思ったより中世日本史が面白い。2022年10月13日

いやあ、平安時代から鎌倉時代にかけての歴史が面白いんだ。日本史の中でも一番苦手なところだったんだよね。なんというか、社会システムや習慣や文化が違いすぎて想像しにくいんだ。

ぼくみたいなタイプは、文字を文字として理解していないところがあってさ。薄ぼんやりでもいいから、頭の中に映像が浮かんでこないとダメなのよ。たべものラジオもそうなんだけど、脳内映像で把握しているのね。台本があるんだけど、それを読んでいくっていうよりも、頭の中にある情景やイメージ図みたいなものをその場で言語に直して喋っている感覚。これは、同じ思考パターンの人じゃないとピンとこないよね。

日本史の時代区分だと、弥生時代、古墳時代、飛鳥時代、奈良時代ときて平安時代から鎌倉時代へという流れだよね。ぼくの感覚では、奈良時代と平安時代はセットかなあ。うーん、奈良時代と平安時代と鎌倉時代を3つの区分にしているんだけど、その区分の仕方がちょっと違うんだよね。奈良時代から平安時代初期、平安時代中期、平安末期から鎌倉時代。面白いポイントがこんな区分で見たほうがわかりやすい気がする。

乱暴なほどにざっくりと言ってしまえば、奈良時代は律令制が機能し始めたり、仏教が勃興してきたり、日本がある程度対等な外交関係を築いたりした時代。中国からの影響をメチャクチャ受けて政治体制が大きく変わるよね。なんだけど、どういうわけか中国との交易は割りと対等な関係に近いっていうのが面白い。

この時代の中国ってめちゃくちゃ強いわけ。もう貿易なんて言ってても、朝貢関係。中国に対して貢物をして、その見返りとして何かをもらってくる。そういう貿易なんだよね。この体制が東アジア全域に及んでいて、それこそ隋とか唐は権勢を振るった。ほとんどの国が、属国のような扱いだったり子供のような存在になっている。もちろん、日本もこのグループに属しているんだけど、その中では比較的対等な関係に近いのが不思議だよね。

飛鳥時代のことだけど、聖徳太子が遣隋使を送るじゃない。ほら、小野妹子。で、手紙を持っていくんだけど、その内容に隋の煬帝がブチ切れるって話を聞いたことないかな。「日出処の天子より日沈む処の天子へ」というようなことが書いてある手紙。これ、実はメチャクチャやばいことを言っているのね。だって、天子って皇帝のことだよ。うちの天皇はおたくの皇帝と同格だよってこと。魏志倭人伝にも登場する卑弥呼も、倭の五王もみんな中国に貢物を贈っていて、大国である中国に認められることで国家と認知してもらっていたわけだ。中国側から見れば、ウチが認めてやっているから国として認知されているんだよって話じゃない。なのに、いきなり対等だって言い出すんだから。でも、面白いことに聖徳太子の手紙に対する反応は、煬帝がブチ切れたっていうだけなんだ。国家的な紛争にはならない。ならないどころか、その後も遣隋使は続くし、遣唐使につながっていく。

ここから平安時代の前半というのは、隋唐帝国の影響を受けまくって日本が変形していく。なんだろうな。政治システムもそうだし、文化面でもそうだし、生活スタイルすらも影響を受けちゃう。もう、中国に憧れているからね。ちょうど、昭和の高度経済成長期に日本がアメリカ化した感じに似ているかもね。でも、ギリギリのところで反動が起きる。

894年に菅原道真の提案によって遣唐使が廃止になった。こうして一種の鎖国みたいになったことで、国風文化が花開いていくんだ。鎖国じゃないけれど、江戸期の鎖国と並べて見比べると面白いよね。自国文化の独自性という意味では交流や情報のインプットを制限するのも効果的なんだろうね。

平安中期以降は、平和って言えば平和なのかな。大きな戦もないし、外国が攻めてくることもないし。政治だって、取り敢えずはなんとななっちゃう。本来の律令制っていうシステムは崩壊の一途なんだけど、なんだかんだと社会が回っている。中央が腐敗していってるのは許せんという人も多いけれど、一方で現場が頑張ってなんとかしちゃうんだよね。統一的な仕組みやルールで運用しているわけじゃないけれど、直面した状況に対して臨機応変に修正していくって感じかな。

なんだろうな。優秀なんだろうね。歪を抱えたまんまでも数百年はちゃんと生産量が向上し続けるし、経済も発展し続ける。その間の貴族といえば、藤原家の摂関政治の全盛期。国のためにというよりは、自分の私財を肥やすことに注力してるわけ。賄賂だ汚職だと言われるようなことばっかりやっている。良いんだけど、そういう社会だから。ただ、当時のシステムやルールと違うことやっちゃっているからね。そりゃ壊れるよ。

壊れてきたところに、どうしてもコントロール出来ないバグが発生する。しょうがないよね。システムを崩壊させちゃっているのに、現場の努力で無理やり運用しているんだから。そんな状態だったら、社会の歪が発生するじゃん。そうすると、その歪をなんとか抑え込むための補強が必要になるよね。で、歪そのものが武士だし、それを抑え込むための補強も武士という存在。あ、武士に成長していくってはなしね。要は武力でもってなんとかしなくちゃいけないようになる。で、最終的に保元の乱だの平治の乱だのという、とんでもない戦いが起こっちゃうんだわ。

保元の乱って、まじでやばいよね。だって、朝廷という場所で刀持って闘争するんでしょう。本気の武力闘争。自分の意見を通すために武力行使をするのが貴族。これは国会議事堂で国会議員が戦っているのと一緒だもん。後にも先にもこんな事件はない。日本史上で唯一なんだろう。で、ここから武士の世の中になっていく。平清盛が日本で最初の武士の権力者。でもシステムは既存のまま。で、次に武士の権力者になった源頼朝が新しいシステムを作り出す。

ほらね。こうやってザクザクと概要を書き出すと、面白そうな出来事がある時代がわかるでしょ。変わり目とその背景。変革期があって、その後グズグズとあって、もう一回変革期がくる。たぶん、他の時代もこんな感じなんだろうと思うんだ。違うところがあるとすれば、日本史上の時代区分で最も長いのが平安時代。あ、縄文とか弥生はなしね。江戸時代よりも100年以上長いって。しかも、現代の古典文化の元はだいたい平安期なんだよね。古典的な儀式は平安時代に確立されたものが多いじゃん。なんだか変な時代だよね。

今日も読んでくれてありがとうございます。うっかり本編の原稿みたいになりそうだった今日の話。こんな乱暴な書き方はしないけどさ。自分で解釈し直したくて、それでこうして書いてみた。大筋を把握するのって、意外と難しいんだよね。勉強するときって細部を読むことが多いじゃない。だから、時々はこうして大きな流れを言語化してみるしかないんだよね。もうちょっと効率よく出来たら良いんだけど、しょうがないか。

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