今日のエッセイ-たろう

伝わらない情報発信をアップデートしたい行政。 2025年5月27日

なぜか市役所のホームページはやたらとPDFが多い。掛川市だけかと思ったら、他でも同じ現象が起きているらしい。なんだろうな。正直言って、見づらいし面倒だし、ダウンロードしたファイルがスマホに溜まっていくのも鬱陶しい。さらに謎なのは、リンク先の情報へ飛ばすのに、PDFのなかにQRコードが書き込まれていること。スマホで見ているのに、どうやって読み込めというのだ。PCで表示していたとしても、わざわざカメラでQRコードを読まなくちゃいけない。素直に、リンクを置いてくれたら良いのに。

なぜこんな状況になっているのか。それはとても簡単な理由で、ホームページの改修をするのが手間だから。庁内で使うためにパワポで作った資料をPDFに変換して格納するだけ。そうすれば、職員の手間が少ないというわけだ。仮に、ブログのように簡易にアップできるフォーマットを用意したところで、文字起こししたり画像や図表を埋め込んだりするのは手間だと考える。

上からの指示で、市民に対して情報を開示しなくちゃいけないことになっている。だから、ちゃんと開示しているから良いよね。完璧。と、ホンキで思っている人たちがいる。というのは、実際に直接会って話しているときに聞いたのだ。解釈は人それぞれだけれど、ぼくはナンセンスだと思っている。

伝えたかどうかよりも、伝わったかどうかのほうが大事だと思っているから。

酒の席だったけど、ある職員と上記のような会話をしたことがある。言い分としては、時間が足りないのだそうだ。一人あたりの職員の稼働時間と業務量を考えると、少しでも時間的コストを減らしたい。という。確かに、ぼくの知る限りでもアクティブになっている事業数に対して職員の数は足りない気がする。数年前に見た資料にはなるが、現在進行系で年度末には実績報告書が必要な案件が2000ほど記されていた。その時点の正職員数は700ちょっと。だから、アクティブにはなっているけれど事実上休止している事業が半数を超えているという話だった。やめるっていうのが苦手なんだ、きっと。やめるって宣言すると、あちこちから叱られるなんてこともあるだろうしね。

情報発信の方法をアップデートするのに、職員一人当たり30分を要したとする。アップデートすることで、市民が必要な情報にたどり着ける確率はどの程度向上するのだろう。というか、現時点で「知らなかった」という市民がどの程度いるのだろう。営業の仕事をしているときは「情報は自分から取りに行くものだ」と習ったけれど、市民が行政のホームページを日常的に見ることがあるだろうか。面白くもないうえに、見づらく、庁内の資料の転用だから専門用語だらけでわかりにくい。結果として、わからないから電話で問い合わせたり窓口に出向くなんてことになってやしないだろうか。

批判的な姿勢で見ようといているから、あえてマイナス面をピックアップしているわけだけど。こういうのって、結構多くてさ。ライングループを導入したのは良いけれど一回一回が超長文だとか、申し込みはFAXか郵送だとか、詳しくは回覧板をお読みくださいだとか。ホントにちょっとしたことなんだけど、実は大切なことがちょっとしたことで伝わらないということはよくあると思うんだ。

ぼくなんかは、ポッドキャストをやっているわけだけど。「あの〜」「えーっと」とかのフィラーが多いと聞きづらいし、発声が悪くてモゴモゴしているとやっぱり聞きづらい。聞きづらいと、それだけで情報が頭に入ってこない。情報が伝わらないのなら、伝えたことにならない。完璧には出来ないけれど、出来る範囲でいいから工夫はしたほうが良いよね。

台拭きで汚れを拭いたのか、拭いてキレイになったのか。行為を見るのか結果を見るのかっていうこと。

掛川市は、ちょうど今少しづつだけど変わり始めている。まだ一部だけど、どうにかして手間と時間をかけずに伝わる情報について模索をし始めている。今までは始めてすらいなかったのだから、とても大きな進歩だよね。そのために、いま生成AIの使い方をみんなで学び始めたってさ。良いじゃん。使えるツールは使わないと。先日のエッセイ(5月8日「言葉はファジーじゃないとコミュニケーションツールにならない」)でも書いたけど、AIを使ってシチュエーションや関係性を汲み取った表現ができるようになるかもしれないし、関係性の構築にも役立つかもしれない。すべてを生成AIに期待するのもどうかとは思うけど、良いと思うんだ。

他にもやり方ってあるのかな。例えばPDFのままでも良いケースとか、そもそも文字情報じゃない情報発信とか。読むのが得意な人もいるけれど、その逆だっているでしょう。読むのが苦手な人って、割と自覚ないらしいけど、音で聞いたらわかることもあるんだよね。動画のほうがいい人もいるか。箇条書きがわかりやすいという人もいれば、ストーリーテリングがわかりやすいという人もいる。こういうのって、学力がどうこうって話じゃなくて、走るのが苦手とか絵を書くのが苦手とか、そういうのと同じような感覚で個人の特性じゃないかと思うんだ。だから、他の情報伝達方法を模索するのもいいかもしれない。

今日も読んでいただきありがとうございます。最近知ったことなんだけど、庁内の情報共有ってめちゃくちゃ硬いらしいのね。◯◯のアイデア募集!みたいな内容の掲示板なのに、提案募集期日厳守!みたいな書きっぷりになっちゃうんだと。もっともっともーっとポップにやればいいのにね。たぶん、そのほうが楽しいと思うんだ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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