今日のエッセイ-たろう

面白い話ってどうやって生まれるのだろう。 2023年7月10日

話の面白い人というのは、世の中に一定数いる。お笑い芸人のように笑いを取れるタイプもいれば、話の内容や展開が面白くて引き込まれる人もいる。下手なら下手なりに、何度も繰り返して練習していくことである程度は話を楽しんでもらえるようになるかもしれない。たべものラジオが、内容だけじゃなくて話者としても上手になっていると良いのだけれど、果たしてどうだろうか。

面白い話をしようと思うと、なかなか話題が出てこない。自分ではオモシロイと思っていても、聞き手にとってはどうでも良いということもある。ところが、聞き手役が上手だと、話が苦手な人の話も面白くなるということがあるらしい。メディアで活躍しているアナウンサーや司会の名人は、どうやらそういった人たちのようだ。

問い。それが良いのかもしれない。話題設定と言い換えても良い。相手から何を引き出せば面白くなるかを知っているから、その話を引き出すための質問を設定する。たったそれだけで話は面白くなるような気がする。

面白い話は、良い問いから生まれる。問いが良ければ、どんな人でも面白い話をし始める。逆に、話が面白くならないのは問いが良くないのだ。という仮説を立ててみる。

今日はいい天気ですね。天気の良い日は何をしているのですか?から生まれる面白い話はあるだろうか。上手いこと話す人もいるだろうけれど、なかなかハードルが高い。じゃあ、こんなのはどうだろう。天気が良かったことで忘れられないことはありますか?前日まで土砂降りだったけれど、遠足の当日になったら天気が良くなったとか。このくらい限定すれば少しは当たるかもしれない。

他の人にとっては価値がなさそうだけれど、どういうわけか捨てられない物はありますか?とっさに答えるのは難しいかもしれないけれど、じっくり考えれば面白い答えが出てきそうだ。モノにまつわるエピソードや、思い入れ、それを所持していることで生じる不具合や良かったこと。話は膨らみそうだ。話者が何に興味を持っているのかが見えるような気もする。

今は都会でバリバリ働くビジネスマンですが、初めて上京したときの忘れられない思い出はなんですか?結構限定的だけれど、一つや二つくらいはありそうだ。東京で暮らし始めた部屋や町のこととか。こんなエピソードを聞いたことがある。とあるニューヨーカーが語る思い出には、初めて暮らした部屋の窓を開けたら眼の前に隣のビルがあったという。都会にはありがちな光景だけれど、彼はこれに感動したらしい。故郷のテキサスでは見ることのない光景に、これから始まるニューヨークライフを実感した瞬間だというのだ。

そのときの思い出が、現在までどんな道のりで繋がってきたのかを聞き出せたら面白そうだ。

いつだったか。グループワークのアイスブレイクにこんな設問をしたことがある。最後の晩餐があるとして、そのとき食べ物はなんですか?実現不可能でもかまいません。解答例として「味噌汁」を挙げた。祖母が作ったものが希望だけれど既に亡くなっているから、二度と食べることが出来ない。ただ、こうした答えから話は膨らんでいくのだと思う。誰でも思い出というものは自分だけのものだから、語るにはおもしろ話が多い。

いくつか例を挙げてみたけれど、これといった収穫はなさそうだ。ひとつ言えそうなことは、やはり問いが大切だろうということか。そうだ。勝手に面白い話を展開する人は、自分で面白い問いを設定し直しているのかもしれない。自らの話を深掘りする力がある。問いを立て直す力がある。力があるというよりも、着眼点かな。気をつけているだけかもしれない。

今日も読んでくれてありがとうございます。たべものフォレストという新番組があるのだけれど、インタビュー番組なんだよ。まだ始まったばっかりなんだけどね。これからインタビュアーとして、どうしたら良いかなって思ってさ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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