DXするのはいいけどさ。かえって煩雑になっている気がする。
オンラインで申請出来ますよとは言うのだけれど、そのためには別の機関が発行するIDと認証が必要で、その認証を得るためにはマイナンバーカードをPCで読み込ませなくちゃいけなくて、となるとリーダーが必要になって、結局コピーして送付しなくちゃいけなくて。それでやっと使いたいシステムの使用権限が与えられるのだ。でもって、そこからまた似たような手続きがある。とまぁ、ずいぶんと面倒にしてくれたものだ。
清少納言なら、きっと「にくきもの」の中でバッサリと切り捨ててくれるかもしれない。
ITリテラシーがある人でもこれだ。結局窓口に行ったほうが話が早く進むのは、多くの人が感じるところだろうと思う。
ところが、である。
DXを実施した気になっているものだから、窓口の人数が少なくなっている。質問は電話の自動ガイダンスやチャットでお願いしますとさえ言われることもある。
現時点では、ITではニュアンスや空気感は読み取れないらしい。そもそも、問い合わせをする人の何割かはややこしいことをやっている自覚があって、これであっているのかどうか不安だと感じていたりする。そういう場合、アドバイスとか提案が欲しいのであって、数学的に答えを返すのとはちょっと違うのだ。
こう愚痴っぽいことを書いてしまったけれど、ぼくには清少納言のような文才がないので、ただの愚痴になる。あれほどの美しい文章をかけたなら、愚痴すらもおかしみをもってかけるだろうに。
コスト削減をしようとすると、どういうわけかまず「接客」から始めるようだ。アナログな仕事をしている立場からすると、これがとても不思議。窓口の人件費が一番高いのか、それとも現行の窓口業務がAIに代替できる程度のことしかやっていないのか。
ぼくなら、内側の業務こそDXを進めて人員削減を図るし、そのうえで、対人接客にはコストをかけるのだけど。
だいたい、「責任を取る」とか「あやまる」という、とても感情的で実態のない行為は、人間以外に出来っこないのだ。だからこそ、接客は専門知識を必要とする技能なのである。
ただの愚痴のようだけれど、けっこう大切なポイントだと思っている。
渋谷にTechMagic㈱が運営する「oh my DOT シブヤ」というラーメン屋さんがあった。ラーメン屋といっても、一般的に想像されるような雰囲気ではない。とてもポップな内装で、クレープでも売っていそうである。が、そんなことよりもまず最初に目を引くのは、飲食店には似つかわしくないガラス張りの機械だ。オーダーからラーメンが完成するまでのほぼすべてをロボットが行うのである。だが、最後にお客様にヌードルを提供するところだけは必ず人が行う。品質チェックという意味もあるのだろうけれど、最後の仕上げとお客様と会話するポイントだけは必ず人でなければならないという信念を持っているのだという。
TechMagicは調理ロボットを作る会社なのだ。厳密にはDXとは異なるけれど、どこをオートメーション化して、どこを人の手で行うべきかを徹底的に考えているという点では、見習うべきポイントは多いだろう。
これがすべての正解というわけじゃない。ユニクロのように、接客という業務を排除していくというのも理念の現れの一つだ。声をかけられること無く自由に洋服を見られる空間は、それはそれで快適だと思うこともある。一方で、相談に乗ってもらいたいときにタッチパネルで液晶から機械的な答えを得るよりも、人間らしい感覚を通じて答えてもらいたいときもある。
ロボット化、オートメーション化、デジタルトランスフォーメーション。なんでも良いけれど、自らの理念とお客様の心情にあわせて、どの部分を変革してどの部分の残していくのかを検討してから導入するのが良いのじゃないかと思う。
なにしろ、相手は「感情で動く人間」なのだ。
今日も読んでいただきありがとうございます。飲食店でもそうなんだけど、接客ってけっこう軽視されがちな傾向があるだよね。そりゃ、調理は専門技術が必要なこともあるから誰でもできるってわけじゃないけどさ。だからといって、接客だって誰でもうまくできるっていうわけでもない。元々営業職だったこともあって、ここはちょっと譲れないんだよ。