今日のエッセイ-たろう

オリジナルの世界を作り出すのって、どうしたら良いのだろう。 2023年5月1日

先日、レゴランドに行ってきた。客商売をしていると、世間一般の休日は休みではないので、なかなか家族で出かけることが出来ない。春休みに遠出できなかった娘からのリクエストである。幼稚園を休んで、家族日帰り旅行へと繰り出したのだ。

ぼくは、学校などでは学べない体験がたくさんあると信じている。勉強も大切だけれど、様々な体験もまた同等以上に大切なことだと思うので、なるべく体験の機会を増やしたいと思う。

レゴランドは、子どもたちにとって楽しい場所になったようだ。なにが楽しかったか聞いてみると、興味深いことに各種のアトラクションについての感想はほとんどなかった。むしろ、レゴブロックを使った遊びや、アスレチックのような体を動かす遊びの場。それから、親子で体験したこと。彼女にとっての心に残る体験は、そちらのほうが大きかったようだ。

日帰り弾丸旅行は、なかなかハードだったけれど、家族で楽しい時間を過ごせたことは良かった。ただ、大人の目線から見て、少々違和感があったのも事実だった。施設への不満とか、物足りなさではない。なにか、根本的に期待とは違っている部分があったように感じたのである。

当日はうまく言語化出来なくてスッキリしなかったので、改めて思い返してみる。アトラクションと言えば、そのほとんどが「乗り物」だった。メリーゴーランドやコーヒーカップ、水中探索やゴーカートという定番のアトラクションがあちこちにある。ジェットコースターも電車も、みんなレゴブロックの世界で統一されている。シンプルに、子供向け遊園地としては楽しさが散りばめられているのだけれど、それぞれに感じるのはレゴブロックである必要があるのか、という疑問。

テーマパークというのは、その世界への没入感というものが楽しみのひとつじゃないかと思うのだ。アニメや映画の世界に、まるで自分自身が迷い込んだような感覚。ジェットコースターがレゴブロックを模していることが、それにつながっているのかどうかは微妙な気がするのだけれど、どうだろうか。

レゴブロックは世界中で人気のおもちゃだ。なぜ、そんなに子どもたちを夢中にさせているのだろう。子供の頃のぼくも、レゴではなかったけれどブロック遊びに夢中になった。なんだかよくわからないけれど、目の前にある無数のパーツを組み合わせて、なにかが出来上がる。ひとつひとつのパーツからは想像もつかないものを、組み合わせることで自分にとって意味のある形に組み上げていく。それが楽しかったように思う。世の中に存在しないはずのものが、そこに出来上がる。それが楽しいのじゃないだろうか。

レゴランドには、ミニチュアの町が作られていた。とんでもない数のブロックを使って、東京や大阪や名古屋の町が再現されている。スカイツリーも東京タワーも、ナゴヤドームも圧巻である。子供でなくてもワクワクする。なのだけれど、実際に見てもイマイチ感動が薄かったのはどういうことだろう。もしかしたら、模写であるからなのだろうか。すでにあるものをどこまで忠実に再現するか。それは、たしかに面白い。面白いのだけれど、それは作りての面白さ。見るとなると、感動がイマイチな気がする。

映画や絵とくらべてみる。何が違うのだろう。SFならば、今現実に存在しない世界を描いている。ドキュメンタリーは、実際の世界を日常とは違う視点で捉えている。こんな世界もあるかもしれないという架空の物語が展開されている。絵画だとすると、まるで写真のように世界を切り取っているものもあるけれど、そこには作者の視点がある。私にはこんな風に見えています。という物語のように、ぼくには見える。そして、それが面白いと感じているのかもしれない。

だとすると、レゴランドの世界は、既存の世界をなぞっているだけのようにも見える。昔と比べてしまうというのもナンセンスかもしれないけれど、最近のレゴブロックは「専用パーツ」がとても充実している。何かを再現するためのセット。そういったものがたくさん販売されている。まるでプラモデルのようだ。

個人的な好みとしては、そうした専用パーツを提供してくれるよりも、汎用パーツをたくさん使える方が楽しいと感じている。三角形のブロックだったら、いろんな角度の三角形があって、それらをどう組み合わせたら思い通りの世界が出来るのか。足りなかったら足りなかったで、思いもよらない形になっていくことも面白い。精密ではない世界だからこそ、ザラザラな世界だからこそ、足りない部分は脳内補完する。というところにも面白さが潜んでいそうな気がするのだけど、どうなのだろう。

今日も読んでくれてありがとうございます。十分に楽しんだんだよ。だけどね。どこかで、これってレゴらしい世界なの?っていう疑問もあるんだよね。「どこにでもある街」が日本中にあって、ちょっとだけ「らしさ」で飾り付けたような感覚。もっと、本質的な「らしさ」を全面に押し出すにはどうしたら良いんだろう。具体的なことは何も思いつかなかったのだけれど、ちょっとばかり違和感があったんだよね。難しいんだろうな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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