今日のエッセイ-たろう

マーケットをいろんなモノサシで観察してアプローチしていく。 2023年11月15日

歴史が好きな人は、歴史をネタに観光地を選ぶことが多いらしい。それはもう、マニアックなほどに詳しかったり、そうでもなかったり。歴史の教科書ではあまり紹介されないことを、既に知っていて観光地を訪れるという人もいる。一方で、歴史は好きだし、それなりに概略を知ってはいるけれど、そこまでマニアックなことは知らないという人もいる。現地を訪れることで、座学では知ることが出来ない歴史を知ったり体感することに喜びを感じるのだ。

観光発信いついて思考する時、歴史をテーマにすることもある。わかりやすいところだと、大河ドラマと連動した企画だ。ニュースにも取り上げられるので、わかりやすい。聖地巡礼の旅を楽しもうというのだ。

ビジネスライクに「歴史と観光」について戦略を考えることがある。それは、観光を仕事にしている企業もあれば、市役所の観光課、観光協会などでいろいろと情報発信や企画を考えるのだ。その時、ターゲットをセグメントに分けて考える。いわゆる歴史リテラシーの高さで分類したり、興味の強さで分類したりすることが多いのだが、果たしてそれだけで良いのかと感じている。

歴史をひとつのモノサシにして、セグメントに分ける。例えば、ピラミッド型に分布していて、グラデーションというのがわかりやすいか。マニアックな人をターゲットにすると分母が小さくなるので、もう少しマーケットを広げて考えようという考え方がある。マーケティングの手法のひとつとして、ペルソナを設定するなんてこともある。

それはそれで、良いのだろう。ただ、ぼくらは歴史だけに興味を持っていて、そのためだけに観光旅行に出かけるわけじゃない。いろんな楽しみがあって、そのうちの一つの要素に「歴史」があるというだけのことだ。

何でも良いのだけれど、歴史以外に楽しめることは各地にたくさんあるんだよね。テーマパークでもいいし、道の駅を巡るのだって良い。地域の食は、ぼくにとっても旅行の楽しみのひとつで、どこかに行けば必ず地酒を飲みたいと思っている。

以前、歴史的建造物を訪れたときのことだ。近くにいた方の話なのだけれど、その人は歴史には詳しくない。というか、あまり興味がないそうだ。しかし、建物そのものには興味があるそうで、建物を眺めては「ほうほう、なるほど」と楽しんでいる様子だった。

歴史というモノサシでは、リテラシーが高くないとされている人たちをターゲットにする。それは、なるべく広く沢山の人に訪れてもらわなければ、観光ビジネスにならないのだから、しょうがない。そうしたとき、「歴史じゃないなにか」についてリテラシーの高いひとをターゲットにするのも良いんじゃないかと思うんだ。

なにかしらのマニアックな楽しみと、歴史の楽しみとをかけ合わせる。どんな組み合わせがあるだろうか。鉄道オタク。アニメオタク。釣りキチ。ゲーム。まぁ、世の中にはたくさんの趣味がある。一見繋がりそうもないこと同士を無理やりにでも繋げてみると、案外面白いことが生まれるかも知れない。

友人が仕掛けている「TRPG先進都市計画」なんてのも、該当するだろう。世界中のゲームプレイヤーが、掛川を舞台にしたゲームをプレイする。シンプルにゲームを楽しんでいたら、なんとなく掛川の歴史を知ってしまった。なんて声もちらほら聞く。

食と歴史の組み合わせは、たべものラジオのテーマのひとつだけど、やっぱり似たような効果があるんじゃないかと思っている。食べ物のことを考えていたはずなのに、いつの間にか歴史に詳しい人になってしまう。そんな感覚。

今日も読んでくれてありがとうございます。なにしろ、ほとんどの「地方」は予算が少ない。あれもこれも、というわけにはいかないのだ。マーケットの見方を少し変えてみて、そこにアプローチしていくというのは、なかなか面白いやり方なんじゃないかな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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