今日のエッセイ-たろう

なにやっている人ですか? 2024年6月18日

いろいろやっているから、自己紹介のときに困る。個別具体に説明すれば長くなってしまうし、かといって一言でまとめようとすると、うまく出来ない。先日友人から聞いた話。ざっくりとまとめると経営者なんだろうけれど、よくわかる。流動性があって雑多な業務の一つ一つに向きある。みたいなところがあるからね。

ぼく自身も、「なにやっている人ですか?」と問われると、戸惑うことがある。一応料理人だし、一応経営者だし、一応ポッドキャスターだし。わざわざ「一応」とつけて、ぼやかしているあたり、自分でも不思議な挙動をしていると思う。

人って、いろんな側面があるのが普通。履歴書を書くときに、一貫性があるほうが良しとされる風潮はいつからあるのだろう。あっちへフラフラ、こっちへフラフラなんてことはよくあるじゃない。歴史的にも、医師であり思想家であり歴史家であり発明家である、なんて人も結構いる。歴史に名を残すような人だから、それだけマルチな才能を発揮できたとも言えるだろうけれど、そういう生き方が普通だという社会があったと考えられる。

社会の階層によって、そのマルチ具合は様々だったかもしれない。古い時代は、知識階層は、ある程度豊かな階層でなければ得られなかった。農奴とよばれて土地と職業に縛られていた人達もいたが、一方で織物屋でありながら顕微鏡を開発するような人も登場している。雑な知識で判断してしまうのは早計だとは思うけれど、よほどの制約がかからない限り、マルチな考え方をしていてマルチな才能を発揮するのが一般的なのではないかと思う。

例えば、まちづくりの会議だったら、ぼくはまちづくりに詳しい料理人になる。マーケティングに理解があって、彼らの言語がわかる料理人になる。日本料理の料理人が集まれば、料理や業界に詳しい営業マンになる。様々なスタイルの料理人が集まっていれば、ぼくは会席料理の人にもなる。

状況に応じて「◯◯ではない者」としての振る舞いをする。自然とそうなっている。だから、その集団でしか顔を合わせない人にとっては、ぼくはそういう人。立場が変わると、それに合わせた発言をすることになるんだけど、別の集団で同じ人に会ったときに、この前と言っていることが違うと言われてしまうこともある。ひとつの思想から生まれた発言が、立場を変えて伝えようとするとき、矛盾があるように見えるということなんだろうか。それとも、ただただぼくがブレているだけなんだろうか。

もし前者だとしたら、時々聞く「◯◯という人はブレている」「コロコロ変わる」という批判は、表面的ということになるのだろうか。少なくとも本人にとってはブレていないのかもしれない。たまたま今の社会では受け入れられにくいのか、それとも人間ってそういうものなのか。よくわからん。

ともあれ、日常レベルではいろんな顔を持つのがぼくらだ。職場でも「幼児のパパ」の顔では困っちゃうだろうし、家庭で仕事人のままだったら家族も息が詰まる。分人と言うらしいのだけれど、マルチとか分人という表現そのものが現代社会がそうではないことの現れだろうな。それが当たり前だったら、言葉が必要ないかもしれない。

レッテルを貼ると、イメージがそれに固着してしまう。ということもあるのだけれど、でもやっぱり自己紹介のときには便利なんだよね。聞いたらパッと理解できるとか、イメージが湧く。思い出してもらえて、仕事につながるなんてこともある。全部を表現しようとしないのが良いのかな。

今日も読んでいただきありがとうございます。自己紹介の肩書ってこまっちゃうよね。という話だったのだけど、自分が何者かって話になってしまった。そんなの答えが出るわけ無いよね。答えなんて出ない。というのが、案外答えだったりして。

