自分の意見をちゃんと伝え合うという基本。2022年10月18日

思ったことは素直に言葉にする。というと、一見良いことのようにも捉えられそうだけど、実はそうじゃないんだろうな。思いついたことと、思いついた言語は区別して考えなくちゃいけないんだと思う。

コミュニケーションの行き違いでトラブルが起きるという事象については、古今東西どこにでもある。まさに枚挙にいとまがないというのはこういうことを言うんだろうな。だいたい、歴史上の戦いの発端の多くはディスコミュニケーション。相手が何を考えているのかわからなくて、それが怖くて戦いの準備をする。で、その隣国では戦いの準備をしている理由がわからなくて、やっぱり怖くて軍備を増強する。これが、東洋西洋ということになると、お互いの文化だとか思想がわからないから、やっぱり怖くて力でねじ伏せようとするとか。まぁ、そんなことの連続だもんね。犬養毅の最後の言葉と言われている「話せば分かる」は、本人の意図がどうだったのかは別にして、真実なんだろうな。

日本人の悪い癖といわれているけれど、あんまり本心を相手にぶつけない傾向にあるらしい。自分が日本人だから、いまいちピンとこないのだけれど、言われてみればそうなのかもしれない。面倒くさいんだよね、きっと。揉めたくないから当たり障りのないところに落とし所を見つけようとする。ホントは、もっと議論を重ねて白熱して、その結果として最終的にどこかに決着するということなんだろうけどさ。初めから決着を予測して、それに見合った言動をしてしまう。だから、自分も意図していないし、相手も意図していないし、なんとなく中途半端なところに決着させることになるんだと思う。

だから、自分の意見をきちんと伝え合うことが大切なんだよね。お互いに違う意見があって、その根拠や背景をしっかり認識しあって、良い意味で妥協点を見つけていく。例えば、なんだろうな。会社の経営会議だとすると、営業は売上を伸ばしたいから新しい販売施策を提案する、経理はそれだと費用が合わないと主張する。みたいな感じ。で、ここでどちらも言いたいことを言わないっていうのが一番問題。なんとなく、相手の主張に合わせて、なるべく経費のかからない施策を最初から提案しちゃう。ホントは、経費を10%増加すれば売上が50%増える可能性があるのに言わない。それってもったいないと思うんじゃないかな。お金のことだからセンシティブだけど、伸びる確率が高いのであれば投資する価値はある。

ここでの議論だったら、売上が伸びる根拠をちゃんと説明することだ。なんとなく、で曖昧にしない。これよくあるんだよね。これで本当に売上が伸びるのか。って上司に問われて、その根拠が薄い場合。ちゃんとマーケティングして、予測を立てて、それに従って施策を構築して、必要経費をしっかり算出する。まぁ、当たり前のことをちゃんとやる。そしたら、経理も経営も真剣に考える。ここも曖昧になりがち。どの程度まで経費をかけても大丈夫なのか、足りないのならちゃんと足りないと言う必要がある。例えば物品なら、他に同じものを安く仕入れられないかを検討するとか、廉価版に置き換えたときに施策の効果に影響があるかどうかを検討するとか。お互いに持っている知識と情報を出して、納得の行くまで話し合うことが本当の議論のはずなんだよね。先週のエッセイでも書いたけれど、だからこそ言葉の定義を確認しあっておく必要があるし、議論の目的を明確にしておく必要があるってことになるんだよね。

わかりやすく例え話をあげたかったんだけど、うまくいかないなあ。なんだか、会社員時代を思い出しちゃったよ。

さて、ここで大切なのは、思ったことはちゃんと素直に言葉にするっていうことがひとつ。思ったことを言葉にするというのは、結構大変でさ。ちゃんと普段から考えていないと出来ないんだよね。自分の意見がない人が会議に参加しても、意見が出てこない。それに、会議中も色んな人の考えをしっかり聞いて、その場で一生懸命考えなくちゃいけない。読解力と思考力と表現力を同時にフル活動させないとこれは出来ない。だから疲れるし、それなりにスキルも必要なんだよね。

