今日のエッセイ-たろう

肩書は、「カテゴリの中の一人」なのか「個人の特性を説明するもの」なのか。 2024年8月3日

たまたま知り合った人から、まちづくりに関わりたいと言われた、と妹から言われた。まちづくりという言葉が何を指し示しているのかはよくわからないのだけれど、気持ちはわかる。掛川というまちをステージにして、なんか面白いことやりたい、関わりたいという衝動だ。それが他の誰かと呼応して、いつのまにか何かが生まれていく。そういうのが楽しい。

声をかけられたのは大学生だという。ちょっと声を上げればいろんなところからお呼びがかかりそうなものだが、そうでもないらしい。ぼくが観光行政との関わりを持っていたり、イベントなどの企画に参画しているのを妹は知っている。だから、相談したのだという。

いつでもウェルカム。と答えておいた。その気があるなら、電話でもメールでもSNSでもいいから連絡して。ぼくじゃなくても良いと思う。

若い人がまちづくりに関わりたいと言う。そうすると、場合によっては面倒なことになることもある。若い人のアイデア、若い人の行動力。そういう、正体不明の期待をかけられることがあるのだ。そして、アイデアを出してみると、あれが良くないとか、ここが配慮が足りないとかいろいろ言われる。結局何も実現しないまま若者の労働力と気力を搾取して終わる。そういうケースを見たことがある。

掛川は比較的若年世代に寛容だから、良い方だと思う。勝手な想像だけれど、地元の祭りというのはフォーマットとして青年衆が取り仕切ることになっていることが影響しているのかもしれない。上の世代である、中老や大老はあまり口を出さずに任せるし、補佐をするということになっている。そういうフォーマットなのだ。それでも、やはり「若い人のアイデアでガンガンやってほしい」という変な期待をかけられることも有るし、身動きが取れなくなることも有る。ぼくも経験したことが有る。

柔軟な発想と行動力は、年齢とは関係ない。有るとしたら、無知であることが原因で、既存フレームから簡単に逸脱することだろう。それを求めるのであれば、地縁や仕組みに無知であることを攻めてはいけない。そこがポイントなのだから。

なにかアイデアが浮かぶと、声を掛ける人がいる。何もなくても、たまに会って喋って盛り上がって、そこから何かを始める相手がいる。それが何人かいるので、誰かが思いついたアイデアが、他の誰かを経由してぼくに声がかかることも有るし、また別の人から直接声をかけてもらうことも有る。チームというほど結束した団体ではないのだけれど、面白いことやるんだったらこの辺の人たちとやろう、みたいな空気で緩やかに繋がっている感じだ。

その空間では、肩書が消失している。一応は知っているのだけれど、ほとんど意識をしない。ぼくが料理人であることを忘れたまま会話していることも大いにある。お互いにそんな感じなのだが、なにが出来るか、どんな思考をするか、くらいのことを知っている。というと、言葉が足りない感じがするな。有り体に言えば、その人を知っていて互いに好意を持っていて、信頼している。そういうくらいの関係。気持ちが完全に個人に向いているから、所属組織とか肩書には興味がわかないのかもしれない。

日本に限らず、人類は長らく「◯◯家の長男」とか「◯◯家の長女」と互いを呼んでいて認識してきた。今でも集落ではその風習が有る。社会のニーズがそこにあったからだろう。団体と団体の繋がりあい。だから、カエサルの子供もカエサルという具合に名前が一緒で困らない。というかむしろ都合が良かった。

社会の認識が団体から個人になった現代では、あまり所属団体に意識を引っ張られないほうがよいのかもしれない。大学生や高校生が仲間になるのはウェルカムなのだけれど、大学生だから、という肩書はいらない。お互いに、そういう関係でいたいと思うんだ。

今日も読んでいただきありがとうございます。順番だと思うんだ。◯◯というカテゴリの中のひとりである私、ではなく私が◯◯をしている。名刺だって名前から書くのが良いし、自己紹介も名前から始めたら良い。ってのは、カタチだけど、カタチから入ってカタチを変えていくのも良いんじゃないかな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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