今日のエッセイ-たろう

飲食店の運用を組み立てる基本の概要。2022年12月4日

友人が東京で飲食店を経営していいる。飲食店と言っても幅は広くて、彼の店はうちとはだいぶ違う。会席料理でもないしね。料理よりも飲料を中心とした飲食店だ。と言うと、居酒屋のように聞こえるけれど、それも違う。彼の店がメインにしているのはお茶なのだ。

一度、彼に仕事の依頼を受けたことがある。店舗のマネージメントだ。業務内容としては、ぼくのスキルが大いに役に立つだろう。残念ながら、距離的な問題や時間の都合で関わることは難しい。週に3日も4日も東京に行くわけにもゆくまい。なにせ、自分の店を持っているのだから、いかに友人とは言え我が家を潰してまでというわけにはいかない。

彼のビジョンは明確だ。静岡を中心とした緑茶をもっともっともっと世界に広げること。そのために、いろんなチャレンジをしている。その事自体には多いに賛同するし、心から応援したい。そのアンテナショップとして東京駅均衡で緑茶やお茶割りをメインにした飲食店を経営いしているのだ。もし、賛同してもらえる人がいて、この文章を読んでくれている人がいたら、ぜひ彼の店を訪れてもらいたい。その店の名はクラフトティーという。

半年ほど前に、東京にあるクラフトティーの店舗を視察した。アドバイスが欲しいと言うので見に行ったんだよ。社長である友人にもいろんな意見を述べさせてもらったのだけれど、改めてここに文章として残しておこうと思う。

まず、店舗の運営の話だ。タッグを組む相手をよくよく見定めたほうが良い。現在はどうか知らないけれど、視察した時点でマネージャーを担当していた人と、その会社は正直に行って現場の運営能力は低い。企画力はあるかもしれないけれど、それと運営は別の話なのだ。

例えばの話。お茶との相性が良い食材としてご飯を商品にしようとしたとする。お米を仕入れて、お米を砥いで、炊く。定食にするのかおにぎりにするのかと迷うところだけれど、その店ではおにぎりを選択した。そこまでは良い。で、炊飯器とは別に保温機を購入した。保温器を置く場所を確保するために、スタッフの導線を犠牲にして新たに棚を設置した。そのための費用も発生する。

ここだ。本来考えなくてはならないのは、コスパなのだ。一見すると、機械や仕組みシステムを導入することのほうが効率が良いように感じる。しかし、そうとは言い切れない。導線の一部を潰すことで生じる損害と、機器を導入することで発生するメリットの天秤をかける必要がある。

ぼくの考えでは、ご飯の保温機は無駄だ。保温専用機を導入することで、炊飯器は1台でまかなえる。それに、ご飯が足りなくなった場合にも並行してご飯を炊くことが出来る。けれども、その狭い店では無駄だというのがぼくの意見だ。

そもそも、ほんのちょっとした工夫でカバーできるレベルの話だ。バイトの教育にかかる労力や時間、つまりコストを考えても保温機を購入するよりも簡単に対応できる。人件費を払ってでも、構わない。それでも、導線を潰すよりもコスパは良い。教育費を削減することの経費に与えるインパクトの大きさは理解している。バイトの平均的な勤務年数も理解している。それでも、店舗の面積を考えたら人の運用にコストをかけたほうが効率が良いのだ。

このバランス感覚が、特に現場では重要だ。言い換えると、経営判断をするためには、ある程度現場に精通した情報が必要なのだということだ。正直な話、委託している会社やそのスタッフにはその能力が足りない。店舗のオープンから関わっている現場の運営責任者では無理だ。何店舗かのオープンに関わっているというが、それは資金が豊富でロスを吸収できるだけの母体事業を別に行っている会社だから成り立っているだけ。実際には、無駄とロスのラッシュである。飲食店を一から立ち上げるのは、もっとシビアなのだ。

この稿を読んでいるかどうかは知らないけれど、もし読んでいたらよくよく考え直したほうが良いと思うんだおよね。めっちゃ大事なことを言っているから。機械やシステムが重要なのはもちろんだ。前職でも現職でもそれを訴えているくらいだ。けれども、機械や仕組みが全てではないことも知らなくてはならない。立地や店舗面積、雇用する人員、導入する機器など、ありとあらゆる環境のバランス。これが全てだ。品質を無視して効率だけを考えても、人的コストをかけたほうが良い場合もあるのだ。ましてや、ポリシーや品質を考慮したら、この関係性はもっと複雑になってくる。このあたりのことを語りだしたら、かなり長くなるので今日の話はめちゃくちゃふんわりしている。もし、詳しく聞きたい人がいたら直接連絡をしてもらえればコンサルとして承ります。

今日も読んでくれてありがとうございます。店舗の運営などの現場について、人に任せるというスタイルも良いと思う。けれども、それについて熟慮できるだけの情報を獲得するのは経営者にとって重要なことなのだ。報告にはコストが発生する。しかも、バイアスがかかるし、報告してくれる人の能力にも左右される。大手なら致し方ないが、ベンチャーならば経営者は現場の情報を自ら取得する覚悟が必要だ。現場に経てばよいという話じゃない。現場の人間として、一流とはいかなくても、最低限一人前であることは「情報の取得」と「行きた情報をもとにした判断」に大いに役に立つだはずだ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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