企業と個人の看板で仕事をするということ。 2022年11月13日

幸いなことに、ぼくの周りで企業の看板を振りかざす人はいない。大企業に属していたとしても、普段の仕事ぶりを見ると、ほぼ個人のブランドで仕事をしている。でもまぁ、世の中には企業の看板と自分の実力を履き違えてしまう人もいるんだよね。時々見かけるよ。

極めて稀なことではあるけれど、「しょせん料理屋」という態度のお客様もいらっしゃるんだよね。一瞬カチンと来ることもあるけれど、まぁしょうがない。そういうこともあるだろう。

実際に、独立してみればわかるんだけどね。たべものラジオも掛茶料理むとうも、個人の名前を全面に出してしまっている。個人情報もへったくれもない。顔も出ているし、勤め先もわかる。で、あなたはなにが出来るの?どんな人なの?っていう状況で生きている。別にぼくらが特殊なのじゃなくて、基本的に中小零細企業っていうのはそういうものだ。会社の体力がないから、個人という部分にフォーカスせざるをえないのかな。代表者が入れ替わったり、不幸があったりすると銀行預金が止められることもあったらしいよ。そのくらいに、あなたが何者か、にフォーカスされているということだ。

個人の信頼なんてのは、たかが知れている。だから、集団としての力を構築してきたのだろうし、そこに依るのだろう。現代社会では企業を思い浮かべる事が多いけれど、国もやっぱりそうだ。普段は意識しないけれど、海外旅行に行けば自分が日本人であることを意識する。もちろん、そこに上も下もない。ただ、集団への帰属意識みたいなものは自覚できるよね。自分は日本人なんだなって思う。

歴史を振り返ってみても、同じ現象がたくさんある。一部の貴族が朝廷の中で権力争いをしていた平安時代。個人の力を誇示すると同時に、どれだけ天皇家に近いかを競ってもいた。つまり、天皇というブランドで仕事をしていたようなもんだ。

ぼくもかつては大企業に所属していたことがある。その頃は、あまり気にかけていなかったけれど、企業の看板で高飛車にならないようには気をつけていたかな。別に偉くもないし。なんだろうな。そもそも、企業の看板が無いと仕事ができないようなら、自分の能力が足りないという証拠でもあるからね。営業って、そういう仕事だと思っている。

そういえば、まともに就職活動なんかしたこと無い。一応、中途採用試験は受けたけれど、落ちるなんて思ってなかったな。だってさ。提出した履歴書と小論文の添削をしてくれたの、営業本部長なんだよね。執行役員の。だいたい、試験を受けて正社員になれって声をかけてくれたのも本部長なんだから。

話の流れでわかると思うけれど、その時点でぼくは派遣さんだったのね。営業部にいるけれど、派遣として営業の仕事をしていた。量販店の店舗担当なんかもしていて、そこの人員が足りないときは、派遣会社に交渉しに行く。ぼく自身が所属していた派遣会社に対して、人員補充をしてくれって言いに行くの。どこの人間だよって。

社会に出てから、派遣として働いていたことがある。それも、そこそこ長いかな。派遣先も一箇所ではなくてあちこち。クライアントも一社ではなかった。勤務先をやめると、すぐに所属元の派遣会社か他の派遣会社から声をかけてもらう。もちろん、始めのうちはそんなことないのだけどね。ある程度信頼が蓄積してくると、仕事を探さなくても声をかけてもらえる。ぼくの、社会人序盤はそんなふうにして始まった。

今思えば、これが良かったのかもしれない。そもそも、ぼく個人の仕事に対する信頼がなければ次につながらない。そういう発想が定着したんだろうな。取引先や個人のお客様との関係もそうだったし、社内でも同様。花形部署に所属しているとか、部長に気に入られているとか、ホントにどうでも良いんだよね。そんな思考を態度に出しちゃうから面倒くさいことがいっぱい発生しちゃうんだけど。その辺は若かったなあ。

退職するときには、部署での送別会は無かったし。チームのみんなや上司が企画してくれたっけ。その仲間は、何度か掛川まで食事に来てくれた。信頼というのもおこがましいけれど、つながりってそういうことじゃないかな。最後の1週間は、各取引先が企画してくれた送別会を行脚したんだ。そのうち2社ほどからお誘いを頂いたのは嬉しかったな。企業の看板じゃないところで繋がれた気がした。もちろん丁重にお断りしたから、今ここにいるんだけどね。

今日も読んでくれてありがとうございます。退職してから人との交流が途切れたって、寂しそうに話している人に会った。その直後に、大企業の看板に寄りかかっている人に遭遇した。ということで、自分と重ね合わせながら思考を巡らせてみたよ。結論としては、どちらかに拠りすぎるんじゃなくて、うまくバランスを取るのが良いんじゃないかって思うんだ。一人の力ではどうにもならないことは、うまくブランドの力を借りる。そのくらいの距離感かな。そういうときは、自分がブランドを代表する看板であるという自覚が必要だってことなんだろう。

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