今日のエッセイ-たろう

なにかを変えるなら、まず「やめる」から始めるのはどうだろうか。 2023年11月24日

食を通して歴史を見る。これをしばらく続けているわけだけれど、そしてまだまだ続けていくのだけれど、今の時点でちょっと気がついたことが有る。まぁ、気になるという程度のことだけどね。

惰性でやっていることをやめる。これだ。

どの時代の何を見ても、社会善というか、社会や暮らしを良くしたいという欲求がある。そうした思いを持って行動する人が現れて何かが変わっていく。本人が強く思っていることも有るし、誰かの思いを汲み取って行動することもある。数年レベルでは変わったことに気が付かないかもしれないが、数十年経ってから振り返ってみると大きく変化している。それが、現代から歴史を俯瞰してみると見えてくるということだ。

社会変革では、新しいことを始めるというのと、今までやってきたことをやめるという2つのアプローチが見られる。どちらもそれなりにコストがかかることなのだけれど、即効性が有るのは後者なんじゃないかと思うのだ。

悪いことをしているというわけじゃないだろうけれど、社会に貢献していないなと感じること。かつては良かったけれど、今の価値観で見ると再考したほうが良さそうなこと。というのは、身の回りの現象を観察するだけでも、いくつか見つかるだろう。

例えば、未成熟の魚をたくさん取っていて、それがために成魚の漁獲が振るわない。結果として単価は伸び悩むし、年々漁獲高が下がっていき、ついには漁場が機能しなくなってしまう。シンプルに漁獲制限を設ければ良いと思うのだ。

こんな事を言うと、何もわかっていないと叱られるだろう。漁師さんたちの生活をどうするんだとか、他の原因をどうするんだとか。それはその通り。だからこそ、全体を把握して漁業に関わっていない人も含めた社会全体で「やめる」という挑戦をしなくちゃいけない。

山林を切り開いてまちを作る。人口が増加している時代ならばそれが必要だったのだけれど、現象することが明白な時代に必要なことなのか。という話を耳にすることがある。一方で、空き家が増えていて、放置されたり、相続によって住んでいないのに管理コストだけがかかったり、といった課題もよく聞く。平地に余白があるのならば、わざわざ山を切り崩す必要は内容に思えるのだが、どんな力学が働いているのだろう。住宅販売に関わるある先輩は、「そういう仕事」をしているからだと言われた。やめれば生活が出来ないと。

やめる。というのは、今までの生活を「変える」ということに直結する。だから、金銭的なコストもかかるけれど、それ以外の負荷が高いのだろう。やめればいいのに、やめられない。どこかに、ブロックしてしまうポイントがあるはずだ。と、想定してそこにアプローチをする。惰性でやってきていることを、一度立ち止まって見直すというのはそういうことだろう。

恒常性バイアス、というのか。ぼくらは、どうも変化することを面倒だと感じる。何処かの偉人が言っていたけれど、成熟とは変化することらしいから、変化をしなくちゃいけない。最も変化するのは、新しいことを始めることよりも、今までのことをやめること。ぼくらが、新番組を始めたり、新商品を作ったりするよりも、料理屋をやめるとか、会席料理をやめるとか言ったほうが変化が大きいような気がするのだ。

今日も読んでくれてありがとうございます。よそ者若者バカモノっていうのは、わりとこういうことに敏感。惰性でやっていることを見て「それってホントに必要ですか」って言っちゃう人。その声が出た瞬間が、実はものすごいチャンスなんだろうな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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