新規加入で起きるはずの文化融合。 2024年2月22日

既存の組織に合流するとき、ざっくり2つのパターンが現れる。それまでの組織文化に染まるパターン。もうひとつは、新たな文化が生まれるパターンだ。

企業も家庭も地域団体も、多少なりとも組織ならではの文化を持っている。その文化の中には、一般社会とは異なる独自の部分もある。ひとつひとつのやり方だったり、ものの考え方だったり。企業ならば理念というものと通じている場合もある。

Aという文化にBという文化が合流し、Aに統一される。郷に入っては郷に従えとか、武家の嫁入りなどはこのパターンが極端に現れたものかもしれない。ただ、Bという異物が加わる以上はAはA’になったり、A+Bになったり、Cになったりすることもある。前者と後者の関係は明確な二項対立ではなくてグラデーション。ケースによって様々だろう。

どんな形に着地するにしろ、合流初期の段階では互いに観察する時間がある。言葉で説明されることもあるだろうけれど、それだけで理解できるほど文化というものは単純ではない。人間一人を理解することも難しいのに、その集合体が作り出した空気を察知出来るようになるには、その中に身をおいて肌で感じながら観察をする必要があるのだ。

実に、この期間が難しい。新たな文化を取り入れたいと思って採用した人材が、いつのまにか既存の文化に染まってしまう。結局何も変わらないじゃないかっていう話は、あちこちで聞くことが出来る。逆に、お互いのことをきちんと観察して理解しようと努めなかった結果、分断が生まれることもある。あいつは何もわかっていないとか、うちは以前からこうやっているんだから従うべきだとか。合流するのが組織と組織だと、派閥争いみたいになる。最終的にどっちが取り込むか。そんな不毛な努力をしていた組織に属していたことがあるから、肌身にしみる。

ぼくは、10人の組織に1人が合流するにしても、5人と5人が合流するにしても、大なり小なり新たな文化が形成される方が健全だと思っている。お互いの過去のことは尊重するけれど、現時点でのチームで何を生み出すかに注目すると、自然とそうなるのだ。例えばサッカーなどのチームスポーツ。新たな選手が加わったら、また選手交代をしたらどうなるか。確実に変化が起きる。選手交代なんかは変化をつけるためにするものだ。そして、フィールドに居る11人ならではのネットワークでゲームを展開するだろう。人数が15人になったとしたら、15人なりの動きや考え方を共有しなければ、相手チームが11人のままでも試合に勝てないほどに機能しない。これも経験済み。

いろんな会議に参加するのだけれど、ぼくが古参だろうと新参だろうとこのスタンスでいる。今、解決すべき課題があって、一緒に取り組む仲間と知恵を絞っている。ゴールに向かって互いに出来ることを持ち寄って行動する。これだけのこと。

ちょっと難しいのが、これまでの取り組みを修正しなくちゃならないときだ。過去の取り組みを改善しようとか、出来ていなかった部分を整備しようとか、もう辞めようとか、そんな話。新たな視点が加わって互いの文化を学んだあと、現状を見据えたらそれが良いのではと思える。だけど、安易にその発言をすると古参が反発することがある。まるで、過去の自分がやってきたことを否定されたかのように感じるらしい。

すでに以前とは違うチームになっていて、現行チームが過去のチームを「正しく批判」しているという認識が薄いのだろう。特に発案者や実務責任者は、そのアイデアや事業が個人に帰するものだと思いがちだから、個人が否定されたかのように思ってしまう。

組織文化は人の入れ替わりとともに少し変化する。それを認識して合意形成を図ることが大切だ。なぜかといえば、上記のように合流後にも分断の因子は潜んでいて、ちょっとでも油断すると古参と新参で真っ二つになりかねないからだ。

今日も読んでくれてありがとうございます。ぬか床ってね。世代ごとに変わってきたんだって。お嫁さんが嫁ぎ先に持ってきたりするから、合流して今までとは違った菌叢になるの。で、それがおふくろの味になっていく。味噌もそうだよね。ぼくらはぬか床や味噌に学ばなくちゃいけない。

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