今日のエッセイ-たろう

ロジカルシンキングと学びと仕事 2023年3月22日

サラリーマンを辞めて商売をするようになって、つくづくと自分の能力に呆れかえる。経営とかマネジメントが下手くそ過ぎるのだ。家族だからなんとかなっているという部分が大きい。逆に家族だからこそ出来ていない部分も大きい。

特に、マネジメントが問題なんだろうな。人的資本も金融資本も不足しているのは事実だけれど、そんな中でも組み合わせによっては最大パフォーマンスを上げることが可能だ。小さいながらに最大出力。それも、ガムシャラに頑張るというような精神論ではなくて、仕組みとして最大出力。ここが決定的に欠けている。

しばらく前にそんな愚痴をこぼしたことがある。そこで聞いたのだが、どうやら、僕一人だけの話ではないらしい。この数十年の間、日本はマネジメントが弱いらしい。何しろ、人的資本も金融資本も欧米のそれとは大差がなかったというデータが有るという。それでも実質経済成長率に差があるのは、総合力による差であると。一体どこからそんなデータを仕入れてきたのだと聞くと、いくつかの本を紹介してくれたのである。

ロジカルシンキングが大切だということはよく言われている。ぼくもそうだと思うし、今ではそれなりに勉強している。エビデンスとなるデータをかき集めて、考えて考えて考えて仮説を立てる。そして片っ端から仮説の反証を考えていく。ロジカルシンキングの手法など学んだことがないのだ。しょうがないから、情報と情報を組み合わせて検証していくことを、何度も繰り返しては潰す作業をするより他にないのだ。

そう言えば、ぼくは大学というものに通ったことがないのだけれど、大学ではロジカルシンキングというものを指導してくれないのだろうか。と思って、身近な人に聞いてみた。すると、人によっては「そんなものは全く無い」と言うし、「ロジカルシンキングの授業があった」という人もいるし、「専門の授業はないけれど、学科の授業そのものをちゃんと勉強すればロジカルシンキングの訓練になる」という人もいるし、中には「大学は入るまでが勝負で、あとは遊ぶものだ」と豪語する人もいる。

大学って一体なんなのだろう。ぼくは、知的好奇心が強いので、今からでも大学に行けるものなら行きたいと思っていたのだ。けれども、どうやら学び舎としても大学の姿というのは、ぼくの幻想かもしれないと思えてきてしまった。

学生ではなくてもいつでも学ぶことは出来る。たしかにその通りだ。時間さえ捻出できれば、あとは個々のやる気次第である。たしかに偏りはあるし、学生のように気軽に質問できる環境ではない。それでも、書籍や動画やポッドキャストなどを組み合わせれば、しっかりと学んで知識欲を満たすことは出来る。役に立つかどうかなどは後回しで良い。とにかく、学びたいことを学ぶことだけは出来る。

だが、時間を確保することが問題なのだ。日本の労働時間は年間2000時間くらいだという。一日あたり8時間の労働ならばそういうことになるだろうか。これに残業が加わって、更に同僚や上司と飲みに行って、などということが加われば、労働に関わる時間は伸びる。通勤に片道1時間という人もいるだろう。睡眠時間と食事の時間とを加えたら、もうほとんど24時間が終わってしまうのではないだろうか。冷静に数字にしてみるとしんどい生活をしているように見える。

そう言えば、何年も停滞していた勉強を再開したのは出世レースから離脱したときだった。それまではとにかく馬車馬のように働いて、帰宅は終電が当たり前だったし、始業よりも早く出社していた。始業よりも1時間早い通勤は、ゆったり座れる電車と自由な読書時間となっていてそれなりに快適だったが、それでもなかなか厳しい生活をしていたのだと思う。

ある時、思い出したのだ。元々、この会社に入社したのは基本的なビジネススキルを身につけるためだったということを。いつの間にか、その組織の中で生き残ることに囚われていたことに気がついたとき、ふわっと気持ちが楽になったことを思い出す。それから、やっと本を読む時間を作ることが出来た。

おかげで、多少なりとも思考力は強化されたし、もしかしたらその中で多少なりともロジカルシンキングが強化されたかもしれない。退職届を提出したときには、出世の話を断るときでもあった。

ボロボロの斧で一生懸命に働く木こりがいる。切れ味が悪くてしょうがないと言っている。ならば、木を切るよりも斧を手入れすれば良い。そうしたら、木を切る効率が良くなるのだろうと尋ねる。そうすると、木こりはそんな時間が無いと言うのだ。

この有名なメタファーは、日本の産業構造そのものかもしれない。生産性を向上させるには、一度就労時間を考え直して、学ぶ時間を作り出すことと学ぶことの価値を啓蒙することが近道なのだろうか。直感的には、かなり勇気がいるだろうけれど、エビデンスベースドで考えるとそうなる。

今日も読んでくれてありがとうございます。会社はチームで、チームは集合知を活かすためにある。と、考えると、ぼく個人の能力だけを磨くのは不合理なんだろうな。しっかりとチームを形成して、その中で個々の力を発揮する。勉強と同時に、行動しなくちゃね。さてと、行動しよう。で、行動量を増やすためにも。もうちょっと睡眠時間を取らなくちゃ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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