これがベースにあって、そしてはじめの文章に戻る。思ったことをどんな言葉にして発信するか。何も考えないで、思いついた語句をそのまま口にしちゃうとこじれる。そういうことが出来る関係性だったら良いのかもしれないけれど、親しき仲にも礼儀ありっていうじゃない。そこは、子供じゃないんだからちゃんとしよう。じゃないと、無駄に感情をこじらせて話が進まなくなるんだよね。たしかに、イチイチそんなことに反応して機嫌損ねなくたっていいじゃんという声もある。なんだけど、それはちょっと片手落ちじゃないかな。お互いに、そういう無駄な感情の振れ幅を作って疲労度を上げるなんてのは無駄なコストだと思うんだよ。それなりにきちんと言葉を扱うことが出来れば、無駄を避けて持っているエネルギーを議論に振り向けることが出来るんじゃないかと思うんだよね。

今日も読んでくれてありがとうございます。別に何かトラブルがあったわけじゃないよ。ぼんやりとyoutubeを眺めていてそう思ったって話。言うべきことはちゃんと言ったほうが良いけれど、ある程度は言葉を選んだ方が効率がいいなと思ってさ。言い表せないのであれば、ストレートにぶつけるしか無いんだけど。そういえば、江戸の幕閣は納得できるまでひたすら議論し続けたらしいよ。それこそ三日三晩。感情論でもなく、妥協でもなく、とことん話し合う。これもまたひとつのスタイルだよね。遅いけど、ブレない強さが生まれる。一長一短なんだろうね。

記事をシェア
ご感想お待ちしております!

ほかの記事

「格言っぽいもの」を、逆転させてみた。 2024年3月29日

少し前のことだけれど、ボーっとSNSを眺めて時間を浪費していたところ、格言めいた投稿を見かけた。よくわからないけれど、時々格言っぽい投稿を見かける。これって、なにかの流行なのかしら。あんまり発信をしないし、たまに覗く程度の弱者にはよくわからない。そういえば、発信をあまりしないのは、ここで好きなこと...

ググっても出てこない情報も、聞いたらすぐにわかることがある。 2024年3月28日

当店では電話でご予約を承ることが多い。メールでも構わないのだけれど、相互の情報を埋めながらやり取りをするには、電話のほうが短時間で済む。平たく言えば、互いに聞いておきたい情報を確認するなら、電話のほうが早いよねっていう話。 「予約したいです。」「ありがとうございます。日程と人数を教えて下さい」...

「動き」「動詞」が楽しみを作っている。 2024年3月26日

世間は春休み。あちこちで子供連れの家族を見かける季節だ。ショッピングモールも、近所のスーパーマーケットも、アミューズメント施設も、いたるところで子供の声がする。長期休みでなくても土日ならば代わり映えのない光景なのかもしれないけれど、平日休みのぼくらにとっては年に数回やってくる体験である。...

接待ってなに?ビジネスに必要なの?その本質を探る。 2024年3月15日

接待というと、あまり良いイメージを持たない人が多いのかもしれない。談合や官官接待などという言葉がメディアを賑わせていた時代があって、接待イコール賄賂というイメージが付いてしまったのだろうか。それとも、とにかく面倒なことで、仕事の話は昼間の間に会議室で行えばよいと考えるのだろうか。調査したわけではな...

「◯◯料理」というのは、その地域の世界観そのもの。 2024年3月3日

常々思っているのだけれど、日本料理の特徴のひとつに、なんでも自己流で再解釈してしまうというのがある。自然信仰があって、自然を尊び調和を目指すという世界観が根付いているから、他の世界観を持った地域からもたらされた知見も食材も食材も料理も、みんなこの思想で再解釈される。そんなふうに見える。言ってみれば...

勇者のパーティーは何処へいく?賞金稼ぎになっていないか。 2024年3月2日

勇者が冒険に出るとき、はじめは1人だけどたいてい仲間ができる。旅に出る前に仲間を募ることもあるし、旅の途中で仲間が増えていくこともある。なんとなく、同じ目的を持っているからとか、楽しそうだから、気に入ったからなどといった理由で一緒にいるように思える。物語の中ではそんなふうに語られることもある。もち...