今日のエッセイ-たろう

「ふわほろ食感」おにぎり考。 2023年12月8日

「おにぎり」は立派な料理である。お米の種類や炊き方にもいろんな工夫があるし、どんな具材をどのくらい使うのか。中に入れるのか、混ぜるのかという選択もある。海苔はどんなものが良いのだろう。などと考えていくと、バリエーションはとても多い。そんな工夫を凝らしていくなかに、握り方がある。

現代のおにぎりは三角形が多い。元々は丸かったのだけど、いつの間にか三角おにぎりが主流になったというのは面白い。東海道の宿場町であった川崎宿が三角おにぎり発祥の地と言っているけれど、確定させるには少々根拠が弱いような気もする、

美味しいおにぎりは、ふわほろ食感が大切。ということを聞いたことがある。確かに、あんまりガチガチに固くなったおにぎりよりも、少しふんわりとしたほうが美味しそうだ。最近、大手コンビニでも「ふわほろ食感」を実現したとして、ニュースになっている。

最適な圧力。それはたしかにありそうだ。以前、「おにぎらず」なるものが話題になったことがあるのだが、あれはちょっとやり過ぎな気がする。いくらフワフワた良いと言っても、そこまでやってしまうと別物。握ってあるから美味しいという事があると思う。握り寿司とちらし寿司では、同じ具材を使っても味わいに違いがあるだろうから、握らないという一点で別の料理だと言える。まぁ、どこまでフワフワにするのかを検証する意味では良いかも知れない。

いつだったか、カーレースの世界では練習中にカーブでスピンしまくるんだという話を聞いたことがある。カーブを曲がる時のスピードや、ブレーキポイントの最適解を探るためにいろいろ試す。だからスピンしまくるのだそうだ。本当かどうかは知らないけれど、納得できるはなしだ。そういう意味で、おにぎりも色々とチャレンジしてみるのは良い。

料理人らしく視点を加えてみる。おにぎりの圧力は均等か。具材や海苔の状態によって圧力は変えたほうが良いのではないか。ぱっと思いつくのはこのくらいか。

内側はふんわりとしているけれど、外側や角の部分はしっかりしている。普段、ぼくが握るときはそんな感じ。経験上、このくらいの硬さが美味しいと感じているというのが根拠で、ロジックで説明しろと言われると困ってしまうのだが。

そんなことが出来るのかと言われたことがあるのだけれど、実際に出来ている。そもそも、そんな発想がどこからやってきたのだろうか。ぼくが思いついたのじゃなくて、父から教えてもらったのだ。修行中にたくさん作らなければならないことがあって、その中で編み出したとか。機械で再現できるのかはわからない。

具材を種に仕込むか混ぜるかでもちょっと力加減は違う。これはもう、言語化が難しい。うちは、海苔の種類がひとつなのでそこは悩まないけれど、もしいろんな種類を使い分けるならば、海苔の歯ごたえと米の歯ごたえのバランスを考えることになるかも知れない。

この力加減のおにぎりには条件がある。それは、店内で召し上がっていただくことだ。熱々のご飯で握り、冷めきらないうちに食べる。屋内であり、皿の上に乗っている。この条件が変わると、最適解は変わるだろうと思う。

例えば、なにかの作業をしているときにちょっとつまみたい、なんてこともあるかもしれない。移動中の車の中でかぶりつくなんてこともある。だとすると、「ふわほろ食感」はそぐわない気がする。美味しいかも知れないけれど、ポロポロこぼれてしまうのは食べにくい。少し固めに握って、美味しさは違うポイントに求めていくとか。好みにもよるけれど、海苔も巻いておいてしっとりさせるかな。しっとり海苔のおにぎりも、個人的には結構好き。

細かなカスタマイズをせずに、広く対応させる。というのが、工場生産食品の良いところ。だから、こんな細かな調整は難しいだろうな。この部分に制約があるというのは、美味しさの追求という側面では厳しい部分がある。制約があるから生まれる知恵もありそうだが。

今日も読んでくれてありがとうございます。コンビニおにぎりの包装ってよく考えられているよね。登場し始めたばかりの頃は、いろんなパターンがあって、なかなかめんどくさかった。でもさ。せっかく封を開けやすくしてあるのに、その上にシール貼っちゃったら意味ないと思うんだよね。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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