今日のエッセイ-たろう

料理と言語の店と見世とStore 2022年11月18日

少し前に、魏志倭人伝を読んでみた。漢文じゃなくて、読み下し文と現代語訳の両方で記載されている本を読んだのだけどね。その本には魏志倭人伝だけじゃなくて、三国志にある日本列島に関する記録が掲載されていて面白い。卑弥呼が居たとされている時代は、日本には文字がなかったとされているから、とても興味深い。

大陸に比べて植物の生育条件が良さそうだな。一年中、菜を食べられるとある。あとは、食事の場では父子男女の差別なくとある。結構フラットな社会なのかもしれない。一方で、寝所は別々だとあるから、家族であっても比較的プライベートを重視したのかもしれない。一夫多妻であったらしいけど、妻たちは仲が良くて協力しあっていたとある。これは、権力とか権利じゃなくて、単純に男性の方が人数が少なくて希少だったのかもしれない。刑法とまではいかないけれど、それでもいくらかのルールがちゃんと決められていて、ルールを破った者は一族郎党が死刑になるくらいに厳しかったとある。ということは、それらの法を周知して記録する手段があってもおかしくないよな。

一音一義説というのがある。文字の有無はさておき、古代の日本語のひとつである大和言葉には、ひとつの音にひとつの意味が込められているという説だ。情報がなさすぎて、説のひとつでしか無いのだけど。そういうこともあるのかなっていうくらいに受け止めている。でもって、ちょっと面白がっている。

カタカムナという文字があったという説もある。神代文字とも言われる。中国から漢字が渡来するよりも前。日本列島でも文字が使われていて、ある時期から消滅したという説だ。もしかしたら、カタカムナと一音一義説が正しかった可能性もゼロではない。でもって、ちょっと面白い。なんだか、ワンピースのポーネグリフみたいじゃない。

「古事記以前の空白の歴史を埋める古代文字カタカムナ。その意味を読み解く一音一義の真相」

ね。なんだか面白そうじゃない。

ホントかどうか知らないけどさ。

店という言葉は、日本では「見世」という文字で表現されていた。店は中国語だね。こっちはテンだ。見世は見世棚が縮まって呼ばれるようになったんだよね。だから、店を訓読みで「ミセ」とも「タナ」とも読むのだ。

その成り立ちは、鎌倉時代の定期市である三斎市だとされる。それまでは定まった市場なんてのは無かったのだけれど、社会の発展とともに定期市が開催されるようになった。月に3回同じ場所。で、徐々に増えて室町時代には六斎市となる。つまり月に6回。そんな中で、毎回安定的に商品を提供する売り手が登場する。商品経済になるんだ。織物とか和紙とかね。そこでちゃんと商売するなら、買ってもらえるように商品をしっかり見てもらったほうが良いよね。そういう棚があったほうが良いよね。という風に発展していく。で、これが後に店舗になっていくの。

つまり、日本における「店」の根っこにある意味は、ディスプレイ。

ちなみに、中国語の店は場所を表しているという。广は家屋。見たまんまだ。で、その中は占う。占い小屋という話もあるけれど、占いによって商売をする場所を決めたという話もあるようだ。ここは詳しくは調べていないからよくわからない。

英語の「ストアー(Store)」の意味は、名詞なら「店」だ。では、動詞ではどんな意味?答えは「蓄える」だね。いろんなアイテムを「貯蔵する」からストアー。つまり、英語圏における「店」の原意は倉庫のイメージだ。

でね。「レストア(restore)」は復元するとか修復するとかの意味になる。reがつくと、リピートとかリターンみたいな感じで単語が変化するんだよね。さらにこれが変形することで生まれた言葉が「レストラン(Restaurant)」だ。以前、たべものラジオのどこかで喋ったと思うんだけど、レストランは店のことじゃなくて薬膳スープみたいなもののことだったって。リスナーさんは覚えているだろうか。これはね。体力をrestoreするスープという意味から派生した言葉のようなのだ。

日本には限らないけれど、たいていの料理屋は「店」と呼ばれる。英語でもストアーと呼ばれているしね。中国語は知らんけど。日本は料理をエンタメとして披露した最初の国と言われているんだよね。カウンターで鮨を握るところを見せるじゃない。海外でもそれがウケて、今ではオープンキッチンとして定着しているけれど、元々ヨーロッパ圏にはそんな文化がないわけ。日本で料理を見せる文化が誕生したのは、平安時代のこと。8世紀から9世紀頃だったかな。

面白いなと思ってさ。料理の「見世」だって。偶然だろうけれど。でも、日本人の意識の何処かにあるのかもしれないよなあ。

今日も読んでくれてありがとうございます。これといった確定的な根拠はない。有力な説というわけでもない。そんな見方もあるんじゃないかなっていうくらいの遊びですよ。今日の話ではっきりしているのは、見世とレストランの語源の話くらい。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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