今日のエッセイ-たろう

案外知らない地元の食文化と、その奥行。 2024年9月14日

食文化って、一体なんだろう。当たり前のように使っている言葉だけど、定義があるようで定まっていない。そもそも、文化という言葉の定義すらはっきりしていなくて、それこそ研究者の数だけ定義があると言われるくらいだ。

食文化の研究者として著名な石毛直道氏は「人間が自然界に対処してきた、人間らしい行動様式を示す」と言っているし、文化人類学者のエドワード・タイラー氏は「知識・信仰・芸術・道徳・法律・慣習その他、およそ人間が社会の成員として獲得した習性の複合敵全体である」と言っている。わかったような、わからないような。

たべものラジオを通して、いろんな食品や料理の遍歴を眺めてきたわけだけれど、未だに食文化というものが何なのかよくわからない。そんなことが影響していたんだね。という歴史のダイナミズムは感じるし、地域ごとに食文化が異なっていて、大きなエリアでも小さなエリアでも様々な異なる文化が存在していることはわかる。だけど、それは相対的な比較のようなものであって、食文化そのものを定義するのは難しい。

うまくいえないけれど、「◯◯を認識するためには◯◯ではないものと比べてみる」みたいな見方をするしかなくて、「◯◯そのものの本質」、つまりクオリアが見えないままという感覚。これ、伝わるかな。

来年の2月に開催するイベントのために、いま色々と準備をしているのだけど、その中で「掛川の食文化とはなにか」を考えなくちゃいけなくなってきた。まぁ、自分で設定したテーマなんだけどね。食に関する歴史とか、文化みたいなものは、そこそこ語れる程度には勉強してきたつもりなんだけど、「掛川の食文化」となると案外わからないということに気がついたんだ。特徴があるのか無いのかわからない。

こんなテーマで書かれた書籍があるわけもなくて、仕方がないから自分で情報を集めて考察するしか無いってことになった。で、食文化を構成する要素をいくつも洗い出してみては、並べて相関関係を見出していくのかなって思っている。じゃあ、食文化の構成要素って一体何なのだということになってきて、どうしたもんかと思案しているというのが今だ。

土壌、山、海、川、平野、という地面。川や池、海などの水。それらと深い関係を持つ気候とその変化。みたいなものが土台になって、その環境で自然発生した暮らし方も食生活には影響する。陸運、水運の影響も大きいので、海辺のまちと東海道のまちとでは様相が違う。で、それぞれのまちと、その中間の農村部は相互に影響し合っている。もっと言えば、三河や駿河という隣国とも影響し合っているし、京都や江戸との距離も無関係ではない。他にも、移住してきた権力者が他の地域から文化を持ち込むこともあるし、宿場町に芸者がいたということも他国からの旅人の文化を吸収する土壌になっただろう。もちろん経済の影響もあるし、祭りなど土着の信仰も切り離せない要素だ。

こういういろんな要素が、食材・調味料・調理技術・料理の知識・調理技術などの導入や工夫に影響を及ぼすわけだ。で、それらが組み合わさって、その土地独自の食文化が形成されるのかもしれない。なんてことを想像している。上記は、書きながら思いつくままに並べているだけなのだけど、これだけでも途方に暮れるほどの調査量になりそうだ。

一度とっかかりを作ってしまえば、他の地域の食文化を知ったときに、その構成要素を類推することが出来るから便利といえば便利。ただ、最初の一歩が大変だっていうだけなんだろうけどね。

幸いなことに、歴史マニアの友人が手伝ってくれることになったので、たいへん心強い。彼はいま中世の荘園や東海道について学んでいると言っていたから、それも多くのアイデアの源になりそうだ。なにより、同じものを研究してディスカッションできるというのは楽しみである。

今日も読んでいただきありがとうございます。たべものラジオのための勉強とは別に、あらたなミッションを設定してしまった。どうするんだよ。と思いながらも、こんなことを調査しようという人は当分現れないだろうから、やれるだけやってみる。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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