今日のエッセイ-たろう

歴史を変えるほど「欲しがられる」のはなぜだろう。 2023年12月2日

食の来歴を見ていくと、ある一定の食材が世界的に流行するという現象があることがわかる。それも、短期的な流行ではなくて、長い時間をかけて「多くの人が欲しがるもの」が成立していくのだ。

これまでに取り上げてきたものは、どれもこれも該当するのだろう。フグや梅干しなどは世界史で見ればマイノリティーではあるけれど、長らく食べ続けられてきたのだから、それなりに沢山の人が欲しがってきたのだろう。

ずっとずっと、なんでかなと思っている。一定の食材に収斂していくように見えて仕方がないのだけれど、そういうものなのだろうか。

不足している栄養素を含む食材を欲しがる。というのは、解のひとつではある。疲れたときに甘いものを食べるとより美味しく感じるとか、汗をいっぱいかいたら塩分は多めのほうが美味しく感じるなんてことは日常でもある。高校生のときに飲んだあるスポーツドリンクは、普段はあまり美味しいとは感じなかったのだけど、なぜか部活の後に飲むと劇的に美味しいと感じたのを覚えている。

だから、炭水化物、タンパク質、脂質、ミネラル、ビタミンなどの栄養素の観点から、自然と体が欲するものが人気になって需要が高まるというのはあるだろうと思っている。

一方で、それだけじゃないだろうとも思うのだ。糖質も脂質も、現代では摂取量が多すぎると言われている。過剰摂取ならば、これ以上はいらないよという信号が発せられるのが自然じゃないだろうか。至福ポイントの話をしたが、ぼくらの脳は、そんなに賢くないのかもしれない。

もしかしたら、もっと太ったほうが生存戦略的に有利だというのがあるのかもしれない。だとすれば、メタボリックシンドロームは病気ではないことになる。個体の寿命にこだわり過ぎと言われればそれまでか。話がそれた。

美味しいと感じるのは、栄養摂取だけじゃない理由がありそうだと思えてしまう。ゴマもニンニクも、その他いろんなスパイスも、栄養としては大切なものを持っているけれど、ぼくらは「香り」を良いと感じている。良い香りのものは、多くの人が欲しがる傾向が見られる。そういえば、コーヒーもお茶もそうだ。醤油が焦げた匂いも、お腹が空いてくるのはぼくが日本人だからだろうか。

栄養素の存在を香りが知らせてくれる、と解釈するのが良いのだろうか。じゃあ、毒のある植物が美味しそうな匂いをさせるのはどういうことだろう。毒以外の部分が栄養だということなのか。

もっとシンプルに考えてみよう。玄米や全粒粉パンよりも、白米や白いパンのほうが人気が高いのはなぜだろう。栄養素だけを考えれば前者のほうが良いはずだ。

アフリカの伝統的な主食に練り粥がある。ソルガムなどの雑穀の粉を水に溶きながら鍋で練る。そばがきみたいな感じ。ほかにも雑穀のクレープみたいなものもある。今、スーダンではパンが人気になっていて、練り粥の消費量が少なくなってしまっているらしい。栄養価では練り粥のほうが高いのに。きっかけは、アメリカの政治や経済戦略だったはず。だとしても、「美味しい」と「栄養・健康」がイコールで結ばれていれば練り粥に軍配が上がっても良さそうなものだ。

まとまった結論があるのかどうか、わからない。いまのところ、グルグルと思考が巡るばかりだ。世界中の食を偏らせるだけのパワーがどこにあるのだろうか。そんなことを考えなければ良いのかも知れないけれど、この疑問のせいで「ゴマの歴史」はまとまりがない。ヒントを集めるために周辺情報を色々とかき集めては、あーでもないこーでもないとやっている感じかな。

今日も読んでくれてありがとうございます。なにかスパッと解を求められたら良いのだけどね。初期に比べると、「わからないから、一緒に悩もう」みたいな感じの話が多くなってきてしまった。解釈次第なんだろうけど、まだしっくり来ていないんだよなあ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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