1853年、江戸湾入口の浦賀沖に真っ黒な外国船が現れた。マシュー・ペリー率いるアメリカ海軍の艦隊、通称“黒船”である。江戸幕府は大慌て。その狼狽ぶりは「泰平の眠りを覚ます上喜撰、たった四杯で夜も寝られず」と皮肉たっぷりの狂歌に謳われている。実はこの狂歌でうたわれた上喜撰とは、宇治の高級茶のブランドなのだ。ペリー艦隊が茶を求めたという話は聞かないが、その後の茶産業とアメリカの関係を暗示しているかのようである。 日本ではコーヒー文化のイメージが強いアメリカ合衆国は、実は建国前から茶に親しんでいた。なにしろ、紅 ...