今日のエッセイ-たろう

知識は知恵の源泉 2022年8月18日

「知識は知恵の源泉である。」という言葉を聞いたことがあるだろうか。どこかで聞いたことがあるような無いような。という感覚があれば、それで正しい。だって、ぼくが勝手に言っているだけだからね。でもまあ、ぼくが知らないだけで、似たようなことは誰かが言っているのだと思う。

知識が多いということは、本来は素晴らしいことだったと思うんだよね。有識者だとか、村の長老だとかは大切に扱われていたんだから。だけど、いつの間にか知識を軽んじる傾向が強まってしまった。という感覚を持っているんだけど、これは世代によるのかな。それとも、周辺環境だけなのかな。

高校生の頃には、「文系学問のように覚えることが多いのはナンセンスで、理系学問のように公式から導けることなら公式だけ覚えて情報は代入すれば良い。そのほうが効率的だ」という事をよく聞いたんだ。そんな情報はどこから持ってくるんだって話なんだけど、それは「目の前にある事象からデータを取るとか、インターネットで検索するということで事足りるんだ」ということだ。なんとなく似たような発言は社会人になってからも時折耳にすることがあったんだよね。若い頃は、なんとなくそんなものなのかなあ、というくらいに受け入れていた。

いつ頃のことだったか忘れちゃったけど、全く逆の発想をするようになった。

知識がなければ、思いつくことが出来ない。思いつくことが出来なければ、検索することも出来ない。仮に、公式があったとしても何を代入すれば解を導き出すことが出来るのか見当もつかない。公式中に別の公式を代入することすら無理。そもそも、社会生活で公式と思えるものなんてない。

思えば学生の頃は、社会には公式があるのかもって思っていたんだよね。なんとなく。そのために必要なことを学生の間に学んでいるのだろうって。そんなわけ無いんだけど、そういう感覚だったんだ。

もちろん、知識だけがあっても意味がない。知識はデータみたいなものだからね。単純なデータであることもあるし、複数のデータが組み合わさった塊みたいなものもある。これらのデータをいくらたくさん集めたところで、それがそのまま使えるわけじゃないんだよね。

センサーから光を放って、物体にあたって戻ってくる時間を計測することで距離を測ることが出来る。という距離の測定機器があるよね。これを応用すると、対象物が移動する場合の速度を測ることが出来る。というセンサーとデータの塊がある。じゃあ、このセンサーをどう使うのかということが大切。野球のピッチャーが投げるボールの速度や、高速道路の速度違反取締に使うという「目的」があって初めて意味を持ち始める。

さらに、その速度データを他のデータと組み合わせる。暦や気象情報、自動車のタイプといった情報と組み合わせたら何が見えてくるだろうか。渋滞予測などに活用できるのかもしれない。投球フォームや骨格などのデータと関連付けたら、投球トレーニング理論が進むかもしれない。

上記の例は、比較的関連付けやすいデータ群。データとデータの間にある関連性を見出しやすい。だけど、もっと違うデータとデータの間で知恵が生まれることもあるはずだよね。スティーブ・ジョブズが暇つぶしに受講した大学の授業が文字デザインだったことが、のちのマック文字を生み出すことになったというのは比較的有名かな。文字デザインを学んだ時点で、将来何に役に立つかなんてことは全く考えていなかったらしいんだよね。とりあえず知識をちゃんと入力しておいて、必要な時に取り出して使うこと。

知識と知識の間を繋ぐものって、実際なんだろうね。経験というのもあるだろうけれど、それだけでもないような気がする。なんか、関連付けて使うためのプロセスみたいなものがあるんだろうか。いろんな人がいろんなことを言っているんだけど、あんまりしっくりこないんだよなあ。

情報をラベリングしてインプットしておくことで、使えるタイミングでちゃんと使う。という人もいるらしいんだけど、それも違和感がある。だって、情報をインプットした時点では何に役立つかがわからない。いや、正確にうと、何に使うかを予め決めてしまうと、その場面で使うことに執着してしまいかねない。全然違うシチュエーションで活用できる可能性を減らしてしまいかねない。そんな気もするんだ。

よくわからないので、ぼくなりに情報インプット方法を整理している。インプットする際には、その情報をなるべく多角的に見る。立場を変えてみたり、人文学的にだったり科学的にだったり、構造を見たり、人を見たり、もういろいろ。で、ラベリングというよりも複数のタグを振っておく感覚かな。なんとなくハッシュタグをいっぱい付けておいて、うっかり似たようなハッシュタグで検索した時に引っかかるようにしておく。

いやもう、ホントに面倒くさい作業だし、そんなにちゃんと出来ないんだけどね。感覚的には、そうすることが良さそうだと感じている。で、そうしようとは努力しているつもり。

知識は知恵の源泉である。というのは、座右の銘の一つでもあるんだけど。一方で、知識を知識で終わらせないってことも大切だと思っているよ。ぼくの脳みそがもっとハイパフォーマンスだったら良かったんだけど、そうでもないらしい。だから、一生懸命考えて、工夫しなくちゃいけないんだよね。面倒くさいなあ。だけど、まぁしょうがない。

今日も読んでくれてありがとうございます。好きな言葉は「知識は知恵の源泉」「枯れ木に花が咲くより、生木に花が咲くを驚け」「不立文字」。ちゃんと知識を入れる。一見当たり前のように感じる事象のほうが、ホントは驚くに値するものだという姿勢でそれを見つめる。そして、文字だけに頼らず五感を使って体で考える。そういう感じなんだけど、学びのハードコースだね。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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