今日のエッセイ-たろう

転売ヤーってなんだ?2022年9月24日

昨今問題になっている転売ヤー。直感的に、嫌な気分になる。欲しい物を手に入れたいという人がいて、その人にものを届けたいという人がいる。貨幣経済上では、モノと交換されるのはお金。ま、当たり前の話だ。転売ヤーや、この中間に入って利ざやを稼ごうとする人たちのことだよね。商品自体が欲しいわけじゃなくて、欲しい人に定価よりも高く売ることを前提としているわけだ。

確かに経済の仕組み上は、何の問題もない。むしろルール内での行動。なのだけれど、直感的にイラッとするのは、きっと売り手と買い手の思いを無視した行動に見えるからなんだろうなあ。

とまあ、そんなことをぼんやり考えていたのだが、また別の疑問がムクムクと湧き上がってくる。これって投機市場とどこが違うのだろうか。直感でしか理解できない感情のようなものは、一度疑ってかかるというのが習慣になってしまっているのかもしれない。一度、真逆の事を考えてみたくなるのだ。今回の場合は、転売ヤーを肯定するとしたら、どんな弁護が可能なのだろうかということだ。

ツイッターで見かけるような、これで生活している人がいるのだから立派な仕事だっていう理屈は、一見理屈のように見えるかもしれないけれど、何にもなっていない。その理屈が通るのならば、泥棒を家業としている人も肯定しなければならなくなってしまうからね。そうじゃなくて、ぼくの直感が違っているのであれば、それを覆すようなロジックが必要。だから、必死に弁護を試みることにしてみる。

こんなケースを考えてみた。ある商品がどうしても欲しい。けれども、販売数量が限られているから発売日に店頭に並ぶしか無い。というような状況を設定してみる。そんなに手に入れたい商品ならば、お店に行けばよいのだろうけれど、それが出来ないこともある。仕事などの都合で、行列に並ぶという時間が確保できなかったり、遠くて物理的に無理がある場合がそれだ。

そこで、誰かに依頼することにする。依頼された人は、その商品には興味がない。興味はないが依頼主の代わりに行列に並ぶのだ。これは代行業。依頼主は代行してくれた人に謝礼を支払うことになる。

さて、これが何度か繰り返されたとすると、代行業者は先回りをし始めるだろう。類似の新商品の情報を入手して依頼主に提案することもあるだろうし、先に購入しておいて届けるということもあるかもしれない。依頼主が喜んでいるのであれば、これはビジネスとして成立するようにみえる。実際に、仕組み化されているケースもありそうだよね。

これと、転売ヤーを一緒にしてしまうのは少々乱暴なんだけど。近いよね。手の届かないところにあるものを、手が届くようにしてくれる。高くなってもいいから欲しいという人はいるわけだ。並ぶという労力を支払う代わりに、金銭で解決しているとも言える。

さて、一見この代行業と転売ヤーは似ているようにも見えるのだけれど、一体何が違うのだろう。直観的には違うという感覚がある。あるのだけれど、その部分が言語化出来ないでいるんだ。転売ヤーは搾取に見えるからなぁ。

貴重な古本が低価格で古本屋に並ぶ。それは、本当は貴重なものなのだけど、古本屋がその価値を知らないから低価格のままだ。もしくは、その古本屋の商圏では、高価格に設定しても売れる見込みが無いのだろう。こういうことはよくある話だ。ホントはそのジャンルに詳しい人にとってはもっと高価格だったとしても買いたいと思うような商品かもしれない。だから、適切なマーケットに置くだけで販売価格は違ったものになるんだよね。

ニーズのある場所に商品を移動させる。もともと、商社などがやっていた仕事がこれだ。ニーズのあるマーケットを把握する労力、移動させるためのコストが発生するから、その分の労働に見合った価格設定になる。それは働きと呼んで差し支えないような気がするな。

さてここまで書いてみたけれど、転売ヤーはどうだろう。

欲しい人が居て、提供者がその人達が手に取れる場所においている。それを妨害している行動があるとしたら、それはビジネスと呼べるのだろうか。マーケットの移動もない。利便性の向上もない。ただ、人よりも早く入手して、それを別の人に高値で販売するのだから、根本的に違っているのか。高値でもいいいから購入したいと思えるようなベネフィットがないのが問題なのだろうな。

一見、正当なビジネスにも見えなくもない。というのは、先に書き出したように、一見類似したように見えるビジネスが存在しているからなんだろうね。それとごっちゃにして弁明できてしまう。結局、ビジネスっていうのは利益だけじゃなくて、前後に関連している人間が喜ぶかどうかで決まるってことか。まさに三方良しの精神。

そう考えるとさ。投機ってどうなんだろうね。生産者には全くベネフィットがないわけでしょう。投機市場の中でしかお金が動いていない。転売ヤーばっかりってことだ。

そうそう。前から思っているんだけど、主要穀物などは投機対象から外すようには出来ないのかな。麦とか米とかトウモロコシや大豆ね。もちろんこれだけじゃないだろうけれど、こういった農産物は人類が生きていくために必要な土台になっているんだよね。それを投機対象にしてしまうと、必要な人に届けられなくなってしまうじゃない。本来不要なコストが発生するからさ。やるなら、生活基盤じゃないところでやって欲しいんだ。

今日も読んでくれてありがとうございます。なんだか、投機って転売ヤーとやってること一緒に見えてきた。違うのかな。理解するにはもう少し勉強しないといけないな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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