今日のエッセイ-たろう

情報を入手したら下ごしらえする。思考の仕込み。 2023年11月12日

しばらく前に、ちょっとしたインタビューを受けた。インタビューと言っても、なにかのメディアで紹介されるわけではなく、ちょっと意見が聞きたいという類のもの。地元のとある企業が、まちづくり事業を開発するに当たって、色んな人にインタビューしたのだそうだ。

ぼくは、その候補に入っていなかったのだけれど、インタビューを受けた人たちの何人かが推薦してくれたそうだ。わが町のことだし、観光協会としてもありがたい話ではあるし、複数人の推薦とあれば喜んでお受けするのだが。誰かの知恵を拝借するのに、無償で時間を費やすのもなんだかなあ、という気持ちにはなる。

それはさておき、お話を聞きに来られた方は、何年も前から企画を考えていたらしく、まちづくりに関する情報を色々と収集されていた。なのだけれど、収集で止まっている。という印象は拭えなかった。じゃあ、それをやったらどうなるのか。実行するには何が必要なのか。それから、実行した後に発生しそうな問題はなんなのだろう。とかね。そういうことはあんまり検討されていない感じ。

思いつくままに喋っていると、インタビュアーからこんなことを言われた。今までお話を伺った中でもこんなにアイデアがポンポン出てくる人に出会ったことがない。

ありがたい褒め言葉である。そんなつもりはないのだけれど、そう言われたら素直に嬉しいのだ。

なんで、ポンポン出てくるのか。ぼくの思考がとても早いのか。というと、そんなことはない。むしろ、ぼくの場合はじっくりと時間をかけて思考することのほうが多いんだよね。思考のスピードが早まると、けっこういろんなところが抜け落ちてしまって、あんまり良いこと無いんじゃないかとすら思う。

答えは単純。毎日「なにか」についてじっくり向き合う時間がある。これだけだ。なにかしらの情報や、事象に出会った時、それについてじっくり考えてみる。何度も何度も繰り返しておく。自分なりに思考をこねくり回してみて、いくつかの発想をひねり出してみたりする。何もないときもあれば、なにかに気がつくことも有る。

情報を得てから思考を巡らせてなにかにたどり着く。いくつかのステップがあると思うんだけど、けっこう時間が掛かるんだよね。だから、先にいろんなことをやっておく。そうすると、注文が来た時にはいくつかの思考を組み合わせてひねり出せる、というわけだ。

食材を手に入れる。そしたら、下ごしらえをする。魚を買ったとして、オロさないでそのまま保存したとして、刺し身の注文が入ってから鱗を取り始めるのじゃあ時間がかかってしょうがない。それに、鮮度が劣化するし、熟成も出来ない。

情報だって同じだと思うんだ。鮮度が高くて、こちらの感度が上がっているうちに下処理をしておく。記憶が薄れてからじゃ、思考は発酵しない。途中まででも考えてあるから、ふとした瞬間に思いつくことが有る。そんな感じかなあ。

料理と違うのは、思考の仕込みは腐らない。もちろん、忘れてしまうことはたくさんあるけれど、それはそれで構わない。食材みたいに腐っちゃうと、それはマイナスだから。零以下ね。完全に忘れてもマイナスじゃないし、そもそも、思い出すってこともあるんだから無駄にはならない。

料理するためには、技術が必要。それも、ある程度使いこなせるように熟度を上げておく必要がある。技術やパターンを体に染み込むまで繰り返しているから、臨機応変に料理を作れる。仕込みさえしてあれば、突発的な状況にも柔軟に対応することが出来る。ってことじゃないかな。

きっと思考も似たようなもんじゃないかと思うんだよね。

今日も読んでくれてありがとうございます。臨機応変にいろいろと対応できる人ってスゴイよね。なんの情報も準備もなく、バンバン思考を早めて対応している。ちょっと憧れる。ぼくの場合は、どうもそういうわけにはいかないみたいだから、何が来ても良いように準備だけしておくっていう感覚かな。

そうそう、情報も新しくなるし、ぼく自身もどんどん変わっていくんだよね。だから、考え方もどんどん変わる。それが鮮度を保つってことかもね。過去の思考に囚われたままっていうのが、腐るってことになるのかもしれない。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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