今日のエッセイ-たろう

「どうせ実現しないでしょ」というビジョン。 2022年9月11日

未来を考える時には、いくつかの通り道がある。今出来ることを積み上げるスタイル。それから、やるべきことを目指すスタイル。あとは、とにかく理想の姿を妄想するスタイル。

どれでも良いのだと思うんだけど、今できることを積み上げて構想するスタイルが多いのかなあ。いや、統計とか知らないんだけど。そもそも、このパターン分けだって適当だし。

ビジョナリー・カンパニーっていうのは、理想形に近づけようとすることが多いのかな。ほら、大企業でも中小企業でもビジョンを掲げているところがあるよね。でね。よくよく見ていくと、時々ムチャクチャに見えることを掲げている企業を見つけるんだ。「夢見すぎでしょ!」とか「どうせ実現しない」とか「キレイゴト」とか、そんな風に言われがち。

もうね。ほとんど妄想みたいな場合だってあるんだよ。

どうせ実現しないって、それはそうなんだけどさ。それはそれでも良いと思うんだよね。妄想したビジョンに向かって進む。これ自体が大切なんだと思うのよ。周囲の人に対しても、自分自身に対しても「とにかくこの方向に向かうんだ!」っていう意思表明。「最終到達点はここだぞ」という理想。

もちろん、最終到達点を目指して突き進むということは大前提なんだけど。たまに、言っていることとやっていることがチグハグなケースもあるから。もう、見た目だけってやつね。そういうのは論外。進む方向が可視化されるって良いことじゃん。

以前、どこかで書いたことがあったかな。いま、掛川市の条例に「緑茶で乾杯条例」っていうのがあるんだ。通称だけど。で、これを提言したのがぼく。別に乾杯じゃなくても、良いんだけど。

緑茶の生産量が日本でもトップクラスであることは間違いない。産地賞で日本一になっている。つまり、生産者としてはトップランナーなんだ。

こういう地域は、消費者もトップランナーであることが多い。平たく言うとたくさん消費するし、品質にもうるさい。フランス人がワインにうるさいのと同じだことだね。でね。ぼくは、商品価値とかブランド力っていうのは、生産者だけじゃ成立しないと思っているのよ。どちらかというと、消費者が作り出すものだと思っている。

だから、消費者である掛川市民が、色んなところで、いろんなシチュエーションでお茶を消費している姿が可視化されることがプロモーションとして良いと思ったんだ。

居酒屋でもレストランでも料亭でも良い。お店に入ったら、すべての席の飲み物が緑色ばっかりだったらビックリするじゃん。居酒屋なんか、大抵ビールとかハイボールとか、そういうのが目につくでしょう。だけど、この街では緑がほとんど。

そんな景色が日常になったら、それは日本で唯一の特異点になるんだ。

これを市や商工会議所や観光協会や飲食店の仲間に伝えて回ったのが、5年前かな。その時に作ったのが、ショートショート。短い小説みたいなやつね。ホントはイラストか漫画が良かったんだけど、あいにく当時はそういったことが出来る友人が周りに居なかったしね。ぼくにそんなスキルはない。

幸いなことに、そこそこ文章は書ける。だから、なるべく情景描写と消費者の心情を描くように注意して小説風の文章にしたんだ。

当然だけど、「そんな世界はまだない。」

条例成立させるのに、2年。そこからちょっとずつ、コツコツと話を進めて、協力してくれる飲食店が20店舗くらいになってきた。って感じ。あんまり言いたくないけど、途中飲食店は営業できなかったしね。新型コロナウイルスの影響は無視できない。

それでも、一緒に活動してきている仲間は同じ風景を妄想している。脳内のイメージはちょっとずつ違うだろうけど、だいたい同じ風景。で、これからもコツコツと進んでいくことが出来る。

そういうための「妄想」って、やっぱり大切だと思うんだよね。

今日も読んでくれてありがとうございます。大言壮語でも良いじゃん。誰かが言い出さなくちゃね。100年続く大企業を作るとか、日本を洗濯するとか、戦争をなくすとか、宇宙に人類が住むとか、ワクワクするんだよね。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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