今日のエッセイ-たろう

影響を受けた「様々な国」は、時代によって全く違う文化を持つ国。 2024年9月29日

様々な国から様々な文化を取り入れている。といっても、日本に限った話ではなく、文化に限ったことでもない。平たく言えば、色んなところがそれぞれに影響を与え合っている、という話でしか無い。そんなことは当たり前のことである。

日本語で使われている文字は、漢字、カタカナ、ひらがなの3つだけれど、いずれも中国大陸から伝えられた漢字と、それを元に変形させた文字だ。漢字に注目すると、元々の読み方を参照した「音読み」と、元々日本で使われていた言葉を、意味を紐づけて漢字に当てはめた「訓読み」がある。

翌々考えてみると、とても面白いことをやっている。無理やり別の言語に置き換えてみると「Book」を「ほん」と読ませているのが訓読みっていうことになる。時々漫画などで、無理矢理な読み方をさせる表現があるけれど、訓読みというのはそれに近いかもしれない。

先日、9月9日の節句の話をしていて、漢字の読み方がよくわからないよねっていうことになった。9月9日は重陽の節句といって「ちょうよう」と読むのだけれど、知らないとうっかり「じゅうよう」と読んでしまう。貴重とか重複というのと同じで、重の読み方は「ちょう」となる。いつの間にか「じゅうふく」という誤読が根付いてしまって、辞書にも「じゅうふく(慣用)」と記載されているが、本来は「ちょう」。

「ちょう」とか「じゅう」とか、読み方が違うのはなぜかというと、主に日本に言葉が伝わった時代の違いだ。呉音とか漢音とか唐音と言って、それぞれに発音が違う。呉音は、魏呉蜀の呉という国の言葉が伝わったもので、日本の奈良時代くらい。漢音はもっと北の方の言葉で、平安時代くらい。唐音は宋音とも言われるけれど、鎌倉時代頃に伝わった読み方。

でね。そもそも伝来してきた地域も違えば、王朝も違う。だから、似て非なるものが伝わったというわけだ。それらが、一つの漢字のなかで同居しているのが日本の漢字の音読み。「行」は呉音で「ぎょう」、漢音で「こう」、唐音で「あん」とややこしいことになっている。

「漢字は中国から」だと思っているのだけれど、実は中国大陸にあったいくつもの王朝の文化を受け取ったのだ。冒頭で「様々な国」と表現したのは、時代と地域という2つの要素で考えていて、現在の中国が中国だからといって、同じ国から影響を受けたわけじゃないということである。

鉄砲が伝来した頃のポルトガル、長崎の出島にやってきたオランダ、日本近代化の参考となったドイツ。どれをとっても、現代の文化と同じではない。同様に、戦後の高度経済成長期に大きな影響を受けたアメリカも現代のアメリカではない。文化とは、その国の中で変化し続けると考えた方が良い。

ところが、文化を受け取った方は、そのまま変化せずに固定化する事が多い。日本に伝来したら日本風にカスタマイズはされるけれど、参照元に対するイメージは伝来時点のままとなることが多いようだ。日本とは縁の薄い国で、長らくちょんまげのイメージが残っていたのはそうした現象の一つとも言える。

現代においては、世界中の情報を瞬時に手に入れることができる。もちろん、インターネットの普及によるものだ。けれども、それは表面的なものでしかないかもしれない。例えば、オーストラリアがどれほど変容したのかはインターネットではなかなかわからない。それに、調べようと思わなければ勝手にやってくる情報でもないだろう。

自分のことを理解するためには、他者との比較が必要になる。私達にとって当たり前の生活は、世界の中でどれほど特別なものなのかは、世界と比較することが大切だ。どういう方法が良いかわからないが、まず興味を持って情報を手に入れること。そこからメタ認知が始まる。

今日も読んでいただきありがとうございます。日本のお茶は、中華文化の影響を受けているというのは知っているよね。最初に団茶、次に抹茶、最後に煎茶が日本にやってくるわけだけど、それぞれのタイミングで中国で流行していたものがやってくるわけ。茶と一口にいうけれど、その時の流行の最前線が変化していると、こうも違う形になってやってくるってこと。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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