるけれど、抑えて抑えてそれでもにじみ出てしまうのが個性。個性を伸ばすのは良いけれど、それは無理やり作り出すものじゃないのだろう。無理やりひねり出した個性は、どこかわざとらしく、ひっかかりを感じてしまう。

今日も読んでくれてありがとうございます。個性がにじみ出てしまうものだとするなら、その源泉があると思うんだけどね。それって一体なんだろう。価値観とか美意識なんかが、端々ににじみ出るような感覚かな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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