今日のエッセイ-たろう

外敵が現れると国がひとつにまとまる、という現象。 2023年9月23日

まだ日本という国がひとつにまとまる前。戦国時代なんかはわかりやすいけれど、それぞれの藩が群雄割拠していた時代があった。その後、江戸時代には一つになったと考えてしまいがちだけれど、実際のところはそんなこともないんだよね。300以上の国に分かれていて、それぞれが独立した国として運営されていたわけだ。税、法律、運営の仕組みが独自なのだから、現代の日本とは違う感覚だろうね。

バラバラの状態から、みんながひとつにまとまる。歴史上、そういうタイミングはたくさん見られる。完全にひとつになる場合もあれば、連合という場合もあるし、結局バラバラの状態に戻るということもある。ただひとつ、外敵が現れたときだけは内乱をやめてひとつにまとまるという現象が起きるんだ。というのは、少し歴史に詳しい人なら常識と言っても良いくらいの事象なんだろうね。

外敵があると、国がひとつにまとまる。というのは、確かにその通りかもしれない。なのだけれど、敵じゃなくてもまとまるということもあると思うんだよね。

外からやってきた人。例えば観光客でもいいし、まちづくりに参加する外部企業でもいいし、会社のコンサルタントでもいい。外からやってきた人が、もともとそこにあったコミュニティーをひとつに纏めてしまうことがあると思うんだ。

まちづくりを例にしてみよう。外部からやってきた人は、その土地に関する素人だ。なぜ今の状態なのかも知らないし、どんな経緯があったのかも知らない。地域の人達が培ってきた情熱のようなものもよくわからない。地元の人達からしても、外部の人は知らないものだと理解している。何も知らないくせに。という声が聞かれるのは、当然といえば当然だ。

で、何も知らないものだから、その立場を活かせば素直に質問することが出来る。なんでこれを行っているんですか?それって他の人たちと一緒にやると都合が悪いんですか?どういう思いがあるんですか?などと、素直に聞いても怒られない。むしろ、真剣に向き合ってくれているんだなという気持ちすら湧いてくる。

人の良い地元の人達は、それぞれの立場から外部の人に対して説明をする。個別に聞いて回っても良いのだけれど、よくあるのは会議などで人が集まっているときに聞くと面白い現象が起きるんだよね。

同じ地元に住んでいて、同じようにまちづくりに関わっている人であっても、実は互いによくわかっていないことも多いんだ。あんなイベントやっても意味がないとか、耳にすることもあるもんね。じゃあ、当事者に直接話を聞けばよいのだけれど、どんなしがらみがあるのか聞かずにいて、知らないまま。知らないから、関心がなかったり、場合によっては反発する。なんていう状況がある。ここに、外からやってきた人が現れて話を聞くのだ。

地元の人は、外からやってきた人に説明する。外からやってきた人は、わからないことがあれば都度質問をしながら話を掘り下げていく。そして、それを別の地元の人が聞く。結果として、地元の人同士の理解が進むということが起きるんだよ。

仮に反対意見を持っていたとしても、それなりに理解していれば、反対の仕方が変わってくる。例えば、思いが伝わったら他のやり方を提案したくなる、という人もいるかも知れないよ。いや、実際にそういう事例を見たことがある。反対している人は、関心があるということでもあるから、状況によっては仲間になることだってあるんだから。

外敵ではなくても、外からやってきた人には内部をまとめる効果があるんじゃないかと思うんだよね。コンサルタントを生業にしている人の中には、この効果を意識している人もいるんじゃないかな。

今日も読んでくれてありがとうございます。たべものラジオでは、拓郎という聞き役が理解を高めてくれるんだよね。わからないことを質問してくるし、わからないまま進行しようとすると止められる。リスナーさんよりも前に、目の前の聞き役が理解できて、しかも楽しませなくちゃいけない。このフォーマット、企業やまちづくりで活用できないかな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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