地名が料理や食材の名前になって、みんなが「わかる」ってスゴくないですか? 2024年6月23日

なんだってビールとソーセージってこんなに相性がいいんだろう。と、まぁ酒好きの独り言だ。酒好きじゃなくても、ソーセージは広く愛されていて、子どもたちも魚肉ソーセージやらタコさんウインナーが大好きだ。

魚肉ソーセージはソーセージで、タコさんウインナーはウインナー。面白い。ぼくは、ソーセージと呼ぶことが多いけれど、一般的にはどちらで呼ぶことが多いのだろう。定義を考えれば、それぞれレイヤーが違うということになるのだけれど、日本では概ね同じものを指していることが多そうだ。

ソーセージは、ひき肉に味付けをして腸などに詰めたもの。で、ウインナーソーセージは、ウイーン風のソーセージ。フランクフルトソーセージはフランクフルトで作られていたソーセージで、正しくはフランクフルター。

たぶん、長い名称を省略するときに冒頭部分だけを使うようになったのだろう。テレビはテレ・ビジョンでテレビだし。日本語以外でも、似たようなことはあるときく。

料理名で、◯◯風という言葉が冒頭に使われることはよくある。ジャーマンポテトとかナポリタンスパゲティ、讃岐うどんや江戸前寿司などなど。山椒を使った料理は、産地として有名な有馬が使われるし、牛乳を使えば嶺岡、さつまいもなんて野菜の名前が地名と連なっている。地名が料理や食材そのものと紐づくというのは、産地冥利に尽きるのかもしれない。

有馬煮という言葉を聞いたことがある人はどのくらいいるだろう。紹介した通り山椒で風味づけした煮物のことで、ジャコの有馬などで聞いたことがあるかもしれない。吉野はどうだろう。葛粉の産地だから、吉野と言われるのだけれど、あまり一般知名度はないように思う。いずれにしても、地名と料理や食材が紐づけられているのだが、そもそもその地名が名産地であって、それが広く知られていることが前提。これはなかなかにハイコンテクストだ。

本来、知らなければなんのことを言っているのかわからないのが、ハイコンテクストな名称。まぁ、周りの多くの人が使っていれば、文脈なんて知らなくても固有名詞と解釈することはできるのだが。こんなハイコンテクストな名称が一般化している事自体がスゴイことだ。

例えば、学校の仲良しグループの間だけで通じる言葉っていうのが作られる。過去の会話の中で自然発生した言葉が、くり返し使われるのだ。経緯を知らなくてもなんとなく会話の筋は読めるのだけれど、何が面白いのかさっぱりわからない。会社の中でだけ使われている専門用語、業界内だけで通用する言葉、特定のコミュニティだけで通用する概念。ハイコンテクストな名称は、比較的閉じられた環境で生きているような気がする。

ウインナーとかフランクフルトは、日本では固有名詞になっている。だから、必ずしもハイコンテクストとは言えないけど、学校や業界などと比べれば、かなり開かれたコミュニティで通用する名称になっている。日本という閉じられた環境ではあるけれど、規模は大きい。

文脈を無視した定義がされているケースがあるのも興味深い。詳しくないのだけれど、ウインナーとフランクフルトはサイズで呼称が定義されるらしい。冷や麦とそうめんの違いも太さってことになっている。冷やして食べる切麦、つまりうどんの仲間が冷や麦。そうめんは、油を使って麦粉を引き伸ばしたもの。というのが来歴からわかる違いなんだけど、わかりやすくするために太さで定義することにしちゃったのだろうか。

正しいかどうかを考えるのもいいけれど、こういう使われ方をしているという現象を眺めると面白いなと思っている。きっと長い歴史の中で名称が変わっていって、いつのまにか語源がなんだかわからなくなってしまう。諸説ありっていうのは、そういうことなのだろう。

今日も読んでいただきありがとうございます。静岡県には米久っていうソーセージを作る会社があるんだ。でね。テレビのゴールデンタイムで米久提供の天気予報が放送されていたの。そこで起用されていたキャラクターが「ソーセージおじさん」。「ソーセージおじさーん!」「はーい、明日の天気予報だよ〜」ってね。だから、ぼくはソーセージって呼ぶようになったんだと思う。たぶん。

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