今日のエッセイ-たろう

30歳くらいで勉強の仕方は変わるらしい。 2022年11月12日

大人になってから勉強するのは意外と楽しい。たべものラジオはその典型なのだろう。リスナーさんにも言われるが、もっと若いときにこれを知りたかったという。ぼく自身、そう思う。歴史を学ぶことは、比較的若い頃から好きだったのだけれど、学校の歴史の授業は大の苦手だった。とにかく面白くない。と思っていた。

最近、どこかで聞いた話なのだけれど。実は、脳の発達状態で、物事を覚える仕組みが変化するらしい。大人と子供では覚え方が違う。年齢を重ねると物覚えが悪くなるというけれど、それは年齢に適した勉強の仕方ではないからだというのだ。

脳が大人になるのはおおよそ30歳くらいだそうだ。社会通念とは乖離がある。20歳の段階では、まだまだ脳は発達の途中ということ。発展途上の脳の特徴は、意味など考えなくても丸暗記が可能だという。幼い子供を観察すると、確かにそうかもしれないと思うことも多い。意味を理解しないままに、音で言葉を覚えてしまう。小学生などでも、意味もわからず面白い音の響きに敏感で、面白さだけで連呼して笑っていることがある。で、ずいぶんと時間が経ってから、やっと意味を知る。学習の過程で知ることもあるし、大人に質問することもある。

そんな覚え方をしているから、おとなになっても意味を理解しないままに誤って使ってしまう言葉があるのかもしれない。いわゆる赤っ恥をかくのはこういう仕組みなのかな。ぼくにも経験がある。だから、本を読んだり辞書で調べたりという学習が必要なんだろうね。とまぁ、発展途上の脳が学習するのはこんな仕組みらしい。

さて、大人脳はどうか。順番がまるで逆になるのだそうだ。先に、意味や文脈を理解する。そのうえで必要な部分を覚えていく。実は、こちらのほうが高度なのだ。当然だけれど、発展途上の脳に比べれば、成人した脳の方が優れているに決まっている。体で言えば、骨格が定まって外的環境に抵抗できるようになるようなものだ。それが30歳だというのだから、脳は肉体に比べて時間がかかるんだね。

意味や文脈を先に理解すること。理解するには、自分自身の脳で考察をしなくてはならない。しっかり脳を働かせて、与えられた情報から思考する。そうすると、必要な情報が脳に定着する。先に蓄えておいてあとから思考するのではなくて、その場で考えることで記憶が進むのだそうだ。

その場で思考するためには、それなりに基礎知識が必要になる。だから、発展途上のうちにたくさんの情報を蓄積しておく必要があるんだと考えると、なんとなく詰め込み型の教育にも意味があるように思えてくる。

そういえば、たべものラジオを始めてからというもの、いろんな知識が蓄積するようになった。もちろん、これだけの情報量ともなると、忘れてしまっていることも多い。だけど、それなりに覚えているもんなんんだよね。

脳の仕組みから考えると、こういうことじゃないだろうか。

ぼくの学習方法は、基本を読書に置いている。書籍として流通しているものは、それなりにフィルターがかかっているはず。ネットに転がっている情報に比べれば、正確なのだろうと思う。著者もしっかり調べているだろうし、編集の段階で更に精査されているからね。で、本に書かれている情報を受け取るわけだ。ところが、専門家の書籍というのは、いくらわかりやすく書いてくれていても知らない言葉が登場するのだ。周知の事実だと思っている。歴史的な事象でもそうだし、文化でもそうだし。ぼくにとっては見たことがない熟語でも、それは一般教養の範疇だろうと思って記されている。

しょうがないから、調べるんだよね。辞書を使って、ネットで検索して、ネットで入手できる論文を読んだり、別の本を読んだり。テーマにもよるし、ぼく自身の基礎知識にもよるのだけれど、1冊の本を読むのにかなりの労力を割くことになる。

かなり面倒な作業だよね。なのだけれど、この面倒な作業が「理解」の手助けになっているのかもしれない。わからない言葉だからといって、それをスルーしない。さも当たり前のように書かれている事象についても、なぜそうなったのかを調べる。これが「理解」になる。

そして、これらの情報をつなぎ合わせて再編集する。たべものラジオでは音声にして配信しているわけだよね。文字や図解、身振り手振りといった情報が使えないから、それでも伝わるようにしなくちゃいけない。複数の情報だって、バラバラのままだと繋がりが見えない。調べただけの段階では、ぼくにも見えていない。だから、それらの情報を並べて繋がりを「思考」しなくちゃいけないのだ。

本を読みながら、なんとなくは想像している。もしかしたら、気候変動が関係しているのじゃないだろうか。これを引き起こした人物がいるのじゃないだろうか。もっと古い時代の文化や政治が間接的に影響を及ぼしている可能性はないだろうか。そんなことを考えながら、情報を集めてつなぎ合わせていく。で、それを自分なりの解釈で文章にしていくのだ。感覚としては、自分専用の参考書かな。これを読めば、ぼくだけはわかる。そんな文章。

たぶん、これが「思考」になっているのだろう。そんな仕組みのことなんか、全く考えてなかったけどね。聞いた話を当てはめてみると、そうなのかもしれないってこと。全然違うのかもしれないけど。

今日も読んでくれてありがとうございます。この文章だって、ぼくが書く必要なんてどこにもない。専門の人がどこかに書籍で残しているだろうからね。もっと詳しいだろうし。ただ、自分のことに置き換えてみたらどうなるかっていう思考をしてみて、自分なりに理解してみて、それを再構成して書いただけ。その方が定着するから。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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