世界観に浸る楽しさ。面白さが伝わる空気。 2022年8月25日

久しぶりに映画を見た。と言ってもオンデマンド配信でだけどね。それにしても、まとめて4本も見てしまった。食事をしながら、高校生になる娘と二人でのんびりとするのも良いもんだ。

改めて映画を見てみると、その映画を作った人によって思想が違うところに気がつく。普段あまり気にしていないのだけれど、連続してみることでよく分かるのかもしれない。それだけ人間の記憶とか、意識って曖昧なんだろうなあ。今回は、娘が一緒に見たことも影響している。学生ではあるけど演劇をやっているから、ぼくなんかよりもずっと解像度が高いんだ。ぼくとは違ったポイントで反応していてとてもおもしろかった。

余計な動き。役者によってなのかもしれないし、演出家によってなのかもしれない。それをわざとやっているのかもしれない。なんとなく、そんなものに気がつく。いわゆるオーバーアクションというやつだ。驚くにしても、イライラするにしても日常では見ることのない動きが加わる。

見る人にとってわかりやすいと言えばわかりやすいのかな。そういう意図を持って意識的に動きを付けているという部分もあるのか。一方で、それが不自然と感じる場合もある。今回は、ぼくには不自然に感じたんだ。映画の世界観に浸っているときに、不意に現実に引き戻される。

面白いよね。非現実的な映画という世界に浸っている。その中で非現実的なオーバーアクションがあると、却って現実世界に引き戻されてしまうのだから。演技についてはぼくは全くの門外漢。だから、それが良いのかどうかは全くわからないのだけど、ストーリーに引っかかりが出来てしまってね。なんというか、物語や絵本をつっかえつっかえ読んでいるのを聞くような、知らない漢字に遭遇してそれが気になって物語が頭に入ってこないような、そんな感覚になる。

料理においても、同じことがあるんだろうなあ。もちろんポッドキャストでも。本筋の中で面白がる。余計なことをして面白そうに見せる。どっちが良いかっていうのは好みだろうけど、個人的には前者が好き。だけど、コンテンツの提供者として前者でいることは難しそうに感じる。それなりに、熟練の技が必要なんだろうな。

全体の流れを壊さない。食事そのものの楽しさ。純粋な知識やストーリーの楽しさ。この世界観を壊さないように、それでいて本質的な面白さを引き出す。なんとも日本料理的な発想だ。

サポーター専用コンテンツを収録した。豆腐シリーズの序盤で中国史を扱う羽目になったのだけれど、少々難しくなってしまったので、その解説。といってもぼくも中国史が得意なわけじゃないけど。とりあえず、拓郎が理解できるくらいの説明をしなくちゃね。

その場に、娘もゲスト参加したんだ。冒頭から登場しているのだけれど、なかなか会話にうまく混ざれない。どうにか話を振ろうとするのだけれど、ぼくもうまく出来ないし、娘もうまく混ざれない。と思っていたんだよね。収録が終わって、彼女とそんな話をしていたら、そうじゃないんだって。なるべく話を途切れさせないようにしてたら、そうなったそうだ。

ぼくと拓郎の二人の呼吸が出来上がっている。そう感じたそうだ。まぁ、100本以上も二人でやってきているからね。それどころか、普段から二人で会話している時間も長いし。リスナーの一人でもある娘は、つい参加していることを忘れて聞いてしまったらしいよ。独占ライブだね。それと同時に、間とか呼吸とかを感じて、それを壊さないように気をつけていたって言うんだよ。

せっかく掴みかけた世界観。この場合は中国史の流れだけど。それがスルリと手の中からこぼれ落ちるというのが、彼女にとっては嫌なことらしい。だから、一人のリスナーとして、なるべく「引っ掛かり」にならないようにしていたとね。

いやあ、勉強になったな。そんな感覚でポッドキャストや芝居を見ていなかったから。料理の時は一生懸命に流れを考えてるんだけどなあ。食事や会話の流れを途切れさせないように。なるべくお客様たちの世界を壊さずに、それでいて心地よい空間を作り出せるように。そういうところは、同じなんだな。

楽しむためのコンテンツの核になる部分。ということで、これからは意識を持って取り組んで見ることにしよう。

今日も読んでくれてありがとうございます。そうそう。大御所の映画監督についてこんな事を言っていたよ。王道を作り出したという意味ではスゴイことだし、王道が生まれた経緯を知ることはつくり手にとっては大事なこと。だけど、そのうえで新しいことを生み出すことが後進のわたしたちが目指すこと。なんだかなあ。子供の成長って、いつもびっくりさせられるよ。

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