今日のエッセイ-たろう

動物は意外と利他的な存在かもしれない。 2022年7月26日

ガラパゴス諸島の動物たちは、人間がやってきてもあまり警戒しないらしい。外敵がいなくて、のほほんと暮らしている。食べ物の獲得にもさほど苦労しない。生物集団として、とても豊かなコミュニティを築いているらしい。

ガラパゴス諸島は、ダーウィンが訪れ進化論のきっかけになったことで有名だ。日本では、ガラケーなどと「時代に取り残された」や「独自進化した」という意味の比喩として使われる。けれど、そんなこともないだろう。生き物、そして社会性の本来の姿がある「理想郷」なのかもしれない。

最近、生物学者の福岡伸一さんのインタビュー記事を読んだのだ。端的に言って、メチャクチャ面白かった。いろんなことを考えさせられたのだ。その発想は、リチャード・ドーキンスの利己的な遺伝子に触れたときと同じくらいのインパクトがあるんじゃないかと思う。

基本的に、動物は利己的である。自分が生存するため、種の保存のため、もっと言ってしまえば遺伝子情報を残すための行動をする。というのが、利己的な遺伝子で読み取ったことだ。人間の遺伝子は、遺伝子情報を継続させるために、遺伝子の器であるヒトという生物をコントロールする。そのために必要になる行動は多岐にわたるのだが、それが他者を攻撃することであったり他者に利益を与えることであったり、と表面上は相反することがある。表層に現れる行動は利他的であっても、その本質は遺伝子情報を伝達して残すことである。というのが、リチャード・ドーキンスの提案で、ミームという概念が登場した。

とまぁ、ぼくなりの浅い知識で読み取った情報だ。

これに、福岡伸一氏は全面肯定しかねるという。なぜか。ガラパゴス諸島の動物たちが、外来生物に対して優しいからだ。今まで外敵がいなかったから平和ボケしているのではないか。そう考えるのは、我々が外敵の排除を当たり前とする社会に生きているからだ。自ら、または自らの仲間に害をなすものを排除する。害をなすものがいるからだ。もし、危害を加える存在がまったくなかったら、どのような社会が当たり前になるのだろうか。そういうことをガラパゴス諸島の動物社会に投影してみることも出来そうだ。

なるほど、そういえば思い至ることがひとつある。日本の歴史を学ぶと、帰化人や渡来人という言葉に出会うことがある。有名なところでは、奈良から平安時代にかけて登場する秦氏がいる。秋月氏もそうだ。もともと、大和の外側からやってきた人だ。いわゆる外国人。なのだけれど、倭人として一緒に生活するのなら、仲良く一緒にやろうよってことで合流していく。うまく利用するというのじゃなくて、ようこそ我がチームへだ。チームに合流するメンバーに対して、攻撃性を示さず親和する。

浅学で申し訳ないのだけれど、古代ローマの多民族性とは性格が異なるように見えるのだ。お互いに利用しあう関係と、同族として融合する関係。社員として契約する関係と、家族になる関係の違いのようにも思える。かなりステレオタイプだな。なんとなくそう感じてしまっているのだが、実際のところはどうなのだろう。

まぁ、ここではステレオタイプな思い込みを仮定として話を進めてしまおう。どうせメタファーだ。

家族的な融和が行われるのは、なぜだろう。福島氏は生命の本質的な性質だと見ているようだ。これまた、提唱されていることをちゃんと理解しないままに進める。生命の本質であるとしたら、それはとても嬉しいし夢がある。エントロピーの増大に対して、人類は無意識にカウンターの力学を働かせる存在になりうるから。崩壊方向に対して真逆のベクトル。

これには、発動条件があるのだろうか。

人間社会の全てが融和の方向で進んで来たわけじゃない。むしろ、人類が文明を発達させてきた歴史の大半は利己的で破壊的だ。他者を討ち滅ぼすことで、もしくは飲み込むことで自らを保持してきた。いわゆる勝者の歴史なのだ。利己的、利他的のいずれにしてもそれぞれに発動条件があるのではないだろうか。

ここに、思想や哲学を差し挟むことはしない。論理的かつ倫理的に考えれば、自ずと融和を目指すようになるはずだ。というのは、人類がそれを考える能力を手にしたからである。ガラパゴス諸島の動物たちは、そのような思考プロセスを介在させること無く融和的な行動を示しているのだ。だとしたら、生物にとって本質的に備わっている行動原理がそこにはある。種の保存と合致しないなにかがある。

此処から先を考えるのは、とても骨が折れる。考察を続けるなら続けても良いけれど、一度、暫くの間はこの思考を保留しようかな。バックグラウンド再生だ。

今の時点で、気になっているのはやはり食だ。古くから「衣食足りて礼節を知る」と言われている。まさにその通りで、必要十分に豊かであることは他者への貢献への第一歩となる。古代以来日本周辺は人類にとって楽園のような環境だったと言われている。一方で緯度の高い地域ではあまり食料を確保することが出来ず、度々南下したのだ。食を十分に確保することは、人類にとって重要な条件だったのかもしれない。

今日も読んでくれてありがとうございます。ずいぶんとややこしい話を書いてしまったなあ。相変わらず、自分の中でもまとまっていないんだけどね。歴史や食文化を理解する上で、地球の動物の行動を見ていくと、また解像度が上がるかもしれない。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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