タグ

考察 (300) 思考 (226) 食文化 (222) 学び (169) 歴史 (123) コミュニケーション (120) 教養 (105) 豊かさ (97) たべものRadio (53) 食事 (39) 観光 (30) 料理 (24) 経済 (24) フードテック (20) 人にとって必要なもの (17) 経営 (17) 社会 (17) 文化 (16) 環境 (16) 遊び (15) 伝統 (15) 食産業 (13) まちづくり (13) 思想 (12) 日本文化 (12) コミュニティ (11) 美意識 (10) デザイン (10) ビジネス (10) たべものラジオ (10) エコシステム (9) 言葉 (9) 循環 (8) 価値観 (8) 仕組み (8) ガストロノミー (8) 視点 (8) マーケティング (8) 日本料理 (8) 組織 (8) 日本らしさ (7) 飲食店 (7) 仕事 (7) 妄想 (7) 構造 (7) 社会課題 (7) 社会構造 (7) 営業 (7) 教育 (6) 観察 (6) 持続可能性 (6) 認識 (6) 組織論 (6) 食の未来 (6) イベント (6) 体験 (5) 食料問題 (5) 落語 (5) 伝える (5) 挑戦 (5) 未来 (5) イメージ (5) レシピ (5) スピーチ (5) 働き方 (5) 成長 (5) 多様性 (5) 構造理解 (5) 解釈 (5) 掛川 (5) エンターテイメント (4) 自由 (4) 味覚 (4) 言語 (4) 盛り付け (4) ポッドキャスト (4) 食のパーソナライゼーション (4) 食糧問題 (4) 文化財 (4) 学習 (4) バランス (4) サービス (4) 食料 (4) 土壌 (4) 語り部 (4) 食品産業 (4) 誤読 (4) 世界観 (4) 変化 (4) 技術 (4) イノベーション (4) 伝承と変遷 (4) 食の価値 (4) 表現 (4) フードビジネス (4) 情緒 (4) チームワーク (3) 感情 (3) 作法 (3) おいしさ (3) 研究 (3) 行政 (3) 話し方 (3) 情報 (3) 温暖化 (3) セールス (3) マナー (3) 効率化 (3) トーク (3) (3) 民主化 (3) 会話 (3) 産業革命 (3) 魔改造 (3) 自然 (3) チーム (3) 修行 (3) メディア (3) 民俗学 (3) AI (3) 感覚 (3) 変遷 (3) 慣習 (3) エンタメ (3) ごみ問題 (3) 食品衛生 (3) 変化の時代 (3) 和食 (3) 栄養 (3) 認知 (3) 人文知 (3) プレゼンテーション (3) アート (3) 味噌汁 (3) ルール (3) 代替肉 (3) パーソナライゼーション (3) (3) ハレとケ (3) 健康 (3) テクノロジー (3) 身体性 (3) 外食産業 (3) ビジネスモデル (2) メタ認知 (2) 料亭 (2) 工夫 (2) (2) フレームワーク (2) 婚礼 (2) 誕生前夜 (2) 俯瞰 (2) 夏休み (2) 水資源 (2) 明治維新 (2) (2) 山林 (2) 料理本 (2) 笑い (2) 腸内細菌 (2) 映える (2) 科学 (2) 読書 (2) 共感 (2) 外食 (2) キュレーション (2) 人類学 (2) SKS (2) 創造性 (2) 料理人 (2) 飲食業界 (2) 思い出 (2) 接待 (2) AI (2) 芸術 (2) 茶の湯 (2) 伝え方 (2) 旅行 (2) 道具 (2) 生活 (2) 生活文化 (2) (2) 家庭料理 (2) 衣食住 (2) 生物 (2) 心理 (2) 才能 (2) 農業 (2) 身体知 (2) 伝承 (2) 言語化 (2) 合意形成 (2) 儀礼 (2) (2) ビジネススキル (2) ロングテールニーズ (2) 気候 (2) ガストロノミーツーリズム (2) 地域経済 (2) 食料流通 (2) 食材 (2) 流通 (2) 食品ロス (2) フードロス (2) 事業 (2) 習慣化 (2) 産業構造 (2) アイデンティティ (2) 文化伝承 (2) サスティナブル (2) 食料保存 (2) 社会変化 (2) 思考実験 (2) 五感 (2) SF (2) 報徳 (2) 地域 (2) ガラパゴス化 (2) 郷土 (2) 発想 (2) ビジョン (2) オフ会 (2) 産業 (2) 物価 (2) 常識 (2) 行動 (2) 電気 (2) 日本酒 (1) 補助金 (1) 食のタブー (1) 幸福感 (1) 江戸 (1) 哲学 (1) SDG's (1) SDGs (1) 弁当 (1) パラダイムシフト (1) 季節感 (1) 行事食 (1)
  • この記事を書いた人
  • 最新記事

武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

-今日のエッセイ-たろう
-