今日のエッセイ-たろう

食中酒を選ぶときの遊び方。 2024年6月26日

夏向けのお酒ってどれですか?という質問があった。ふぅむ、なかなか難しい。気持ちはわかるけれど、造り手もそんなつもりで作っていないだろうしなあ。暑いときに飲みたくなる味って、どんなものなのだろう。それがわかれば、それに見合ったお酒をチョイスすればよいのだろうけど。

グビグビと飲み干せる喉越しの爽やかさ。これは、日本酒に求められていない。なんというか、そこはビールだろうなって思うのだ。無理してそこに張り合わんでも良いだろうしね。日本酒好きが飲んだら、逆に残念に感じてしまうかもしれない。アルコール度数が低くて酸味があるようなものと言われたこともあるけれど、酸味はともかく度数を下げるだけならば割り水でも良いのだろうか。いや、それだと薄くなる。いやいや、濃いめの甘口だと結局爽やかな感じにはならんなぁ。などといろいろ考えてしまう。

日本酒好きのぼくとしては、グビグビ飲み干すよりも、じっくり正面から向き合って味わいたい。だから、夏=ビールというイメージに付き合わなくて良いと思う。

もし、ぼくが「夏向き」という意味で日本酒を選ぶとか作るということになったら、夏の料理に合わせるかな。日本酒は、それ単体で楽しむことももちろんあるけれど、食中酒として飲むことも多いものだ。夏によく使われる食材とか味付けに合わせる。夏というイメージとは関係なく、その場の他のものとの関係性で考える。そんな感じかな。

「我思う、ゆえに我あり」というよりは「あなたがいる、ゆえに我あり」という感覚。こんなことを偉そうに言える立場でもないのだけれど、「我」は「周辺のあらゆるものとの関係」で存在すると思っているんだ。世界でたった一人になっちゃったとして、物理的には確かに存在しているのだけれど、誰もその存在を認知してくれない。そうなったら、「有り」なんだけど「無し」というふうにぼくには思えてしまう。

いっぱいいっぱい、いろんなものが周りにあっていろんな関係がいっぱいある。Aさんよりぼくは身長が高いし、Bさんより太っている。Cさんとは普段会わないけれど付き合いが深くて、Dさんとは頻繁に会うけれど表面的な付き合い。とかね。

自分のためにお酒を選ぶときは、「食卓に並んだ料理の相関図のどこに配置するか」というイメージがあるかなぁ。あくまで、料理を中心とした考え方ならばってことだけど。この柔らかな味の揚げ出汁だったら、このくらいの距離感でこのくらいの個性。がつんと酒盗みたいな味だったら、もう少し近い距離感で強め。クセの強い下町のおやっさんには、肝っ玉母ちゃん。というのは昭和のドラマみたいだけど、そんな感じ。

波平さんみたいな焼き魚と、フネさんみたいな煮物があったら、その食卓に加わるキャラクターはサザエさんかカツオくんか。とまぁ、そんなふうにキャラクターに見立てて考えるのも面白そうだ。こういうときって、誰がその食卓に加わっても「磯野家」だしね。だから、誰が正解ってこともない。その場に集った人たちで、その場の縁が紡がれる。

お、次の料理が来たぞ。今度は誰だ。サザエさんみたいに華やいでいるな。じゃあ、マスオさんに入ってもらって少し落ち着いてもらおうか。カツオくんが騒々しいから、お隣からユキエさんにご登場願って、少し大人しくしてもらおうか。なんてことが料理とお酒で繰り広げられたら楽しい。

今日も読んでいただきありがとうございます。メタファーとして捉えちゃうと、意味がわかんなくなちゃうんだけどね。食卓に並んだいろんな美味しそうなものを、こんなふうに見ると面白そうだなと思ってさ。そういう遊びよね。お酒をのでいるとき、こっそりこんなことを考えてニヤニヤしているかもしれんよ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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