話が長い人にありがちなパターン 2022年9月16日

話が長い人っているよね。いるいる。もしかすると、リスナーさんの中には気がついている人もいるかもしれないけれど、ぼく自身もそうらしい。自覚が無いのが面倒なところで、大抵の話が長い人は自覚がない。というところから、少しばかり「話が長いというのはどういうことか」を考えてみようと思う。

直接知っている方で、話が長いのだけれど面白くて聞いていられるというタイプがある。大学の教授をされていた方で、学者っていうのは話が長くなっちゃうんだってぼやいていたくらいだから、自覚されているのだろうと思う。5分から10分程度のご挨拶をお願いすると、気がついたら30分などということはよくある。

これが結婚式の乾杯の挨拶だとうんざりするのだけれど、この方の話はうんざりするということがない。とにかく面白くて、聞いている方も気がついたら30分経っていたという感覚なのだ。締めの挨拶にするにはもったいない。メインでお話をしてもらいたいくらいだ。

普段からメインでお話をされる機会の多い方なのだ。大学で教鞭をとっておられたのだから、授業というのはそういうものだろうしね。もちろん、講話をお願いするとちゃんと時間通りにお話をしてくださる。2時間なら2時間。ちゃんと質疑応答の時間まで計算に入れてくれるのだから、さすがというより他に言葉がない。にも関わらず、話が長いという評価がつきまとうのはなぜだろうか。稀なタイプかもしれないけれどね。

ぼくが聞いていて感じることだが、一つ一つの話が丁寧なのだ。文学を中心に人文学、社会学、歴史学など多岐にわたる知識から紡ぎ出される考察は示唆に富んでいる。けれども、それらの学問領域をまたいで理解している人なんかは少数だ。専門用語はもちろんのこと、概念もわからない。だから、実例を交えながら面白おかしくそれらを解説してくれるのである。結果として、「○○と似ているから△△だ。」というためには、○○を説明しなくちゃいけないということになる。その○○を説明するためには、更にいくつかの基礎知識が必要で、一つ一つを聞き手に理解してもらえるように丁寧に解説しているうちに話が長くなる。とまあ、そんな構造なのだ。

だとしたら、これは僕ら聞き手が事前知識を増やせば、もっと短時間で話を聞くことが出来るのではないか。という結論にたどり着いたのだ。

ある時、少人数でお話をする機会があって、それまでにお聞きした内容を復習してからその場に挑んだんだよね。そしたら、ドンドン話が展開していって、結局長くなったのよ。結局は長いの。そうなんだ。ぼくが勉強していったおかげで、聞き手への説明が短くなった分、もっと奥深くまで話が進むようになったんだ。ちょっと勉強したくらいで肩を並べられるほどの知識量になるわけがない。説明が省かれた分、先に進むだけのことだ。

そうか。学校の授業というのは、こうして成り立っているか。小学校中学校で基礎知識を積み重ねていったおかげで高校の授業が成り立っている。小中学校の基礎知識無くして高校の授業を理解させようとしたら、すべての事柄を一つ一つ説明していかなければならないのだから。

話が長い人の、パターンの一つはこれなのかもしれない。わかりやすく説明するために、事前情報を語るからトータルで長くなる。そういう構造なのかもしれない。

そういえば、世間話でも同じ構造が見られるかもね。噂話程度でも、背景や人間関係なんかを説明してくれる人もいるじゃん。下手をすると、その噂話を聞きつけたシーンを説明してくれたりする。

「先週お醤油を切らしちゃってさ。もう夕食の支度を始めたところだったから、あわててお醤油を買いに行ったのよ。そう、角の酒屋さん。そしたら、酒屋のご主人に捕まっちゃってさ。ほら、あの人話しだしたら止まらないじゃない。でね。そのご主人が言うには・・・。」

伝えたい話をは全く関係ないことをドラマチックに話してくれるわけだ。いらんのだけど。

今日も読んでくれてありがとうございます。たべものラジオは、ちょいちょい余計な説明シーンの話が入ってくるから、世間話と同じ構造なんだろうな。それでも楽しんで聞いてくれるリスナーさんがいることは奇跡としか言いようがない。ジャガイモシリーズで、なぜか氷河期の話。豆腐シリーズでなぜか秦漢帝国や隋唐帝国や三教の話。本筋とは関係のない背景。正直いらんのだ。食材だけを理解するのなら。ただ、ちょっとおもしろいなと思ってやっているだけ。

記事をシェア
ご感想お待ちしております!

ほかの記事

田舎のまちづくり、あるある話 2024年4月21日

田舎に帰ってきて、そろそろ10年になる。びっくりするくらいに変わったような気もするし、特になにも変わっていないような気もする。僕自身の変化で言えば、ずいぶんとゆっくりになったかな。歩くのも遅くなったし、動きも遅くなった。チャレンジ自体はするのだけれど、結果を求めるスパンが長くなった。...

消費量に上限がある食産業で、持続可能性ってどういうことだろう。 2024年4月17日

フードファイターってすごい量を食べるよね。一度に何kgも食べるのだけど、それってちゃんとエネルギーとして使ってるのかしら。よくわからないけれど、苦しそうに食べ物を食べている姿って、つくり手としてはちょっと寂しいんだ。だから、あんまり好きじゃない。...

料理の盛り付けどうやっている? 2024年4月16日

身近なところではあまり聞かなくなってきたのだけれど、身だしなみってやっぱり大切。今頃の季節は、社会人一年目の人たちが先輩や上司から言われているのだろうか。なんだか、型にはめられているようで嫌だという人もいるけれど、身だしなみというのはそういう話じゃない。キレイだとか美しいだとか、そういう感覚のもの...

民主化して広がるものと、そうではないもの。 2024年4月13日

元禄文化の最初の頃に活躍した松尾芭蕉。日本の義務教育を受けた人なら必ず聞いたことがある名前だし、有名な句のひとつやふたつくらいは諳んじられるはず。「夏草や」、「古池や」、「五月雨を」などと最初の歌いだしだけでもそれが何かわかるほど。個人的に好きなのは「海暮れて、鴨の声、ほのかに白し」。...

半世紀前のレシピを見て気がついた野菜のはなし。 2024年4月10日

当店では、過去に提供した献立の記録がある。といっても、その全てを記録してあるわけじゃないけれど、ざっくり半世紀におよぶ献立の記録があるのだ。前菜はどんなもので、椀物や焼き物の中身がなにか。焼き魚に添えられるものなども、大まかに書いてある。大学ノートに書いてあるから、パラパラとめくって眺められるのは...