今日のエッセイ-たろう

「相手の立場に立って考える」を読み解く。 2024年2月23日

相手の立場に立って考えよう。こんなセリフを、初めて聞いたのはいつ頃だっただろうか。もう遠い記憶の中で、小学校の先生に言われたことがあるような気がするのだけれど、それも現実だったのかわからないほどぼんやりしている。

飲食店もそうだし、いろんなサービスや商品を提供している場所ではよく聞くかもしれない。お客様の立場で考えよう。モノづくりの現場でも同じだろうな。いやいや、スポーツの世界でもあるかもしれない。チームメイトや対戦相手や、周囲の人達の立場で考える。いま、あいつだったらどこにパスを出してほしいだろうか。どこにポジショニングしていてほしいだろうか。そんな想像をする。ううむ。たぶん、どんなビジネスをしていても必要なことのように思えるし、日常生活でも大切なことのように思える。

強引に話を大きくしてみる。ヒトが1人っきりで生きていくぶんには、誰のことも想像しなくても良い。というか、想像すべき「相手」が存在しない。逆に、ヒトとヒトとが関わり合うことを前提とした社会であれば、必ず相手が存在しているということだ。人間社会で生きていくうえでの基本スキルと言っても言いすぎじゃないかもしれないな。

そうは言っても、簡単なことじゃない。なんでだろう。当たり前だけどぼくはあなたじゃないし、あなたはぼくじゃないからなんだけど。どうにかならないものだろうか。

本人は「相手の立場で考えられる」と思っている。けれども、どうもそのようには見えないという人がいる。その人にとっては、周りの人のほうが「気持ちがわからない人」に見えるらしい。いろんな人を観察してみて、知人等に話を聞いてみると上記の条件に当てはまる人が一定数存在するらしいということが見えてきた。

どうやら、思考パターンに特徴があるようだ。基本的に主語が「私」なのだ。主語が「私」なのに、相手の立場に立って考えられていると思い込んでいる。という事象について考察してみることにしよう。

相手の立場にたったつもりになる。それは、考え方の第一歩。ここまでは良い。ただ、せっかく相手の立場に立ったつもりになっているのに、自分の価値観で判断しようとするのではないだろうか。「私」だったらこう思う。それはそれで必要なことだろうけれど、肝ではない。相手の見ている世界を見るということは、相手の価値観、相手のバイアスでものを見るということだろう。極端な表現をすれば、相手になりきることだ。

価値観なんてものは、それまでの経験や学び、環境なんかが紡ぎ出すもの。それらが違えば価値観が異なるのは当然。なんていうか、文脈が違うんだよね。そんなものわかるかぁ。と言いたくなるところだけれど、これって実は訓練すれば出来るようになるんだよね。

頑張らなくても自然に読み取れる、もしくは読み取ろうとする人たちも一定数いる。で、そういう人たちの話を聴いてみると、共通点があるんだ。本が好き。それも、小説。漫画じゃなくて小説。映像も絵もないし、心の声が言語化されることもない。そんな状態で、登場人物に感情移入して感動するんだから、生身の人間の感情を読むのは容易いとまでは言わないけれど、まぁ「ヒントがめっちゃ多い」くらいには感じるのじゃないかな。

良い小説って、無駄な情報があんまり無い。直接的に感情や思考が文字化されていなくても、「この中に読み取るための情報があるよ」と明示されているような気がしている。現実世界では、無限の情報の中から「必要な情報」を探し出さなくちゃいけないけれどね。つまり、現実世界の中で、「どの情報を拾い集めれば感情や思考を読み解くヒントになるのか」を知るケーススタディってことだと思う。

相手の立場に立って考える。っていうセリフの中で、最も重要なのは「考える」ってことなんだろうな。情報を拾い集めて考える。なりきれるくらいに。きっとあの人だったらこう考えて、こういう感情になるから、こう動く。

今日も読んでくれてありがとうございます。そんな生き方ってめんどくさいって思うかな。出来ている人って、めんどくさいなんて思っていないんだよね。呼吸するのと同じだから。同一文化圏の人だったら、ほとんど苦労しない。これ、国際レベルで出来るような人って世界史に名が残っているのかも。逆に、出来なくて戦争になっちゃうとか。そんな気がする。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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