今日のエッセイ-たろう

未来を自由に生きるヒントとしての時間感覚。 2023年10月16日

たべものラジオの影響で、明治時代や江戸時代の出来事が「そんなに昔のことじゃない」とか「結構最近なんだね」という感想を持つようになってしまう。そんな現象が起きている。ぼく自身もそうだし、聞いている人たちにも波及しているらしい。

人間の一生を考えると、何世代も前のことなんだからずいぶんと昔のことなんだけどね。人類史として考えると、ほんの最近のことになる。両方の感覚を同居させたまま、物事を眺めるというのが大切なポイントになるんだろうな。

今もゴマに関する調べ物をしていて、やっと日本の中世までたどり着いたところ。1万年近く前から話が始まったので、1000年前のことが身近に感じる。現代の感覚にあった「料理らしき料理」が見られるようになってくる頃だ。

たくさんの料理に関する古文書は残されているんだけどね。現代人が知っている料理が発展するのって、この時代くらいから。言い換えると、美食の始まりなのかもしれない。今のところ、ぼくにはそう見えている。もっと勉強したらもっといろんなことが見えてくるんだろうけど。

最近、中学校の職場体験プログラムの受け入れをした。3校で6人。この世代との接点が無いわけじゃないけれど、子どもたちと「食について一緒に取り組む」という時間は稀なこと。ぼくの人生の3分の1にも満たない人と、同じベクトルで考えることはとても興味深い。なにしろ、彼らにとってぼくの少年時代は「歴史の一部」なのだ。

職業体験プログラムは中学2年生が対象になっている。彼らが生まれた2008年は、日本でiPhone 3Gが発売された年だ。これ以前から、いくつかのスマートフォンやそれに近いデバイスはあったんだけど、社会に広く普及するほどじゃなかったよね。この頃からスマホが当たり前の社会になっていくわけだ。つまり、彼らはこの移り変わりを知らない。

たった15年。古今和歌集が編纂されてから新古今和歌集が著されるまでに300年。同じ物差しをあてると、一瞬の出来事のように思える。数百年後の未来であれば、同じように感じられるのだろうけれど、ぼくらには到底そうは思えない

冒頭での「両方の時間感覚を同居させる」というのは、主観と客観を同時に持つということなんだろうな。切り替えるんじゃなくて、同時に。世阿弥が風姿花伝の中で説いているけれど、離見の見というのがこれにあたるのか。なかなかハードルが高い。

今から15年後はどんな社会になっているだろう。テクノロジーは、どんな形で社会に実装されていて、習慣はどんなふうに変わっているのだろう。予想してみても、完全に当たることはなさそうだ。そのくらいのスピードで変化しているんだろうな。

未来予想ではなく、未来創造。予言を確実なものにするには、予言通りの未来を作り出すことだ。って誰が言っていたんだっけ。

未来を作り出す。こんな社会にしたい、こんな世の中だったらみんなが幸せだよね。っていう方向に向けてみんなでいろいろと取り組んでいくんだけど、それでもそのとおりにならないこともあるし、うまくいくこともある。

たとえば、2040年をゴールに設定したとして、その時に近づくに連れて、目標との差分が見えてくるよね。その度に修正をしていくんだけど。修正をしていくためには、「このままだったら未来はどうなる」という予想と「作り出したい社会」という創造、そして「いま起きている現象」の3つを照らし合わせて検証することになるだろう。

将来において答え合わせをすることが出来るのは、過去に未来予想をした者だけである。ということだ。そのための材料として、人類の過去の歩みは大いに貢献する。文化は移ろい続けるものと、累積するものとがある。その両軸を、主観と客観の両方の視点で見る。そういうのがいいのかもしれないと、最近になって感じるようになったよね。

今日も読んでくれてありがとうございます。こういうのって、自分で勉強してみないとわからない感覚もあるんだろうな。きっと、似たようなことを聞かされてきたはずなんだよ。ただ、自分の言葉で熱量をのせて語れるようになるまでには、時間がかかったな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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