今日のエッセイ-たろう

今年の抱負 2023年1月1日

明けましておめでとうございます。たべものラジオを配信し始めてから2度めの正月を迎えました。昨年は食べ物ラジオを通して様々な出会いがあったし、活動も少しばかり広がった。話が面白いわけでもないし、ぼくの勝手な自由研究を話しているだけの番組に共感してくださっている方々には、少々の驚きとともに感謝しか無い。これからもよろしくお願いします。

番組を始めた頃に想定していた事態ではないことになっている。番組で取り扱うシリーズはもう少し多いはずだった。だいたい、1シリーズ5話くらいを目安にしていたのだ。まだ取り上げていない話も多くて、基本調味料である「さしすせそ」は、ひとつもやっていない。いつになったら、たべものラジオは完結するのだろうか。いずれは取り扱うネタが無くなって、番組を終了する日がやってくるはずなのだ。けれども、今のところは、終わりなき旅のように見えている。

新年らしく、今年の目標を考えてみることにようか。とは思ったのだけれど、あまり具体的な目標も思いつかない。番組は今まで通り続けること。とにかく継続させることが大切だし、案外難しいのかもしれない。同時期に始まった番組のうち、いくつかは更新されなくなってしまった。終了宣言することもなく、たち消えてしまった。そう考えると、継続することそのものに意味があるのかもしれない。

意味といえば、たべものラジオの存在する意味はなんだろうか。こればかりはいつも考えている。ひとつには、食のルーツを辿る物語そのものが面白いということだ。特に使用目的など無くて良い。シンプルに「知って面白い」という知的好奇心を満たすだけのものであれば良いと思う。そもそも、教養というものはビジネスみたいなものに役立てようとして手に入れるものではないのだ。というのがぼくの持論。興味の赴くままに学んでしまうもの。そういうのが蓄積されていって、遊びの解像度が上がる。遊びがもっと楽しくなるというような類のものだろうと思うのだ。例えば、旅行に行くとして、その土地の歴史や物語や背景を知っていると、もっと楽しめるというようなものだ。映画を見るとしても、出演する俳優の苦労や工夫、物語の創作秘話みたいな舞台裏を知っていると、見方が変わって面白さが増す。といったようなものだろう。

食の来歴を知っていると、日常生活がすこしばかり面白くなるだろう。というのは、旅行や映画に比べて、食のほうが接する頻度が高いからだ。一日に三回の食事があるとして、目にする食材や料理は何種類になるだろうか。毎回ではなくても、ふとした時に気がつくくらいでいい。いま、箸でつまみ上げて口に入れられたジャガイモのことをしみじみと思う。そんなことが、たまにはあるかもしれない。お呼ばれしたときに、外食したときに、自炊したときに、少しだけ食の背景を妄想しながら食べる。それだけで、食事はただの栄養摂取ではなくなり、遊びの要素を多分に持ち始める。

たぶん。心の豊かさっていうのは、遊びから紡ぎ出されるしらべなのじゃないだろうか。受け手の教養があるからこそ、なんでも無いようなことを遊びだと感じることが出来る。そんなことがあるのかもしれないと思うのだ。

今年は、もう少し興味の範囲を広げてみようと思う。今までのたべものラジオは、「今、目の前にあるものが何者なのか」を掘り下げていくことをコンセプトにしている。だから、過去から現代につながる物語を紐解いていくことになるのだ。それもあって、各シリーズの最終話では「ここから先の出来事は、現在なので皆さんの目で見てください」と伝えていることが多い。たべものラジオをきっかけに食について興味を持って世の中を見てもらえれば嬉しい。

この時間軸をもう少し拡大したい。現代と未来の話だ。過去の文脈ではなく、現在行われていることにフォーカスする視点を取り入れようと思う。既に述べたように、「この先はご自身の目で」という気持ちはあるのだが、それだけではなかなかたどり着けない情報もある。それを実感をもって知ったのが、昨年のSKSジャパンである。現在進行系で取り組んでいる食に関する事業は数多くある。あるけれど、それはなかなか一般に知られていないのだ。そもそも発信されている情報には限界があるし、歴史のように体系的にまとめられているわけではない。

過去から紡ぎ出された現在がそうであるように、現在進行形のモノや変化には人の思いや物語があるはずだ。人が作り出したものには、必ず思いと物語がある。といのが持論である。そこにフォーカスして、同じ時代に生きる人達の物語を発信したいと思っている。

食という大きな物語があるとして。たべものラジオは、過去のエピソードの集約だ。物語の最新話は、いま作り出されていて、あまり語られていない。ごく一部のメディアで取り上げられていたり、事業主が発信していたりといったのものだ。今後は、この最新の物語を取り上げる番組を立ち上げるのが当面の目標である。

今日も読んでくれてありがとうございます。いったい、ぼくらはどこに向かっているのだろう。もはや料理人という枠をとっくにはみ出してしまっている。メディアになりたいと思ったことはないし、目立ちたいと思ったこともない。ただ、「知れば見えること」があるのに、知られていないことでこぼれ落ちてしまうような物事をなんとかしたいと思うんだ。そのために出来ることを考える人でありたい。なにか、良い肩書があると良いよなあ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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