今日のエッセイ-たろう

偏食について思うところ。2022年9月21日

子供の偏食についてどう思いますか。という質問を頂いたので回答してみようかな。どう思いますかって、いう質問にそのまま答えると、摂取する食料は多様性があったほうが良いと思うよって感じかな。

偏食っていうのは、食べるものが偏っているということでしょう?栄養が偏りやすいっていうのが一番の理由。偏食の対象が「完全栄養食」だとしても、やっぱり選択肢は多いほうが良いと思うんだ。

生きている間に、完全栄養食以外のものを食べる機会はたくさんあるよね。お付き合いもあるだろうし、パートナーと一緒に暮らしたら変わることもあるだろうし。そもそも、一生を通じて完全栄養食のバランスが一定だと考えることのほうが危うい。5歳のときと10歳のときと、20歳、40歳のときと比べてみて、理想の栄養バランスが常に一定であるかというと、そんなことないと思うんだ。ちゃんとエビデンスにあたったわけじゃないけれど、今までに勉強した内容を鑑みるとそういうコトが言えると思うんだよね。

その時々に合わせて、完璧な栄養バランスを提要してくれる食べ物が、その人にとっての「偏食になるほど好きなもの」なら良いんだけどさ。そんなことは、無いよね。本来、僕らの体は、体が健康を保つために必要な栄養素を、自動的に美味しいと感じるように出来ているはず。完全栄養食が手に入らなくても、ちゃんとバランスを取ることが出来るはずなんだ。そのセンサーの役割を担っているのが、食欲と味覚ね。これは、本編でも話したか。

でね。ここからは推論なのだけど。センサーはそんなに精度が高くないと思うんだ。苦味とか酸味が苦手な人は多いよね。甘味とか塩味に比べてずっと多い。なのだけれど、これらも重要な栄養素と結びついているはずなんだよ。じゃなければ、これほど長い歴史の中で苦味や酸味が「美味しい」と感じるようにはならないだろうから。

苦味なんかは、もしかしたら動物として本質的にもっているセンサーではないかもしれない。どちらかというと、経験かもしれない。個人の経験ではなくてね。苦いもの、特に葉っぱかな。そういうものには、ビタミンとかミネラルとかが豊富で、生態維持に役に立つということを経験的に知ったのだろう。だから、このタイプの苦味は毒ではなくて有用なものを表していると学んだ。この経験が継承されていった結果、苦味も美味しさの要素に加えられるようになった。そんな風に考えている。

この仮説が正しいとすると、経験は継承されなくてはならない。継承されるためには、子どもたちも経験によって学ぶしか無いのだ。だから、子供が嫌がっても食べさせるのが良いのだと思うんだよね。はじめはお茶くらいの優しい味からはじめていけば良いのじゃないかな。そのうちに慣れるから。

ここで、味覚の多様性を獲得しておかないと、将来においてセンサーの精度を上げるのはタイヘンだと思うのよ。誰かが指導するかっていうと、あんまりやってくれないでしょう。親くらいのものなんだよね。こんな面倒なことをしてくれるのは。それに、経験の継承って時間がかかるんだ。だから、一緒に生活して一緒にご飯を食べて、密着した関係が最も適しているように感じる。そういう意味で、一緒にいられるうちに継承した方がいい。

もし、親が偏食だと、それも継承されちゃうところがややこしいんだけどさ。ちなみに、我が家には鉄則がある。子供の前で、偏食を見せない。どんなモノでも美味しそうに食べる。それがたとえ演技でも、だ。これだけは譲らない。意外と有効なんだよね。やってみるといいよ。娘も、ぼく自信も、この環境で育ったんだ。子供の頃、ぼくだって苦い野菜はちょっと苦手だった。なんだけど、すぐとなりで両親や祖父母がメチャクチャ美味しそうにそれを食べるんだよね。こんな美味しいものの味がわからないなんて可愛そうという勢いだ。周りが全員そんなだから、苦手な方が変なのかもって子供ながらに思っちゃうんだよね。そのうちに、ほのかな苦味がおいしく感じられるようになっていて、気がついたら美味しいって思うようになっちゃったよね。

栄養面以外にももちろん理由を語ることは出来るけれど、やっぱり栄養面が一番かな。この先の生存環境がどんなことになるかはわからない。コンピューターに頼らなくても、自分自身の体に必要な栄養素を適切に判断できる能力を手に入れておくこと。これが、どんな環境下でもバランスをとることが出来るってことだと思うんだ。この能力のおかげなのか、アメリカに住んでいても一向に太る気配もなく、ちゃんと栄養バランスを取っていたよね。料理なんか殆どできなくても、ね。

今日も読んでくれてありがとうございます。ホモ・サピエンスの心理として、共食文化が仲間意識を醸成するということがわかっている。時代や地域を問わず見られる現象だ。そういう側面から見ても、偏食であるということは、面倒だなと思うよ。なんでもおいしく食べられるって偏食に比べたら便利だって感覚かな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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